894794 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

じゃくの音楽日記帳

じゃくの音楽日記帳

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X
2014.01.05
XML
カテゴリ:演奏会(2013年)

続いて2013年器楽・室内楽の演奏会で印象に残ったものです。

--------------------------------------------------------------
  5月27日 ウィーン・シュルツ室内合奏団と吉野直子 (武蔵野市民文化会館小ホール)
  6月  3日 アンナ・ヴィニツカヤ ピアノリサイタル    (武蔵野市民文化会館小ホール)
10月15日 神尾真由子 ヴァイオリンリサイタル       (東京オペラシティ)
12月16日 シェプキン ゴールドベルク変奏曲ほか   (すみだトリフォニー) 
--------------------------------------------------------------

武蔵野市民文化会館小ホールでのシュルツ室内合奏団のチケットが売り出されたのは、コンサートまでそれほど日がないときでした。開催が比較的急に決まったのだと思います。チケットをすぐ購入したのですが、そのすぐあとに、体調不良のためシュルツ氏の来日が中止となるとの発表がありました。そしてそのすぐあとに、今度はなんとシュルツ氏の訃報に接することになってしまいました。なんとも残念なことに、日本での一連のコンサートが、シュルツ氏を追悼する演奏会になってしまったのでした。

この日本ツアーの最終公演が、武蔵野市民文化会館小ホールでの演奏会で、モーツァルトのフルート協奏曲全曲演奏会でした。シュルツ氏に代わってフルートを吹いたのが、ウィーンフィル現首席のワルター・アウアーさんでした。お名前は存じ上げませんでしたが、お顔はテレビのニューイヤーコンサートなどでお馴染みの方でした。プログラムの前半はまだ本調子でなかったようですが、後半はさすがにウィーンフィルの首席をはる方、闊達なフルートを聴かせていただきました。そして、吉野さんが、シュルツさんへの追悼のメッセージをお話されたあと、アンコールにグルックの精霊の踊りが演奏されました。三部形式の中間部は、ハープの吉野さんとフルートのアウアーさんだけの二重奏になりました。ここでのフルートが、あまりにも美しくはかなく、思わず涙がにじみます。その眼でふと、演奏の手を休めている舞台上の室内合奏団の人たちを見ると、コンミスをはじめ、多くの方が、涙を浮かべています。この瞬間、シュルツさんがアウアーさんに乗り移って、アウアーさんと一緒に吹いていたに違いありません。このフルートの奇跡的な響きに、そこにいた誰もが強く胸打たれたことと思います。やがて中間部が終わって、また全員の合奏になりました。アウアーさんの眼にも、吉野さんの眼にも涙がにじんでいました。やがて演奏が終わって、少しずつ始まった拍手が、だんだんと大きくなり、やがて聴衆は一人立ち、二人立ち、最後はほぼ全員がスタンディングして、シュルツさんと演奏者の皆様に、あつい感謝の拍手が長く続きました。シュルツさんのご冥福をお祈り申し上げます。

6月のアンナ・ヴィニツカヤさんというピアニストのリサイタルは、鮮烈な演奏でした。前半はシューベルトとブラームスで、これも良かったですが、後半のドビュッシーとプロコフィエフが圧巻でした。ドビュッシーの「喜びの島」は、これまで接してきたいくつかの演奏には、僕はあまりピンと来なかったのですが、この演奏を聴いて、喜びに満ち満ちたような、この曲の真価がようやく理解できました。最後のプロコフィエフのソナタ第二番は、さらに躍動的で強靭で、ピアノを弾く喜びにあふれた、颯爽とした演奏でした。見事でした!

10月の神尾さんのリサイタルもすごかったです。オーケストラ演奏会の記事でちょっと書いたように、このリサイタルの少し前に、BBC交響楽団との共演で神尾さんがモーツァルトの協奏曲を弾いたのを聴きましたが、そのときは特になんということもない印象でしたし、弾き終えたあとのご本人の表情も、ごく普通で淡々としていて、アンコールもなしにカーテンコールがあっさりと終わってしまいました。おそらくご本人にしても不完全燃焼だったのだろうと思います。しかしこのリサイタルはすごかったです。プログラムはオールロシアもので、前半がラフマニノフ、プロコフィエフの小品と、メトネルを2曲で、後半がプロコフィエフを2曲でした。メトネルのピアノ曲は大好きです。今夜のメトネルの1曲目は、もともとピアノ曲の「二つのおとぎ話」から1曲で、2曲目はヴァイオリンソナタ第一番でした。このソナタは初めて聴きましたが、抒情性と劇性をあわせもったとても素敵な曲で、その魅力を存分に伝えてくれるすこぶる充実した演奏でした。これだけでも大満足でしたが、後半さらにプロコフィエフの2曲も、堂々たる自在な演奏ぶりで、「選ばれし者」たる貫禄ぶりを強烈に魅せつけていただきました。演奏終了後のお顔も、先日のモーツァルトの協奏曲のときとはまったく違って、自信と満足感がにじみ出た、なんとも素敵な表情でした。何曲かやっていただいたアンコールも、熊ん蜂の飛行とか、チャイコフスキーの小品など、全部ロシアもので統一され、徹底していました。神尾さんはメトネルのソナタのレコーディングはされてないようですので、是非録音を望みたいです。

12月のシェプキンのリサイタルは、日本でたびたび(3回?)とりあげているゴールドベルク変奏曲でした。僕は何年か前に彼のゴールドベルクを1度聴いて、今回は2回目でした。今回は、リサイタル当日の12月16日がベートーヴェンの誕生日ということから、シェプキンの強い希望で前半にベートーヴェンの6つのバガテルを弾き、後半がゴールドベルク全曲という、贅沢なプログラムでした。ベートーヴェンのバガテルは、静かに深く思索する味わいが良く出ていて、素敵でした。メインのゴールドベルクは、作品を完全に自家薬籠中のものにして、装飾音や、オクターブの変化とか、いろいろな点に即興的な感性があふれた演奏で、ときにはっとするほど美しく、聴いていて飽きず、あっという間に最初のアリアが戻ってきて、終わってしまった感じでした。テンポの緩急の差が大きく、全体通したときの整合性というか統一性の面よりも、一瞬一瞬の感興を優先した、個性豊かな演奏でした。もちろんどちらが良い悪いということではありません。バッハ解釈の多様な可能性をまた一つ鮮やかに開示してくれたシェプキンさんは、次の機会にも、この曲からまた違った魅力を、きっと引き出してくれることでしょう。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2014.01.05 16:08:22
コメント(0) | コメントを書く


PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Category

Comments

高速タンギング@ Re:高速タンギングさんのラジオ投稿(01/25) じゃくさんこんばんは 10月10日木曜日午前…
高速タンギング@ Re:高速タンギングさんのラジオ投稿(01/25) じゃくさんこんにちは かけるクラシックリ…
高速タンギング@ Re:高速タンギングさんのラジオ投稿(01/25) じゃくさんこんばんは 実は8月14日から8月…
高速タンギング@ Re[16]:高速タンギングさんのラジオ投稿(01/25) じゃく3さんへ こんばんは 冒頭の音がバス…
じゃく3@ Re[1]:高速タンギングさんのラジオ投稿(01/25) 高速タンギングさん、音楽遊覧飛行に続い…
じゃく3@ Re[1]:高速タンギングさんのラジオ投稿(01/25) 高速タンギングさん、音楽遊覧飛行のリク…

Freepage List

Favorite Blog

「静かな場所」別館b… oyajiりゅうさん
はてなのゆりさん はてなのゆりさん
「のり2・クラシカ… のり2さん
つれづれ浮世草 嫌好法師さん
「いーとも」のブログ いーとも3さん

Recent Posts


© Rakuten Group, Inc.
X