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じゃくの音楽日記帳

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2014.03.13
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カテゴリ:演奏会(2014年)
3月8日と9日、びわ湖ホールでコルンゴルトのオペラ「死の都」を聴きました。舞台形式として日本初演です。

沼尻竜典オペラセレクション
コルンゴルト 「死の都」
指揮 沼尻竜典
演出 栗山昌良
京都市交響楽団
びわ湖ホール声楽アンサンブル
大津児童合唱団

このオペラ、CDで初めて聴いたときから非常に感動し、滅茶苦茶好きになりました。いつか生舞台で観る機会が来ることを楽しみにしていました。それが今回ついに実現することになり、しかも沼尻さんの指揮ですから大いに期待していました

このオペラは、新国立劇場でも同じ3月に上演があり、それは大分以前から知っていました。沼尻さんのびわ湖ホールでの上演を知ったのはそれより大分あとでした。仕事で3月6日と7日に大阪に泊まる予定があり、それで8日に関西方面で何かコンサートはないかと検索したら、なんと死の都が出てきてびっくり仰天しました。これは絶好の機会とばかりにびわ湖行きを決めました。元々3月9日には横浜でインバル&都響のマーラー8番があり、それに行くつもりでしたので、最初は8日びわ湖、9日横浜という計画を考えました。しかし死の都、それも沼尻さんの死の都を今後聴けるチャンスはそうはないだろう、それに比べればインバルのマーラー8番はいずれまた聴く機会があるだろうと考え、琵琶湖に一泊してこの貴重なオペラ上演を二日間聴くことにしました。

上演が近づくのにあわせて保有するCD(ラインスドルフ指揮、ルネ・コロ、キャロル・ネブレット、ヘルマン・プライ他、1975年録音)を聴きかえしては感動に浸り、上演を楽しみにしていました。

事前の大津の天気予報は最低気温マイナス一度で曇り時々雨または雪!ということで、寒さを心配しながらやってきましたが、当日は幸い曇り時々晴れでした。いずれ来てみたかったびわ湖ホールに、初めて訪れる機会でもありました。JRから京阪電鉄の味わいあるローカル線に乗り継ぎ、湖畔に聳えるびわ湖ホールに到着しました。ロビーから臨む灰色がかった緑の湖面と、その向こうにうっすらと白く雪を被った山々が、美しいです。ロビーのレストランでサンドイッチを食べてコーヒーでくつろぎ、少し時間があったのでホール裏手の湖畔の散歩道を散策しました。犬を連れて散歩する方が沢山いらしゃいました。

P1070104.jpg

さていよいよ初日の上演です。
このオペラ、冒頭からすこぶるハイテンションの音楽が続きます。特にテノールの主人公パウルは、第一幕序盤に登場してから、熱に浮かされたような高揚した気分で第一幕をほぼずっと歌いつづけ、しかも高音がばしばし出てくるので、さぞや大変だろうと思います。初日に関しては、このパウル(鈴木准さん)が不調だったのが残念でしたが、ほかは皆さんすばらしく、メゾソプラノの家政婦ブリギッタ(加納悦子さん)、主人公パウルの友人であるバリトンのフランク(小森輝彦さん)ともに、深い声で役割りを充分にこなしていました。このオペラのもう一人の主役である、パウルが惹かれる踊り子マリエッタ(亡くなったパウルの妻マリーとの一人二役)を歌ったソプラノ砂川涼子さんが非常に素晴らしく、第一幕、第二幕、第三幕と進む毎にマリエッタの奔放で自由な性格の描き出しが鮮やかで、圧倒的な存在感でした。

このオペラの聴かせどころの名アリアが二つあります。一つは第一幕でマリエッタ、ついでパウルが加わって二重唱で歌われるリュートの歌、もうひとつは第二幕で道化師フリッツが歌うピエロの歌、これどちらも、沼尻さんはぐっとテンポを落とし、じっくりとうたわせて、歌手たちもそれに充分に答えて、感動のアリアを聴かせてくれました。フリッツ(バリトンの迎肇聡さん)の歌、泣けました。

第三幕の最後、夢から醒めたパウルが、死の都ブルージュから去ることを決意して歌う最後のアリアは、第一幕のリュートの歌と同じメロディーで、歌詞が異なって、パウルのしみじみとした心境が歌われます。このあたりになるとパウルの歌がいよいよ心に染み、感動もいよいよ極まります。歌い終えたパウルが名残惜しさを残しつつ舞台(パウルの部屋)から去り、最後の和音が静かに消えていきます。幕切れの仕方は、保有するCDの対訳のト書きによると、舞台に最後に一人残ったパウルが去っていき、幕が下りる、と書いてありました。それで自分としては、音楽が静かに消えていくと比較的すぐに照明が落とされて真っ暗になって終わるのだろうな、と想像していました。自分としてはしばらく静寂の中で感動の余韻に浸りたいな、だけれど暗くなったらすぐに拍手が始まってしまうだろうな、と思っていました。しかし、今回の演出は、そこに素敵な工夫がされていました。

パウルが去った舞台上には、一人家政婦ブリギッタが残り、音楽が鳴り止んでも照明が明るいままです。ブリギッタは完全な静寂の中しずしずと歩いて舞台正面に置かれた燭台を手に取り、後方にゆっくりと後ずさりしてそこで初めて、照明がゆっくりと落とされはじめ、幕が下がりはじめ、そして拍手が起こりはじめました。なんと素敵な工夫でしょう。これによって、音楽が鳴り止んでから暫くの間、ホール内の皆が静寂のひとときを共有でき、感動の余韻に浸ることができました。

かくて初日は、大感動、大満足の体験となりました、マリエッタ(マリー)の名唱を筆頭に他の歌手たちの見事な歌いぶりが光る初日でした。パウルの声の不調だけが残念でしたが、オペラで登場歌手の全員が絶好調ということはなかなかないですから、これはやむを得ないことかと思います。パウルも、最後の歌はしみじみとした味わいの心に残る歌を聴かせていただきました。そして聴かせどころをたっぷりと聴かせてくれた沼尻さんの指揮は本当に素晴らしいと思います。字幕翻訳(蔵原順子さん)もCDの翻訳とちょっと違った味わいで、素敵でした。

初日を聴き終わって本当に充実感がありました。これでもし二日目が聴けないとしても、それでもいいなぁと思うほどの満足感がありました。幸福な余韻に浸りつつ、宿に向かいました。





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Last updated  2014.03.27 20:50:01
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