カテゴリ:演奏会(2014年)
3月9日、二日目の上演です。昨日よりもさらに良い天気になり、晴れやかな気持ちでホールにやってきました。
この日のパウル役は、最初の予定の歌手が体調不良のため、代役で、山本康寛さんが歌いました。びわ湖ホール声楽アンサンブルに所属の方です。このパウルが、素晴らしかったです!歌が素晴らしかったのは勿論のこと、ちょっとした仕草も、場に即した、いい演技が随所に見られました。極めつけは第一幕の序盤、マリエッタが初めて登場する場面の仕草でした。 第一幕の音楽は全編息もつけないほどの絢爛たる音と声の連続でどこも大好きです。その中で特に僕が好きな場面のひとつが、マリエッタが初めて登場するシーンの音楽です。登場したマリエッタが美しかったマリーにそっくりなのを見てパウルが「不思議だ!(Wunderbar!)」と感嘆の声をあげます。ここで天才コルンゴルトが書いたオケの音楽は、感嘆に打たれるパウルの幸福な衝撃をきらめくように鮮やかに映し出す、極めて印象的な一瞬です。この場面で、初日のパウルは、登場したマリエッタにすかさず近づき、左手に口づけしてから、「不思議だ!」というのでした。この一連の動作にはかなりの違和感がありました。オケの音楽はパウルの感嘆の衝撃を見事に表しているのに、肝心のパウル自身が感嘆の衝撃を全くもって感じさせず、余裕を持ってマリエッタの手に口づけをしているわけです。演出の指示でこうやっているのだとしたら、音楽の内容に無頓着な演出だなぁ、といささか疑問を持った仕草でした。 ところが二日目は違ったのです。 登場したマリエッタを見たパウルは、驚きに打たれて思わず少し後ずさりしました!そしてその場所で「不思議だ!」と感嘆の声をあげ、そのあとようやく気を取り直してマリエッタに近づき、そして手をとって口付けをしたのでした。これこそまさにコルンゴルトが書いた音楽の内容にぴったりと合致した一連の所作です。演出の指示が元々こうだったのか、それとも演出の指示は初日のとおりで、それを敢えて破ってご自分で判断してこの所作をしたのかはわかりませんが、もし後者だとしたら見事な判断です。 この二日目のパウルは全編にわたって本当に素晴らしく、最後の場面の歌はパウルの、亡き妻への名残惜しさを抱きつつも前向きに生きて行こうという意志も現れていて、もう本当に感動に浸りながら聴いていました。 家政婦ブリギッタ(池田香織さん)、友人フランク(黒田博さん)ともに、初日の方々と同様に素晴らしかったです。この日のマリエッタ&マリー役の飯田みち代さんは、どちらかというと自由奔放なマリエッタよりも真面目なマリー的な性格表現に親和性が高い歌唱で、初日とはまた違った雰囲気を楽しめました 二日ともすこぶる充実した上演でした。沼尻さんの指揮は緩急のツボを押さえた本当に素晴らしいものでしたし京響も金管軍団を筆頭に、この難しい曲を良く演奏していました。ハーブやチェレスタが非常に活躍するこのオペラを生で聴けて、極上の体験をすることができました。 このすぐ後、同じ3月に新国立劇場でも死の都が取り上げられます。こちらも大変楽しみにしています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.03.27 20:50:56
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