ヴォルフガング・リュプザムのオルガンリサイタルを聴きました。オールバッハプログラムです。
1月11日 武蔵野市民文化会館 小ホール
リュプザムさんと言えばCDで時々名前を見かけます。なんとヘルムート・ヴァルヒャとマリー=クレール・アランに師事し、二度のバッハ全集を含む膨大な録音を残しているというすごい経歴のオルガニストだそうですが、今回が初来日ということです。ともかくも新年にオールバッハプログラムということで楽しみにしていました。
プログラム前半はクラヴィーア練習曲集第3部から数曲と、トリオソナタ第2番ハ短調BWV526。トリオソナタ第2番は大好きな曲で、リヒターの名盤で愛聴しています。
プログラム後半は、パストラーレBWV590、そして最後はパッサカリアBWV582でした。
一夜全体を通じて、静かな曲は少な目で、大音量で堅牢な構成の曲を主とするプログラムでした。僕としては最後のパッサカリアが、バランス良い響きとがっしりした構成で聴かせてくれて、充実した演奏と思いました。アンコールには静かなコラールを1曲弾いていただきました。
なおこのパッサカリアBWV582は、音楽を聴けば「ああこれ」と思われるであろう、有名なメロディに基づく曲です。2014年の1月初めにここ武蔵野で行われたハンス=オラ・エリクソンによるオルガンリサイタル(僕にとっての2014年の初コンサート)でも、この曲がプログラムの中心的作品として取り上げられていました。
優れたバッハ演奏には、ある種の微妙な「ため」がありますよね。フレージングというよりも、もうちょっとミクロ的な、小節の中でのちょっと引っかかるようなわずかな「ため」。これがなくてただスムーズに流れてしまうバッハは僕としては物足りないし、ありすぎると不自然に感じてしまいます。そのあたりの微妙な「ため」の違いが、バッハ演奏の個性に大きく関わってくる点のひとつだと思っています。リュプザムさんの演奏には、やはりリュプザムさん独特の「ため」があり、僕にはちょっと耳慣れない感じがしました。むしろもうちょっと長いスパン、何小節かにわたってテンポが変化していくような、そういうところの扱いがリュプザムさんは堅実で、ドイツの職人的味わいを感じました。