2015年に聴いたコンサートのまとめ、続いてはマーラー以外のオケものです。
○ブルックナー
7番 インキネン&日フィル 4/25 サントリー
ノット&東響 6/ 6 サントリー
ハイティンク&ロンドン響 9/30 ミューザ川崎
8番 ヤノフスキ&ベルリン放響 3/18 みなとみらい
9番 ティーレマン&ドレスデン国立歌劇場管 2/22 みなとみらい
○シベリウス
5,6,7番 尾高&札響 2/17 サントリー
5,7番 リントゥ&フィンランド放響 11/ 2 すみだトリフォニー
1,2番 3,4番 5,6,7番 カム&ラハティ響 11/26,27,29 東京オペラシティ
5,6,7番 ヴァンスカ&読響 12/ 4 サントリー
○その他
武満・吉松・リゲティ・クセナキス(井上道義&新日フィル) 1/29 サントリー
スメタナ「我が祖国」 (フルシャ&プラハフィル) 2/ 5 東京芸術劇場
チャイコフスキー交響曲第5番(フェドセーエフ&チャイコフスキーSO)5/31 サントリー
ブラームス交響曲第3番第4番(大植&東フィル) 9/22 オーチャード
近年、自分的にはコンサートに行く頻度が減っているブルックナーです。7番はノット&東響が、両翼配置の良さを生かした、引き締まってバランスのとれた、素晴らしい演奏でした。ブルックナーとマーラーの両方をハイレベルで演奏するノットに率いられた東響のさらなる進化が非常に楽しみな2016年です。ハイティンクのブルックナーは、僕は今までにドレスデン国立歌劇場管との8番(2004年)、シカゴ響との7番(2009年)、ロンドン響との9番(2013年)を聴きました。ドレスデンとの8番が深い呼吸で非常な名演でした。今回の7番は、中庸のテンポで、個人的には特別にどうということのないブルックナーに聞こえてしまいました。その2日前にマーラー4番の奇跡的な演奏をしていただき、当方の受容キャパシティがマーラーの音楽で満杯になってしまい、そこからの切り替えが間に合わなかったというタイミングの悪さもあったかもしれません。終演後の会場は、マーラーの時よりも格段に大きな盛り上がりでハイティンクを称えていました。なお最初のオケの入場で、入場が間もなく終わろうとするときに、あわてて舞台下手奥(向かって左側)に椅子が一つ追加されましたが、曲が始まってもそこには誰も座らず空席のままでした。あれは何なのだろうと思っていると、第一楽章が終わって第二楽章が始まる前に、それまで舞台上手奥(向かって右奥)に座って吹いていたチューバ奏者が、巨大な楽器を持って舞台下手奥に移動し、その空席に座って、第二楽章をそこで吹きました。ホルン隊の半分のワーグナーチューバ持ち替え部隊のすぐ隣でチューバを吹いたというわけです。そして第二楽章が終わると、また楽器を持ってもとの上手奥に移動し、最後まで元の席で吹きました。第二楽章でチューバをワーグナーチューバのそばで吹かせるという方法は好ましいのですが、わざわざそのために楽章間で移動するというのはあまり賢明な方法ではないように思いましたし、それによってチューバがトロンボーン隊から離れてしまうという欠点もありました。チューバの配置に関しては、ホルン隊とトロンボーン隊の位置を工夫することで、最初からチューバをワーグナーチューバのそばでかつトロンボーンのそばに配置するという方法を何度か見たことがあり、そのほうが移動しなくて落ち着くし、良いと思います。
ヤノフスキの8番は、スケールは大きくないけれど、職人気質の堅実なブルックナーという感じで、なかなか良いブルックナーでした。
2015年はシベリウス記念年で、5,6,7番を一夜で演奏する演奏会を3回(尾高、カム、ヴァンスカ)聴けた充実の年になりました。個人的には尾高&札響が一番感銘を受けました。ついでカム&ラハティ響も素晴らしかったです。この両者は、それぞれ音楽監督としての一つの時代をオケと築き、その時代の最後を締める演奏会という、特別なものであったということも大きいかと思います。一方でヴァンスカは、かつてラハティ響を率いて来日したときのタピオラの凍てつくような美しさ、別次元のような純度の高さが強く印象に残っていたので大いに期待していましたが、それほどではなかったです。
なお5,6,7番の演奏会の休憩の取り方は、尾高&札響が5番のあと休憩して、6番のあと休憩して、最後7番と、1曲ずつ区切りをつけて演奏して、それぞれの曲を最大限に尊重する姿勢が感じられましたし、聴くほうも休憩をはさむことで気持ちを新たにして聴くことができて、個人的には一番良かったです。カムとヴァンスカは、5番のあと休憩、そして6番と7番を休憩なしで演奏するというものでした。カムはそれでも6番と7番を独立した曲として受け止めやすかったですが、ヴァンスカを聴いていて、なんだか6番が7番の前奏曲のような感じがして、ちょっと違和感がありました。あと一夜で5番と7番をやったリントゥは、前半がタピオラと7番で、休憩をはさんで5番でした。やはり7番最後の方が心的なバランスはやはりいいかなと思いました。
その他では、1月の井上道義&新日フィルの定期演奏会が選曲・演奏とも秀逸で楽しめました。武満徹の「地平線のドーリア」、吉松隆のトロンボーン協奏曲「オリオン・マシーン」、リゲティの「ロンターノ」、クセナキスの「ノモス・ガンマ」というプログラム。ノモス・ガンマという曲は全然知りませんでした。指揮者が中央に位置し、それを円形に取り囲んだオケが演奏するというユニークな曲で、井上道義の得意レパートリーということです。井上道義がタコのように身をくねらせながらこの曲のパワーを引き出し、これは凄かったです。
フェドセーエフ&チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラを、僕は2012年に悲愴をメインとするオール・チャイコフスキー・プログラムで初めて聴き、圧倒的な感銘を受けました。今回はチャイコの5番、2012年ほどの感銘には至りませんでしたが、やはり充実のロシアの歌の魂を聴かせていただきました。83歳になるフェドセーエフと、彼が40年以上にわたって率いているこのオケ、次の機会にも是非聴きたいと思います。