カテゴリ:マーラー演奏会(2013年)
10月に兵庫で、アルミンクのマーラー6番を聴きました。
兵庫芸術文化センター管弦楽団 第64回定期演奏会 10月13日、兵庫県立芸術文化センター ベルク ヴァイオリン協奏曲 マーラー 交響曲第6番 指揮:クリスティアン・アルミンク ヴァイオリン:ルノー・カプソン 管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団 コンサートマスター:ウェルナー・ヒンク アルミンクがマーラー6番を振る。8月に聴いたアルミンク&新日フィルの3番が、10年前よりも格段に深化していてあまりにも素晴らしく、今後日本でアルミンクのマーラーを聴ける機会があるのかどうか、ということを考えると、この演奏会は非常に貴重な機会で、ぜひとも聴きたいと思いました。 日程は10月11、12、13日の金・土・日曜日。丁度その金・土曜日と九州への出張がありましたので、出張帰りに兵庫に立ち寄ってコンサートを聴こう、と決めました。それでチケットを買ったのですが、そのときにはもう券はほとんど残っていない状態で、かろうじて1階3列目のほぼ右端の席を、入手できました。 土曜日の夕方に九州での仕事を終えるとともに、新幹線に飛び乗って大阪に行き、一泊し、その夜は爆睡して仕事の疲れを取り、翌日曜日に西宮の兵庫県立芸術文化センターに向かいました。 この会場を訪れるのは佐渡さんのマーラー3番、大植さんのマーラー4番とマーラー3番に続く4回目。前回までは、佐渡さんのコンサートやオペラを宣伝する派手なのぼり群で華やかに飾られて「佐渡城」らしさ全開の雰囲気の会場でしたが、今回はのぼりがなく、静かな佇まいでした。 プログラムはアルミンクらしいこだわりあるもので、前半がベルクのヴァイオリン協奏曲。ベルクがこの曲を作曲中に、アルマとグロピウスの娘マノン・グロピウスの夭逝を知り、「ある天使の思い出に」という言葉が添えられた曲ですね。大いに期待して聴きましたが、しかしソリストのカプソンが今一つ冴えませんでした。譜面を見ながら弾いていたのにもちょっと興醒めしてしまいました。 休憩のあとが、マーラーの6番。楽章順は第二楽章スケルツオ第三楽章アンダンテです。私的には断然この順序が好きです。 演奏は一貫してゆっくりめのテンポでした。特に第三楽章、最後まで加速しないでゆったりと、楽章最後の盛り上がりを味わい深く歌ってくれて、大感動でした。第一楽章や第四楽章の中間部分の味わい深さも素晴らしかったです。ともかく全編通じて、単なる悲劇的な音楽になってなく、アルミンクがマーラーの憧憬の念をとてもよく汲み取っていることがひしひしと伝わってきました。これほどの味わい深い6番は、そう滅多に聴けないです。 舞台裏のカウベルへの鳴らし方も出色でした。第一楽章・第四楽章ともに左右の扉を開けての“カウベル両翼配置“で、繊細な美しい音で、距離感も充分にありました。第三楽章の舞台上のカウベルもとても繊細な鳴らせ方で、いい響きでした。アルミンクの細心の配慮、素晴らしいです。 プログラムの解説によると、コンマスは元ウィーンフィルのコンマスのウェルナー・ヒンク氏で、さすがに貫禄ある美しいソロを聴かせてくれました。ウィーンに生まれ育ったアルミンクが、曲のプログラミングといいコンマスといい、ウィーンのテイストにこだわったのでしょうか。また他にも、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、トランペット、ティンパニーに強力な助っ人プレイヤーが参加しているということでしたし、ホルンにも元都響首席の笠松長久氏が参加していて、技術的にもすこぶる立派な演奏でした。3日公演の最終日ですから、オケとしても相当に充実の響きが出せたことと思います。 ひとつ変わっていたのはハンマーです。縞模様がついていた外観が珍しかったですが、さらに変わっていたのはその叩かせかたでした。普通は上に振りかぶったハンマーを下に打ちおろしてそのままですが、今回は叩いた後にハンマーを再び高い位置にかつぎあげていました。重いハンマーをまた上に持っていくのは疲れたことでしょう。音色へのアルミンクのこだわりなのかもしれませんが、音自体は残念ながら良く聴こえませんでした。あと叩く台の方も、見えませんでした。 アルミンクの6番は、数年前に新日フィルと演奏したときには仕事の都合で聴けず、残念な思いを抱いていました。まったくの憶測ですが、おそらくその時の演奏よりもはるかに深化しているであろうと思います。8月の新日フィルとの3番といい、今回の6番といい、ここにきてアルミンクのマーラーは驚異的な充実ぶりです。今年6月に聴いたハーディング・新日フィルの6番も悪くはなかったけれど、それと全然比べられないレベルの、きわめて貴重な6番を聴けました。 終演後、帰りかけると、アルミンクのサイン会をやるということがわかりました。並んでいる人はわずか10人くらいと少なかったので、急遽CD(いずれ買おうと思っていたマーラーの嘆きの歌、昨年の新日フィルとの演奏会のライブ録音盤です)を買って、サインしてもらいました。サインしてもらうときに、「8月の3番が非常に感動的だったので、東京からあなたのマーラーを聴きに来ました。」といったら、アルミンクはびっくりして喜んでくれました。「これからもまた日本で是非マーラーをやってください。」とお願いしたら、「OK!」と答えてくれました。それが本当に実現してほしいと願いながら、冷めやらぬ感動を抱きつつ、兵庫から帰途に着きました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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