このところアマオケによるマーラー3番の演奏会が続いていて、うれしいことです。4月、6月に続いて今年3回目のアマオケによるマーラー3番演奏会を聴きに行きました。
都民交響楽団、第122回定期演奏会。
指揮:末廣誠
管弦楽:都民交響楽団
アルト独唱:菅有美子
女声合唱:コーロ・ヨコハマーレ、コール・ジャスミン、東京ワシントンウィメンズクラブコーラスグループ
児童合唱:TOKYO FM 少年合唱団
7月31日
東京文化会館
なんと入場無料という親切なコンセプトの演奏会です。あらかじめ往復はがきで応募すると、応募者多数の場合は抽選で、当たると返信用葉書きが返ってきます。それを当日持っていくと、入場券(指定席)と引き換えてくれる、ただし席の指定はできないという、ちとややこしい仕組みです。(オケを支援するための「友の会」の制度もあって、年会費3千円払うと、その年度の3回の演奏会を指定席で聴きに行けるということです。これはあらかじめ良席が割り当てられるのだと思われます。)
当日、さいわい比較的良席の券をいただくことができました。ホールに入って、いつものように配置をチェックです。舞台の一番後ろには何段もの雛壇が設置されていました。チューブラーベルが、雛壇の左端の高いところに置いてあったのはポイントアップ。これで児童合唱団が雛壇の高いところ(上半分)に並び、女声合唱が低いところ(下半分)に並んだら素晴らしいなと思いました。しかしそうではありませんでした。オケの入場に先立って女声合唱団が入場してきましたが、雛壇の、向かって右側の半分(上手側の半分)に横6列に着席しました。約60人の大女声合唱団です。続いてオケが入場しました。弦は左から第一Vn,第二Vn,Vc,Va,Cbの通常配置、ハープは舞台左端に2台です。
第一楽章は、力強く引き締まった演奏でした。このアマオケは、入団時だけでなく、4年に一度の更新オーディション!を行ってレベル維持に勤めているそうです。流石にオケの技術は素晴らしく、パートによってはプロに迫るという感じもしました。すばらしいです。
指揮は奇をてらうことない正攻法のものでした。いつものように細部を書いておくと、冒頭のホルン主題の「ギアダウン」はなし、ホルン主題時のシンバルは呈示時も再現時も二人、再現直前の小太鼓は舞台裏、夏の行進の弦半分部分は前半分のプルトで弾いていました。
指揮者のしっかりきっちりした音楽づくりと、オケの高い技術とが相まって、かなり立派で充実した、好感が持てる第一楽章でした。
第一楽章は、力強く男性的な性質が前面に出ていて、良い結果になっていました。しかし続く第二楽章も、同じような調子の音楽に終始して、やや単調というか、愛らしい魅力にはやや乏しい感がありました。
児童合唱の入場は、すでに良く覚えていませんが、第一楽章が終わったあとか、あるいは第二楽章が終わったあとかの、どちらかでした。児童合唱は、舞台後方雛壇の下手側に、約30人が4列に並びました。すなわち雛壇の向かって右側が女性合唱、左側が児童合唱、一番左端にチューブラーベルという配置になります。あと児童合唱が入場するときに独唱者も入場したらしく、独唱者はいつのまにかオケの中に座っていました。独唱者は、良くあるように指揮者のすぐ左に座るのではなく、第二Vnの中の椅子に座っていました。3番の場合、独唱者の出番が少なくて座っている時間が長いので、こういう風にオケの中に座るというのはなかなか気が利いていると思います。
そして第三楽章。6月の関西グスタフマーラー響に続いて今回も、ポストホルンがホール内でした。しかも今回は客席でなく、舞台上でした。雛壇の最上段のセンター、女声合唱と児童合唱の間で、吹いていました。結果、当然ながら距離感ゼロのポストホルンとなっていたのが、僕としては極めて残念でした。あとでプログラムに載っている指揮者自身による楽曲解説を見てみたら、“「遠くから鳴り響くように」と指示されているため大抵は舞台裏で演奏されますが、本日はオーケストラから少し離れて、合唱の最上段に配置します。”と書いてありました。でも、舞台裏でやらずにあえて舞台上でやる、その理由は何も書いてありませんでした。今後、場内のポストホルンが流行らなければいいなと願うものです。
第三楽章が終わると、ポストホルン奏者は雛壇からそのまままっすぐ下に降りてきました。もとの自席に座ったのだと思います。また独唱者はオケの中の席から立ち、前に出てきて、指揮者のすぐ左側に立ちました。それとともに指揮者は、あらかじめ全合唱団を起立させました。これはシャイーと同じ方法で、第四・第五楽章間のアタッカのための、用意周到な方法です。
第四楽章のホルンは弱音で高い音が多くとても難しいのですが、きっちり吹いていて、素晴らしかったです。
第四楽章が終わるとそのままアタッカで、第五楽章へ。ここは完璧な良いアタッカでした。児童合唱のFM TOKYO合唱団は全員少年の貴重な合唱団です。マーラー3番でときどき歌ってくれますが、いつも充実した歌を聴かせてくれます。今回も、人数が女声合唱の約半分にも拘らず、しっかりと歌ってくれていいました。アルト独唱は、第五楽章の途中で自分の出番が終わると、すぐにオケの中の席に引っ込み、着席しました。
第五・第六楽章間は、合唱団が立ちっぱなしで、完全なアタッカでした。そして合唱団は終楽章が始まってしばらく立ったままで、ホルンのモチィーフで盛り上がるところあたりで着席しました。従来からあるオーソドックスな方法です。
結局今回のふたつのアタッカは、AA方式でした。(AA方式については関西グスタフマーラー響の3番を聴く(その3)の記事を参照ください。)指揮者は明確なアタッカ遂行意識を持ち、そのために合唱団の起立タイミングなどに細かな配慮をした、行き届いたアタッカでした。BとかCよりも全然良かったです。やはりこのようにやってほしいです。
それでも、その場にいて、僕がそのときに感じたかすかな物足りなさを、書いておきます。それは、間合いです。第五楽章の音が静かに消えていってから、第六楽章が始まるまでの間合いが、今回の演奏、僕にはちょっと短すぎました。「アタッカでやれと言っておきながら短すぎるとは何を言うのか」、とお叱りを受けるかもしれません。例によって贅沢すぎるというか、わがままな偏屈ファンの一言です、すみません。(^^;)。
このアタッカの間合い、すなわち楽章と楽章の間の静寂の時間は、長すぎてもダメですが、短すぎても、ダメです。これが丁度よい長さだと、さぁいよいよこれから終楽章が始まる、という心理的緊張感というか期待感というかが程よく高まっていきます。そして終楽章を聴く心の構えが整ったところで、第六楽章が始まると、最高なのです。といってもそれは、物理的な時間にしたら本当に短い、おそらく2~3秒程度の時間だと思います。シャイーや三河&小田原フィルの演奏は、その間合いがともかく絶妙・最高でした。今回は、間合いの静寂時間が短すぎて、その心の準備が整う前に始まってしまったような感じが、個人的にはしました。単に乗り遅れリスナーのつぶやきかもしれません(爆)。
終楽章の音楽は、感動的なものでした。アマオケでここまでの終楽章を演奏するというのは、本当に立派な、素晴らしいことです。指揮者の音楽は、自由なロマン的な美というよりも、構成の整ったきちんとした美に親和性が高いと思いました。その方向での魅力を、いろいろと感ずることができました。今回は何と言っても舞台上のポストホルンだけが、非常に残念な点でしたが、それを除けば細部にいろいろな工夫がなされた、真摯な演奏による3番を聴けました。
皆様ありがとうございました!