続いてブルックナーの演奏会のまとめです。2013年に聴いたブルックナーの全演奏会は以下になります。
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5番 下野/読響 2/19 東京芸術劇場
アルミンク/新日フィル 4/11 サントリー
飯守/東京シティフィル 4/19 東京オペラシティ
7番 大野/新日フィル 7/6 すみだトリフォニー
ラトル/ベルリンフィル 11/19 サントリー
9番 メッツマッハー/新日フィル 1/19 すみだトリフォニー
ハイティンク/ロンドン交響楽団 3/7 サントリー
同上 3/10 みなとみらい
あともろもろの事情で聴けなくて残念だったのが、スクロヴァチェフスキ&読響の4番と、下野&新日フィルの6番でした。それからアバド&ルツェルン祝祭管の来日公演(ブルックナー9番ほか)が実現しなかったのはとても残念でしたが、もう来日はしていただけずとも、ともかくアバドのご健康を願うばかりです。
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5番の下野さんは、もともとは2/18のサントリーホールのチケット(読響正指揮者としての最後のサントリーの演奏会)を買っていました。しかし体調不良で行けませんでした。この演奏会を聴いた友人からすばらしい演奏だったと聞き、これはなんとしても聴きたいと、翌日2/19の東京芸術劇場の演奏会に体調不良をおして出かけ、当日券を買って聴いたものでした。期待にたがわぬ王道のブルックナーを聴かせてくれました。下野さんのブルックナーは、これからが本当に楽しみです。今年は秋に読響と、いよいよ9番を演奏するようです。
それから、アルミンク&新日フィルの5番は、記事にしたとおり、すばらしい体験でした。もうひとつ、飯守&東京シティフィルの5番も、記事にしたように、悪くはなかったですが、下野さんやアルミンクのような悠然たる大きさを感じることはできませんでした。
7番は、大野さんの演奏は僕にとってはまったく感興のわかない演奏でした。もう一つの7番は、ラトル&ベルリンフィル。ラトルになってからのベルリンフィルを聴くのは今回が初めてでした。(前回のマーラー9番とブルックナー9番は油断していてチケットがとれず、聴けませんでした。)
ラトルのブルックナーにはそれほど期待しないで臨みましたが、なかなかに聴きごたえがありました。両翼配置で、コントラバス10台。第一楽章・第二楽章ともに、ある程度ゆっくりと、重さをもった演奏で、じっくり聴かせてくれました。ユニークだったのは第二楽章冒頭の第一主題の途中、第四小節半ばからのゆっくりとした上行音型(ドーレーミーー)を、テヌート気味でなく、短めにひとつひとつ音を切りながら軽めに演奏していたのが新鮮でした。このあとこの音型が繰り返されて盛り上がるところも、この音を短めにするスタイルで統一していました。第三楽章・第四楽章はベルリンフィルの技術とパワーで一段と盛り上って、かなり満足でした。これも第一楽章・第二楽章がある程度の重みを持って演奏されていたからこその充実感でした。
ホルン隊は舞台の上手に配置されてました。これは普通に、前に2人、その後ろに2人でした。その後ろにワーグナーチューバ4人だったのですが、この4人は良くあるように前後2列ではなく、横一列に並びました。すなわち、舞台後方の上手側から、ワーグナーチューバ4人、そのすぐ隣にチューバ、その隣にトロンボーン隊、さらにその横にトランペット隊というふうに、金管隊が横一列にずらりと並んでいました。この曲でこう配置することの利点として、ワーグナーチューバの4人とチューバの計5人が荘重なコラールを奏でるときに、5人で一緒という視覚的な統一感があって、とても良い配置でした。
それにしても久しぶりに聴くベルリンフィルはさすがにすごかったです。以前、アバド&ベルリンフィルの来日公演でマーラー3番を聴いたときに、オケの音の全体としてのすごさに驚きました。またそのときに、そのすごい音の中でもとりわけ、ホルンの盤石の安定感・存在感に、完全に圧倒されたものでした。そのホルンのドールさんは今回も健在で、プログラム前半のブーレーズの曲はシャープで鮮やかな音色で、プログラム後半のブルックナーでは一転してくすんだ渋い音色で、見事に音色を切り替えて、素晴らしいホルンを聴かせてくれました。
9番は、メッツマッハーは、力まかせのブルックナーで、あまり感心しませんでした。そして大御所ハイティンク。ハイティンクの演奏するブルックナー9番を日本で聴けるのはもう本当に貴重な機会でしたので、サントリーとみなとみらいホールの両方に足を運びました。さすがにロンドン響の完璧なサウンドのもと、ハイティンクは巨大で深いブルックナー世界を聴かせてくれました。僕はサントリーは1階平土間席で聴きました。オケの雛壇が高めで、僕の席だと舞台上手のトランぺット隊が良く見えて、トランペットの音がやや聞こえすぎる感がありました。みなとみらいではP席だったので、トランペットの強さが程よく緩和されて、よりよいバランスで聴けました。この完璧な演奏から大感銘を受けたかというと、正直そうとも言い切れないところが、生演奏の不思議さです。でもこの貴重な機会を、長年の友人らや、ぐすたふさんと共有できたのが、とてもうれしいことでした。