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じゃくの音楽日記帳

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2010.11.15
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11月4日、モーリス・ベジャール・バレー団他によるバレーを観ました。
演目は、ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」と「春の祭典」、そしてマーラーの「愛が私に語るもの」でした。マーラーのは、交響曲第3番の第4、5、6楽章をバレーに振り付けしたものです。このマーラーのバレーのDVDは持っていて、いつか生舞台を見てみたいと思っていたのが、ついにその機会が到来しました。しかも今回、音楽演奏陣が豪華メンバー!なので、楽しみにしていました。僕が観たのは、二日連続公演の二日目でした。

11月4日 東京文化会館大ホール
モーリス・ベジャール・バレー団、東京バレー団
振付:モーリス・ベジャール

指揮:メータ
管弦楽:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
(以下マーラーで)
メゾ・ソプラノ独唱:藤村実穂子
児童合唱:東京少年少女合唱隊
女声合唱:栗友会合唱団

プログラムは、ペトルーシュカ(40分)、休憩(20分)、マーラー(50分)、休憩(20分)、春の祭典(35分)というヘヴィーなものでした。

最初は東京バレー団によるストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」。ペトルーシュカの分身(3つの影)が出てきたり、鏡が効果的に使われた舞台装置で、普通にストーリーを追うのではなくて、ペトルーシュカの内面にスポットをあてたという踊りでした。東京文化会館大ホールは、かなり響きがデッドでなところで、しかもオケがピットに入っているので、音響的にはあまり期待していなかったのですが、オケは思ったよりも良く音が鳴っていて、十分に楽しめました。これなら次のマーラーも相当期待できそうです。

そしていよいよ、モーリス・ベジャール・バレー団による、マーラー「愛が私に語るもの」。今回はバレーの舞台なので演奏陣の配置は気にしなくてもいいのですが、一応書いておくと、舞台上の左右両端の、幕よりも前の部分(オケピットの左右両端のあたりで、ピットよりもすぐ後ろ、左右に開いた幕のすぐ前の部分)に並びました。上手に児童合唱団、下手に女声合唱団が並びました。鐘はさすがにピットの中でした(^^)。そして独唱の藤村さんは、女声合唱のすぐ前に、目立たない感じで立ちました。

「愛が私に語るもの」は、バレーの意味は良くわからないけれど、バレーと音楽とに引き込まれ、不思議な感動に包まれたひとときでした。メータの3番の通常のコンサート形式の演奏は、2005年にバイエルン国立管弦楽団とのものをサントリーホールで聴きましたが、そのときは終楽章のテンポの動かし方が不自然に大きくて、ちょっと違和感を感じました。今回は、そのときよりもずっと感動してしまいました。今回もテンポそのものはメータは比較的動かすのですが、バレーの威力でしょうか、違和感なく、素晴らしい音楽が伝わってきました。弦、特にチェロは美音でしたし、金管も、半分だけの演奏なのでスタミナ充分で、最後のコラールもばっちり美しく吹いてくれました。

なお第四楽章での藤村さんの歌唱は、かなりドラマティックな歌い方でした。コンサートで聴いたらどう感じたかはわかりませんが、今回のバレーの舞台にはあっていて、良かったと思います。

それにしてもベジャールはすごいものを作ってくれちゃいました。今日はもうこれで、おなかいっぱい、3番のあとに音楽は聴かない方が良いんだけど・・・などと思いましたが、帰ってしまうのは勿体なさすぎる(^^;)ので、休憩後の「春の祭典」ももちろん見ました。これはモーリス・ベジャール・バレー団と東京バレー団の合同出演でした。パワーと迫力あるバレーと音楽で、これも堪能しました。

終演後、盛んなカーテンコールが続き、何度も緞帳があがったりさがったりします。そしてこれで最後かなと思ったとき、幕がもう一度あがると、ステージ上にはイスラエルフィルの人たちも上がっていて、全員集合です!上からは沢山の紙ふぶきが舞い降りてきて、金色にきらきら光って、みなを祝福するようで、とても素敵な光景となり、ホールは一段と高い拍手となって、幕を閉じました。もう本当に大満足の、バレーと音楽体験でした。


・・・ところで、「愛が私に語るもの」のDVDを観た人はご存じでしょうけど、このバレーは、舞台装置の類はまったくなにもなくて、唯一最後の方に舞台の背景に赤い大きな丸い太陽が出ます。DVDだと、画面が変わったときに突然もう出ているので、どのように出てくるのか(下から出てくるのか上から降りてくるのか)わからないのですが、今回舞台をみて、わかりました。太陽は、上方からゆっくりと降りてきて、そして最初は黄色で、そのあと赤になりました。そして赤いまま一点に静止して、それで幕を閉じました。なるほど、これは日の出ではなくて、日の入りです。

マーラーが3番を書いたのは、30歳代半ば、野心と若いエネルギーに満ちていた時代、後年のさまざまな苦悩が生ずる前の時代です。3番の音楽は、青年の音楽で、マーラーの音楽としてはもっとも生命肯定的な、前向きの音楽と思います。(8番がちょっと無理して生命肯定、愛肯定を主張しているのに対して、3番はもっと自然に生命肯定している音楽、と思います。)この3番の終結部について、村井翔氏は、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」の末尾の夜明けのシーンとの関連を示唆しています。とても興味深いので、そこの部分を引用しておくと、

”ティンパニが四度音程の連打を続けるコーダは、曲頭に有名なティンパニの四度連打があるシュトラウスの『ツァラトゥストラがこう語った』との不思議な照応を感じさせるが、シュトラウスが描くのが『ツァラトゥストラ』冒頭の夜明けの場面だとすると、この交響曲のコーダが描くのは『ツァラトゥストラ』末尾の夜明けのシーンだろうか。

「これは私の朝。私の昼が始まるのだ。昇ってこい、さあ昇ってこい、おまえ、大いなる真昼よ!」 ー ツァラトゥストラはこう語って、彼の洞窟を後にした。暗い山から昇る朝日のように、燃えさかり、力強かった。”
(村井翔著、作曲家◎人と作品シリーズ「マーラー」 音楽之友社、209ページ。)

僕はニーチェ哲学のことはさっぱりわからないし、『ツァラトゥストラ』も読んだことないですけど、確かに3番の終結部のイメージを、もし日の出か日の入りかと二者択一を迫られるとしたら、僕は迷わず「日の出」をとりますし、おそらく多くの人もそうだろうと思います。

しかしベジャールは、あえて日の入りとした。

DVDの解説に「愛が私に語るもの」についてのベジャールの言葉が載っていて、そのあたりのベジャールのイメージがわかります。そこを引用すると

” ひとりの男が、今やその一生を終えようとする時、生涯の過程をふり返る ー 出会い、闘い、愛。暗闇から現れた男は、あたかも影のような女に従われて、太陽と光のなかへはいっていきます。
この交響曲の最終楽章は、当初、「子供が私に語るもの」と題されるはずでした。ここに、マーラーの意図をはっきり読みとることができます。葛藤、悲しみ、そして成功に彩られた苦悩の半生を経て、彼は、長く苦しい人生のカオスを超越するこの楽観的な発想を、童心の中に見たのです。”
(DVDビデオ、「モーリス・ベジャールと二十世紀バレエ団の芸術」の解説、7ページ。)

ベジャール(1927-2007)がこのバレーを作ったのは1974年ということですから、47歳。マーラーが3番を作曲した30代半ばよりは年長ですが、まだそれほど歳をとったというほどではないです。けれど、ベジャールは、青年の音楽というよりも、人生の最後というイメージでこのバレーを作ったわけで、それが最後の「日の入り」に象徴されているんですね。

DVDビデオ、「モーリス・ベジャールと二十世紀バレエ団の芸術」には、ボレロと、アダージェット(マーラー5番のアダージェット)、そして「愛が私に語るもの」が収録されています。





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Last updated  2010.11.16 00:48:16
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