一生かけて
私がフルタイムで仕事を始めたのは5年ほど前。それまでは自宅勤務の夫とずっと一緒。仕事で家にほとんど戻らない毎日。だんだんと、おかしくなっていく夫婦関係。もう、別れよう、別れようって、お互いとも、思ってて。でも、やっぱり、別れられなくて。2045年にまた会おう。もし、それまでにどちらかにどうしても一緒にいたい人ができたら、離婚しよう。そっちが離婚したかったら、慰謝料は請求させてもらうけど、こっちが離婚したかったら、お金の心配はしなくていい。じゃ、元気で。ってメールを仕事先のハワイからサンディエゴの自宅にいる夫に送りました。2045年頃には、歳をとって、今の仕事も退職しているだろうし、その頃には、また昔みたいな関係に、戻っているかもしれないその頃には、またあの人を大好きになっているかもしれないその頃には、あの人は、もう私のことなんて忘れているかもしれないけど次の日、返信がありました。when the time come, will you take my hand?その時が来たら、僕と一緒にいてくれる?って質問にI don't know.さあ、どうでしょうね。って返答して。その直後、夫は命を絶ってしまいました。去年の秋です。私のいない人生よりも死を選んだ夫。気持ちは、わかる。私だって、夫のいない人生なんて、考えられなかったですもん。どんなに、関係が悪化しても、どんなに、遠いところにいても、彼という人間が、私には必要。離婚して他の誰かと残りの人生を歩むこともできたかもしれないでも、できなかった。どこかで、いつか、この関係が修復できるって、思ってて。仕事先で、お年寄りのご夫婦が、仲睦まじく、手を取り合って座っている姿を見てはいつか、こんな風に、あの人と仲良くできるかもって。うちの人が、私になりたいって私みたいになりたいんじゃなくて私になりたいって、昔よく、言ってました。強い私が好きだって。