カテゴリ:演奏会(2011年)
スクロヴァチェフスキのブルックナーを堪能しました。若々しく、力強い、充実のブルックナー!! 会場に入って舞台を見ると、マイクが数本立っています。その立て方が変わっていて、指揮台の周囲に5本の黒いスタンドが立ち、てっぺんにマイクがあり、それぞれオケの方(斜め下方)を向いています。このマイクスタンドがすごく高く(あとで指揮台に立った長身のスクロヴァ氏の、さらに頭ふたつほど高い)、それが5本でずらりと指揮台を取り囲んでいるさまは、なかなかに物々しくて、電磁バリアでも張り巡らせそうな雰囲気(^^)で、オケの入場前から緊張感が漂っています。 オケの入場に続いてスクロヴァが入場し、早くも会場からは熱烈な拍手が沸き起こります。 始まったモーツァルト。スクロヴァの指揮ぶりは非常に厳しく、引き締まっています。それにこたえるオケの気合いも素晴らしい。びしっと引き締まった、無駄をそぎ落とした音楽です。変なたとえですが、良く呼吸のあった殺陣を目の当たりにしているような、緊張感の高い演奏です。モーツァルトが終わると盛大なブラボーが飛び交いました。 休憩後、いよいよブルックナー。やはり引き締まった音楽で、いささかも隙がありません。やや早めのテンポを基調に、ときどきかける激しいアッチェレランド、何気ない経過句での陰影に富んだ深い呼吸、すべてに一切の迷いがなく、確信に満ちたブルックナーです。その音楽の若々しくエネルギーにあふれていること、驚くばかりです。88歳のスクロヴァ、さらなる境地に踏み込んでいます。 オケもすばらしい。いかにもドイツのオケらしい素朴で質実剛健な響き。そしてスクロヴァの激しい要求に全力でひたむきに応えるその気合いは、すばらしいの一語。数年前に聴いたザールブリュッケン放響とはまったく次元の違う音です。合併で技術はもちろん上がったでしょうが、何よりも気合いの入り方が半端でありません。コンマスは白髪の老紳士で、トップサイドは黒髪の女性奏者で、このふたりともコンマスのような熱奏ぶりで、二人のコンマスがいるようでした。(翌日の演奏会と併せて考えると、老紳士がおそらくザールブリュッケン放響時代のコンマス、女性がカイザースラウテルンSWR放送管時代のコンミスであろうと想像します。)この二人の切り込み隊長を筆頭として、オケ全体がすこぶる気合の入った充実した音を出してくれます。 近年、読響やザールブリュッケン放響とのスクロヴァのブルックナーの演奏を聴いて、その素晴らしさに感動しながらも、僕がときどき不満に感じていたことがあります。ひとつは、スコアにないダイナミクスの変化です。クレッシェンドしていき頂点のffに達する少し前に、一度音量を落として、それから頂点のffに突入するというやり方が時々見られ、それがすごく恣意的に聞こえ、大きな流れの勢いを削いでしまうように感じていました。もうひとつは、各パートの明晰性や音量バランスに神経を使うあまりに、音楽が縮こまってしまい、スケール感が損なわれるような瞬間を、ときどき感じていました。これらのために、ブルックナーの音楽にとても大事な、大きな流れと言うか、巨大なスケール感と言うか、そういったものが損なわれるような印象を持つことが時々ありました。(なぜか7番や9番ではそういう場面は少なく、4、5、8番などで感じることが多かったです。) しかし今日は、どちらも皆無。変に音量を落とすところがまったくなく、音楽がうねって巨大に成長していくその流れ、強さががっちりと感じられます。また、各パートに細かな気配りが充分に行き届いていながら(特に木管の声部を強調して新鮮な響きが随所にありました)、それに神経を使いすぎて音楽が小さくなるという傾向がまったく感じられません。繊細にして剛気、パワフル。 終楽章のシンバル追加を代表とする、スコアの改変「スクロヴァ稿」(^^)も相変わらずの健在ぶりです。まぁ良くやってくれます。
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