＝＝＝　PG ほりっく　＝＝＝

わたし達は泣いてはいけないんだと思う。



ずっとながーく付き合っているともだちというのは何人かいて。

最初は彼(今のだんなね)の友達の彼女みたいな人も友達になって。

男抜きで遊んだり。

同じ頃に結婚して。

同じ頃に子供が産まれて。

たまにしか連絡はしないけれど、

年に１回くらい一緒にご飯食べたり

バーベキューして遊んだり。



彼女もそんななかのひとり。



結婚してまもなくの頃、だんなになった人が難病になり、

両親に離婚しなさいといわれながらも

この先どうなるか分からない男を見放さずに

まだ若い彼女は必死に看病を続けた。


何年も。


あれから10数年。

彼女は子供を２人産んだ。

病気のだんなさんの収入だけでは暮らせないので、

保険会社でバリバリ働いていた。

何年か前だんなさんが髄膜炎で意識不明の重体になったときには、

心が折れそうになりながら、家族を支えた。



そんな彼女が先月、倒れたという。



脳幹梗塞。



脳梗塞の中でも重症な部類に入るらしい。



一命はとりとめた。



37歳。



半身麻痺、残った半分は感覚がなく、

眼震、嚥下障害･･･



私の留守中にだんなさんから電話があったらしい。

だんなが電話をうけた。


お見舞いに来て欲しいと。

でも、彼女を見て驚かないで欲しいと。



何で???


怒りがこみあげる。

何故、彼女なんだろう。

悔しくて仕方が無い。


歯をくいしばってもくいしばっても、

どうして、彼女が??

怒りがこみあげる。



ちきしょー。



うちのだんなはあまりの衝撃に泣いている。


でも、わたし達は泣いちゃいけないんじゃないかな。

泣くというのは、

「だめだ」

と思ったときだと思う。

あきらめてしまった時だと思う。


(病気の本人が辛さの余り

たまに「うわあっ」と泣いちゃうのはいいんじゃないかとおもう

涙とともに悪いものが流れ出ちゃうからね。)




彼女はだめじゃない。

私は、彼女がもうだめだなんて思わない。

きっとあの毒舌と共に復活するんだ。

だから涙なんてでない。


そして

かわいそうだとも思わないことにする。

意地悪じゃないよ。

私が難病で手足が動かなくなった時も、

杖ついてやっと歩けるようになって人前に出た時も、

一番嫌だったのは人から「かわいそう」と思われることだった。

毎日がんばっているのに、「かわいそう」とは。

それはないんじゃない??

「かわいそうに」と思われることが惨めで不幸だった。



とにかく、大丈夫。

退院したらまたみんなで会おう。

だから、前を見て。

ちゃんと前を見て今日よりは明日、明日よりは明後日。

少しずつでも笑顔の種がふえればいい。

嘘でも前へ。

だよね??



そんな私の気持ちをうまく伝えられたらいいな。

今度、お見舞いにいってくるね。