カテゴリ:マーラー演奏会(2011年)
インキネン&日フィルのマーラー3番二日目(9月3日サントリーホール)です。
昨日と同様に、インキネンの棒は本当に魅力的です。きょうは僕も二日目で少し余裕を持って聴けて、昨日いつのまにか速くなったり遅くなったりと感じたところが、なるほどここで速く、ここで遅くなるんだ、ということがわかり、納得しながらほれぼれと聴いていく、という感じでした。 第一楽章が終わったあと、オケは初日にはしなかったチューニングをしました。初日の演奏でピッチが不安定になるところがあったのを踏まえて、きょうは万全を期したのでしょう。 第三楽章、今日の僕の席は1階平土間だったので、ポストホルンのときに開いたドアが良く見えました。昨日の友人の話どおり、2階客席LAブロックの後ろのドアでした。普通はドアを開けるだけですが、今回は、開いたドアの真ん中に何か大きめの物体が置かれています。ポストホルン奏者が指揮を見るためのテレビモニターなのか、あるいは単に金属板のようなものなのかは良くわかりませんが、この物体が存在することによって、ポストホルンの音が直接ホール内に入りにくくなり、より間接的に、遠くから響くような効果が生じていたかもしれません。僕の席にはほどよい距離感をもって、聞こえてきました。(ポストホルンが終わってドアが閉められるときに、この物体もドアの外にさっと運び出され消えていきました。)なお友人は、今日は丁度そのLAブロックで聴いていましたので、あとで様子を尋ねたら、さすがに非常な至近距離から聞こえてしまった、と言っていました(^^;)。 このポストホルンを、インキネンは昨日同様にじっくりと歌いまわしさせて、素敵です。その音色は、昨日よりは随分やわらかく、本来のポストホルン的に聞こえてきて、なかなか良かったです。 合唱の起立や独唱者の入場のタイミングは昨日とまったく同じ。今日も聴衆のエライことに、独唱者入場時に拍手が起こりませんでした。 第五楽章で、独唱者の着席するタイミングを、きのうは見逃しましたが、今日は自分の座席から良く見えたので、わかりました。自分の出番が終わってすぐにさっと座ってしまうのではなく、その後の音楽の流れを意識して、音楽の邪魔にならないタイミングで、ゆっくりそーっと座るという、とても感じの良い座り方でした。(昨年のヤンソンス&コンセルトヘボウのときのラーソンさんも、これと似たような、「心得た」素敵な座り方でしたっけ。) 合唱は、児童、女声とも、きょうもすばらしかったです。杉並児童合唱団は、見たところでは、男子は今日の出演者の中では小さな子が一人だけで、最後列の真ん中で歌っていました。貴重な男児としてこれからも頑張ってくださいね。 第四、第五、第六楽章のアタッカは、昨日と同様に静寂と緊張が保たれたすばらしいものでしたし、合唱団はやはり曲の最後まで立ちっぱなしでした。(まれに、座るはずだった合唱団が座るタイミングを逸してしまい、やむを得ず最後まで立ちっぱなしになってしまったというケースもなくはないので、今日の演奏でどうなるかを一応注意していましたが、うれしいことに最後まで立たせっぱなしでした。やはりインキネンは、明確な意図をもって「インキネン方式」を実行していたのでした。) 終楽章は、おそらく初日より相当に遅いテンポとなり、じっくりと演奏されました。本当にすばらしい演奏です。 そして今日も、充実した最後の主和音の残響が消えたあと、インキネンの棒が高い位置で止まっている間、ホールは完全な静寂に包まれました。このようなすばらしい場を、二日連続で経験できるなんて、なんとありがたいことでしょうか。 今日のオケの出来は、初日よりも細かいところがしっかり演奏され、さすがに二日目のメリットがいろいろ出ていました。昨日のような大事故はまったくなく、より完成度の高いパフォーマンスでした。昨日が日フィル120%の力を発揮したとすれば、今日は150%でしょうか。 インキネンの演奏は二日とも基本方向は同じで、新鮮な感覚にあふれた、自然な流れで、柔にして剛の、魅力あふれるマーラーでした。昨日感じた「天性の新世代マーラー振り」という印象は、今日の演奏でますます強く確信しました。そのなかで両日の違いをあげると、インキネンは初日は、かなり自由にのびのびと演奏していたのに対して、二日目はより完璧なものを求めようと、初日に比べればやや慎重というか、丁寧に演奏したという感じです。それはたとえば終楽章のテンポの違いに、良く現れていました。 両日ともすばらしい演奏で、僕は大満足で大きな感銘を受けました。客観的にみれば、二日目のほうがオケの充実も上だったし、終楽章のじっくりとしたテンポの遅さも良かったし、二日目のほうがうまくいった演奏、といえるかと思います。でも僕は個人的には、初日の、初めてインキネンのマーラーに接して驚きつつ「良くわからないけどすごい!」とドキドキするような幸せを感じながら聴いた体験のすばらしさがあまりに強烈だったので、どちらかを選ぶとすれば初日をとります。 終演後、インキネンのサイン会に参列しました。たどたどしい英語で、とてもすばらしい3番でした、ありがとうございましたと言って握手を求めたら、快く握手してくれました。笑顔のさわやかな若い美青年、これから人気沸騰する可能性大とみました。 インキネンが、はたしてマーラーに強い愛着があるのかどうかは知りません。二日間の音楽を聴き、ステージ上のふるまいをみたりして、総合的な印象から勝手に推測すると、まったくの推測ですが、特にマーラーに強いこだわりや思い入れがあるというわけではないように感じます。もちろん自分と相性のいい音楽とは思っているでしょうが、特別な熱い思い入れというのではなく、自然体でさらっと、こういうすばらしい音楽を実現してしまうのかな、という気がします。どちらにせよ大したものです。 インキネン&日フィルのマーラー撰集、今後大注目です。次は来年4月に5番ということです。あとナクソスから出ているというインキネンのCD、シベリウス、ラウタヴァーラなどの交響曲も聴いてみたいと思います。 天性の新世代マーラー振りに、乾杯! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.09.12 02:27:25
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