早稲田文学(1981年10月号)に収録された初期短編「パン屋襲撃」と、文春文庫に収録されている「パン屋再襲撃」の二作を、カット・メンシックのイラストを添えて、改稿(ヴァージョンアップ)して絵本にまとめたもの。
「あとがき」がまた美味しい。「パン屋を襲う」には「神もマルクスもジョン・レノンも、みんな死んだ」という文章が出てくるが、この作品が書かれたのは、ジョン・レノンが殺されたすぐあとのこと(蛇足だけど、僕が生まれる少し前のこと)。「そう、空気はそれなりに粗く、切実だったのだ。(たぶん)パン屋を襲いたくなるくらい。」
「宇宙の空白をそのまま呑み込んでしまったくらい」の「オズの魔法使いに出てくる竜巻のような」空腹感が襲いかかってきたときには、読み直したくなる。
パン屋を襲う [ 村上春樹 ]