カテゴリ:演奏会(2013年)
飯守泰次郎指揮、東京シティフィルのブルックナー5番を聴きました。
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第268回定期演奏会 4月19日 東京オペラシティコンサートホール モーツァルト ピアノ協奏曲第21番 ブルックナー 交響曲第5番 指揮 飯守泰次郎 ピアノ 菊池洋子 飯守泰次郎さんが昨年から始めた東京シティフィルとのブルックナーチクルスの第2回です。 前回の第1回4番は、僕は聴けませんでした。 飯守さんのブルックナーを聴くのは僕は今回が初めてで、期待して臨みました。 結果からいうと、第二楽章はじっくりとした歩みでとても素晴らしかったです。 しかし他の楽章は、気合が入った力演ではありましたが、飯守さんの描くブルックナー像は、僕としてはあまり感心しませんでした。 なんと言ってもフォルテの音に力がはいりすぎです。第一楽章始まってすぐの金管コラールから、がちっと力が入った固い音で強烈に鳴り響かせ、それがうるさい感じで耳を圧迫します。ブルックナーのフォルテに、しかもこんな開始早々から、こんなに力を込めてはいけない、と僕は思います。このような力がはいりすぎのフォルテが、第二楽章をのぞく随所にみられ、いささか残念でした。 それから特に第一楽章は、ブロックごとのテンポの緩急の差が激しすぎました。序奏の緩、第一主題の急、第二主題の緩、これらのテンポ差が大きすぎて、僕にとっては、大きな流れが損なわれてしまいました。 さすがに飯守さんですから、決して悪いわけではないのです。でも、主に上記の二つの特徴のため、スケールがあまり大きくなく、ややせせこましい感がするブルックナーにとどまっていました。 しかし東京シティフィルは力演でした。僕はこのオケを聴いたのは2~3年ぶりくらいですけど、前は弦の音がこれほど充実していなかったという印象があります。以前から第一ヴァイオリンは頑張っていましたが、第二ヴァイオリンやヴィオラといった内声部の弦が弱く、そのため厚み、深みが乏しいという印象がありましたが、今日は第二ヴァイオリン、ヴィオラも、加えてチェロも、健闘していました。この弦の頑張りもあって、第二楽章は非常に聴きごたえのある、深い音楽になっていました。 なお終楽章半ばの、コラール主題の登場場面で、金管の入りがばらけてしまうというまさかの大事故がありました。見ていた限りでは、飯守さんの指揮がわかりにくい感じで、金管奏者たちがはいりあぐねてしまったように見受けました。飯守さんも、弘法も筆の誤り、というところだったのでしょうか。 それにしても、今年はこれまで下野&読響、アルミンク&新日フィルというふたつのブルックナー5番の名演に接していて、あらためて、それらがいかに高水準の演奏だったかを思います。 なおプログラム前半の菊池洋子さんは今回も素敵な演奏でした。 特にアンコールが秀逸でした。やおら弾き始めたのが、ペダルを踏みっぱなしにして、無人の虚空をゆっくりただようような、美しくもどこか空虚な響きがうつろいゆく音楽で、菊池さんがインプロヴィゼーションで弾いているのだろうか?と思うようなユニークな自由な短い音楽でした。それに続けて中断なく、バッハの「主よ人の望みの喜びよ」が弾かれました。この両者は様式からなにからまったく異なる音楽なのに、まったく違和感がないどころか、すごくあっていて、「これは誰か現代の作曲家が書いた(バッハ作品を編曲した)ひとつの作品なのだろうか」と思いながら聴いて、感動していました。これ本当に素晴らしかったです。終わって、会場からブラボーもとんでました。 帰りがけにロビーでアンコールの曲表示を見たら、1曲目がクルタークの作品(だれかへのオマージュと書いてありました)、そして2曲目としてバッハの曲名が挙げられていました。ですから、まったく独立した二つの曲だったようです。だとしたら、このふたつの曲を並べて、続けて弾かれた菊池さんのセンス、素晴らしいなぁと思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.04.20 01:22:02
コメント(0) | コメントを書く
[演奏会(2013年)] カテゴリの最新記事
|
|