広瀬隆著 「FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン」を読みました。
朝日新書298
書き下ろしほやほやの、ホットな本です。新書1冊というコンパクトな中に、福島事故の本質から、浜岡だけでなくて日本のすべての原発がとっても危ないこと、原発なくてもエネルギーは足りるということまで、要点がするどく書かれています。
第一部 福島第一原発事故の「真相」
第1章 津波に暴かれた人災
第2章 東電・メディアに隠された真実
第3章 放射能との長期戦
第1章では、今度の事故の本質が、想定外ではなく想定できるはずだった津波対策をまったく怠って40年間も運転していた怠慢が、天災によって暴かれたという こと、つまり「天災によって人災犯罪が暴かれた」ということを、ずばりと指摘しています。第2章では、事故後の東電、大手メディアに出てきた「専門家」の 無責任な対応の問題点、あげればきりが無いと思うその問題点を、要点を絞って、きびしく批判しています。なるほどとうなずくばかりです。第3章では、長期 化する放射能汚染に対しての、広瀬氏の現時点での考えが、重く示されています。
以上第一部が福島事故の現時点でのまとめです。第二部が、今後に向けての話になります。
第二部 原発震災、ここで阻止せよ
第4章 巨大地震の激動期に入った日本
第5章 「浜岡原発」破局の恐怖
第6章 活断層におびえる「原発列島」
終章 完全崩壊した日本の原子力政策
第 4章では、日本が地震の休息期から活動期に入ってしまっていること、いつ大地震が起こってもおかしくないことが示されます。第5章は、浜岡原発の危険性が 特に高いことの解説です。(本書は、菅首相の要請により浜岡が停止する以前に書かれたものです。)これら第4および第5章は、広瀬氏の前著「原子炉時限爆弾 大地震におびえる日本列島」の内容を切り詰めたものです。
浜岡原発の運転はとりあえず止まりましたが、燃料があるかぎり危険は依然として続くのですから、完全廃炉になるまでは安心できません。中部電力が言っている津波対策がいかにいい加減なものかは、本書156ページ~159ページを読めば、良くわかります。
さて続く第6章は、日本にひしめく原発について、北海道の泊原発から鹿児島の川内(せんだい)原発まで、全18プラント のひとつひとつ、その歴史と危険性をみた章です。ばっさばっさと断罪していく筆致は、簡潔ながら核心をついていて、非常にわかりやすいです。またいくつか のプラントで起こされた住民による訴訟についても記述されていて、電力会社が卑劣なやりかた(地盤調査の捏造や、活断層の否定あるいは過小評価)で対応し たこと、裁判所は「国が安全というから」という理由で、住民の訴えをしりぞけてきたことも、書いてあります。その理不尽さに、読んでいて腹立たしくなりま す。
終章の前半は、原発がなくても電気は充分にまかなえるということ、電力を自由化して送電の分離をすることが必要ということを指摘しています。先日の、広瀬氏の特別インタビュー「浜岡原発前面停止」以降の課題、と同じ内容です。
そして終章の後半は、原発の生み出す放射性廃棄物が増え続け、置き所がもうすぐ満杯になって行き詰ることを指摘しています。
以上1冊、読みやすくて、一気に読みました。とくに僕としては、第6章がとても頭の中が整理されて良かったです。
いつもながら広瀬氏の語り口は、「この危険をわかっていない人になんとか伝えたい。」という真剣な気持ちが伝わってきて、強い感銘を受けます。このままでは第二第三の原発震災が、必ず起こってしまいます。今度こそ日本人みんなの力でそれを阻止しなければ。
浜岡止まったんだからもういいじゃん、と思っている人に、是非読んでほしいです。