カテゴリ:演奏会(2012年)
続いて2012年演奏会、声楽曲編です。印象に残ったものをあげます。 バロックオペラは上演が少なくてさみしいなか、北とぴあ国際音楽祭で、このところ途絶えていたバロックオペラの上演が復活したのがうれしかったです。モリエールの台本にシャルパンティエが音楽をつけたという、劇半分・音楽半分の喜劇でした。役者のせりふは日本語で、歌手の歌は原語での上演で、字幕付きで、わかりやすく面白かったし、ハイレヴェルな演奏陣によるシャルパンティエの音楽は、とても素敵でした。 次に少年合唱。プロムジカの3日後に、イギリスの名門、セント・ジョーンズ・カレッジ聖歌隊を聴きました。「祈りの歌」というプログラムで、バードの5声のためのミサより抜粋ほかの魅了的なプログラムでした。貴重な少年合唱の響きではありましたが、プロムジカ合唱団がいかにすばらしいかをあらためて実感する場にもなりました。 最後は大人のアカペラ。イギリスの、ヴォーチェス・エイトという8人組みのグループでした。ウェストミンスター寺院聖歌隊出身の仲間たちで結成したグループということです。前半はしっとりとしたキャロルと、古楽からグレツキまでの宗教的な祈りの曲で、CDで親しんでいたグレツキの名曲「Totus Tuus すべて御身に」が聴けたのは大収穫でした。後半は一転してクリスマスの楽しいキャロル集で、軽やかなジングル・ベルでフィニッシュとなりました。いわば前半がタリス・スコラーズ的なステージ、後半がスィングル・シンガーズ的なステージでした。どちらも高い水準ではありましたが、今回はいまひとつ調子が出なかったのかもしれません、イギリスのアカペラ・グループであればもっと高い水準を求めたい、という印象を持ちました。王子ホールはどちらかというと残響の短めな小ホールですので、アカペラにはちょっときびしい音響のホールかもしれません。 ○リサイタル 藤村さんの日本でのリサイタルもこれが確か3回目となりました。過去2回と同様、今回もマーラーを含むドイツリート・プログラム(シューベルト、マーラー、ヴォルフ、R.シュトラウス)でした。僕は紀尾井ホールに先立って行われたフィリアホールの公演を聴きました。藤村さんはマーラーも良いですけど、彼女の劇的な表現にはR.シュトラウスがよりふさわしいと感じました。アンコールもオール・R.シュトラウスでした。ピアノ伴奏は、繊細な詩情が美しいヴォルフラム・リーガーさん。藤村さんの前回のリサイタル(2010年11月)も、このリーガーさんとのコンビによるもので、非常に味わい深いものでした。 フリットリさんのマルトゥッチは、記事にしたとおりです。折角のマルトゥッチの美しい曲が・・・という結果にはなりましたが、次の機会を期待したいと思います。 ○バッハ BWV639は、タルコフスキーファンならご存知、「ソラリス」で使われた曲ですね。僕は「ソラリス」でこの曲を知り、映像とともに強烈に焼きついてしまいました。その後、この曲がオルガン小曲集のひとつだということを知り、オルガン小曲集のCDをいろいろと聴きました。曲集の中の一つとして弾いている演奏だと、あっさりしたものが多く、物足りなさを感じることが多かったです。ピアノによる演奏のCDもいろいろと聴きました。そんなとき、ブーニンがこの曲を弾いたCDに出会い、ゆっくりと、深い情感をたたえて弾かれたブーニンのBWV639に、いたく感動しました。「ブーニンもソラリスを見たのだろうか」などと想いをめぐらせたりしたものです。 自分にとってBCJに一区切りのこの演奏会で、BWV639にゆかりのカンタータを聴けたのは、うれしいことでした。今年(2013年)は、いよいよBCJのカンタータ全曲演奏が完結するということですので、ときにスポット的には聴きにいこうと思っています。 あと聖トーマス教会合唱団ほかのマタイ受難曲は、良かったですけれど、現在のカントールであるビラーさんのバッハは、僕にはちょっと相性が悪いみたいで、いまひとつしっくり来ませんでした。2010年12月のドレスデン聖十字架合唱団のマタイには、本当に感動しました。そのことを思い出しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.01.24 01:24:19
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