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2014.08.28
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カテゴリ:福島原発震災
原発本続けます。
柳田邦男著 終わらない原発事故と「日本病」
新潮社
発行 2013年12月20日

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わたくし、柳田邦男氏の著作といえば、「犠牲(サクリファイス)わが息子・脳死の11日」が強い感銘を受けた忘れがたい本です。読んだきっかけは、レコード芸術のマタイ受難曲関連の記事で紹介されていたことです。この本を契機に、それまでは近寄りにくく感じていたマタイ受難曲の世界に親しんでいきましたが、それよりも何よりも、息子の脳死に至るまでの父親としての苦悩を、類まれな知性と深い愛情で昇華していく著者の懸命な姿から、いのちの尊さがひしひしと伝わってくる本でした。自分の仕事のあり方にも影響を与えられた本です。

柳田邦男氏は、ノンフィクション作家として独立するまではNHKの記者だったそうで、記者としての最初の赴任地が広島で、被爆の取材で大きな学びを得たそうです。その後独立してからも、多くの災害、事故、公害などに積極的に関わり、人間の被害をいかに避けるべきか、いかに減らすべきか、50年にわたって考え、提言を続けてきた柳田氏です。福島原発震災でも、政府の事故調査・検証委員会の一人として関わられていましたね。この本は、そんな柳田氏がご自身の2004年以後の評論を、「日本病」という視点からまとめ、今も苦しみが続いている原発事故の被害者をどう救っていくかについて、提言した本です。

氏は、日本で起こっている数々の災害や事故を分析し、2000年以後にそれらがいのちを軽視する方向に大きく変質していること、行政も企業も病んでいることを指摘し、それを1970年代のアメリカ病(スリーマイル島の原発事故が1979年)と同じ流れでとらえ、「日本病」と呼んでいます。雪印乳業の食中毒、三菱自動車の車輪脱落事故、六本木ヒルズの回転ドア事故、エレベーター事故、JR西日本・福知山線の脱線転覆事故、薬害C型肝炎への厚生労働省の対応などです。これらいずれも、異常を知りながらも放置したり、小さな事故が続発していてもそれを無視あるいは隠蔽しているうちに、起きたものであり、そしてこの「日本病」の最悪・最大なものが福島の原発事故だと氏は指摘しています。まったくその通りと思います。そしてその後も、同種の事故や問題(JR北海道のレール幅データ改竄、みずほ銀行の暴力団への融資隠蔽、一流ホテルの食品偽造など)が続いている日本の現状に、氏は強く危機感を感じています。

氏の説く、「被害者の視点からの分析」を意識したアプローチは本当に大事だと思うし、最終章の「3・11後の死生観」で語られている、いのちへの思いを大切にすることが、何よりも今の日本に求められていることと思います。





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Last updated  2014.08.28 16:25:55
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