ハンブルクの蟻
実は水の都、ハンブルク・・・僕はこのあいだ日曜日ハンブルクへ行ってきた。そして乗っていた電車がアルトナという駅に着いた時、ある詩のことを思い出した。「ハンブルクの蟻」という詩で、ドイツでは有名な詩の一つである。日本ではあまり有名ではないようで、ネットでも見つからなかったので、訳は僕自身の拙訳でご辛抱いただくことにする。Joachim RingelnatzHamburger AmeisenIn Hamburg lebten zwei Ameisen,Die wollten nach Australien reisen.Bei Altona auf der ChausseeDa taten ihnen die Beine weh,Und da verzichteten sie weiseDann auf den letzten Teil der Reise.ハンブルクの蟻 ヨアヒム・リンゲルナッツ作ハンブルクに住む2ひきの蟻が、オーストラリアへ旅に出かけました。アルトナ近くの道路の上で、彼らは足が痛くなってしまいました。そして彼らは賢明にも、残りの旅をあきらめました。6月10日の日記で僕がドイツ語をまじめに勉強する気になるきっかけとなった「やまのあなた」という詩を紹介したが、「ハンブルクの蟻」も同じ本に載っていたものである。この詩の本意が「おおそれたことを企てながら結局ちょっとしたことで簡単にあきらめてしまう」ことを皮肉ったのか、「わけもわからず大きなことを企てたが、このままではどんな困難があるかもしれない。それが足が痛くなった程度で避けられたのでよかったじゃないか」ということなのか、色々に解釈できると思うが、これから大きな夢を持とうとするものにとってはなんとも夢のない詩である。ところで、僕がこの詩をはじめて読んだときはハンブルクからアルトナというのがどれくらいの距離かわからなかった。すぐそこかもしれないし、太平洋の島かもしれない。実はアルトナというのはハンブルク市内にある。ミュンヘンやスイスのバーゼルからハンブルク行きのICE(ドイツの超特急)に乗るとその終点がアルトナ駅である。蟻たちがどこを起点として旅行したのか詩では触れていないが、ハンブルクの中心だったとすれば現在のハンブルク中央駅より少し北のあたりである。(上の写真はだいたいその辺り)地図で見るとここからアルトナはほんの目と鼻の先だが、結構この距離は微妙である。電車で行くと11分かかる。歩いて行くにはちょっときつい距離である。またこの間には多くの運河があり、ヨットの浮かぶアルスター湖があり、不夜城「レーパーバーン」がある。この間を歩いてみるといい具合(?)に足も痛くなるしちょっとした冒険をしてみた気分になるのではないだろうか。オーストラリアへ行く夢を持った蟻たちがこの「ちょっとした冒険」に満足したところで足が痛くなり、「これでいいじゃないか・・・」と蟻たちは思ったのでは・・・。ひょっとしたらそんなところにもこの詩を楽しむ鍵があるかもしれないと、僕はアルトナ停車中の車内で考えていた。