パーヴォ・ヤルヴィ&N響のマーラー8番を聴きました。
マーラー 交響曲第8番
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
管弦楽:NHK交響楽団 (コンマス:篠崎史紀)
ソプラノ1:エリン・ウォール
ソプラノ2:アンジェラ・ミード
ソプラノ3:クラウディア・ボイル
アルト1:カタリーナ・ダライマン
アルト2:アンネリー・ペーボ
テノール:ミヒャエル・シャーデ
バリトン:ミヒャエル・ナジ
バス:アイン・アンガー
合唱:新国立劇場合唱団、栗友会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
9月8日 NHKホール
N響90周年記念特別演奏会
この演奏会はNHK-FMで生中継されたので、聴かれた方も多いと思います。7月にハーディング&新日フィルの渾身の8番を聴いたばかりでしたが、またまた素晴らしい8番を聴けました。
配置を書いておきます。NHKホールの広い舞台をさらに前方に拡張して(普段は5列の客席として使用されるオケピット部分も舞台として)、そこに全オケと全合唱を乗せるという方式で、合唱の客席部分へのはみ出しはありませんでした。弦楽は両翼配置で、舞台上手にハープ4台、チェレスタ、ハルモニウム、ピアノを固めて置いていました。合唱団は舞台奥の雛壇に何列にもわたって並びました。合唱団の真ん中の前の方は児童合唱で、そのまわりを、大人の大合唱団が取り囲むように位置しました。このように児童合唱をセンターに据えるという配置は、視覚的にも聴覚的にも良い配置でした。
独唱者は、普通に舞台の最前列に、指揮者の左右に横一列に並びました。指揮者の左手に女声4人、右手に男声3人でした。第二部最後近くの栄光の聖母は、右手上のパイプオルガンのあるバルコニーで歌っていました。丁度指揮者の右真横の上方に位置していました。バンダの場所は開演前にはわかりませんでしたが、後述するように、2階右ブロックの客席の中ほどでした。
今回は舞台左右の両端に、字幕がつきました。この曲の歌詞の意味をほとんど理解していない僕のような聴き手には、とてもありがたいことです。8番は声楽の出番がとても 多いにもかかわらず、字幕が使用されることはそう滅多になく、僕が覚えているのは2012年夏の名古屋マーラー音楽祭の8番ぐらいですが、やはり字幕を見ながら聴くというのはとてもわかりやすく、良いものです。
音楽が始まりました。さすがにN響はうまいし、金管は余裕のある吹きっぷりです。デッドなNHKホールで、最初は音響を遠く感じましたが、次第に引き込まれていきました。第一部の最後、バンダが吹き始めたとき、思いがけず自分のすぐ後ろ、かなり至近距離と思しきところからバンダが聞こえてきました。第一部が終わってから振り向いてみると、僕の席から斜め右後ろ、2階右よりの客席の通路に、バンダ7人が横一列に並んでいました。僕の席から直線距離でほんの数メートルくらいです。この位置だとさすがにバンダが強く聞こえすぎて音量バランスは悪かったけれど、バンダのパワフルさを圧倒的に感じ取れて、これはこれで面白い体験でした。
第二部、ヤルヴィは、耽美的ではなく、割合淡々と振っていく感じでしたが、その音楽は引き締まって格調高く、ますます引き込まれていきました。とくに第二部神秘の合唱からラストまでの盛り上がりと高揚は、真に感動的でした。
みなハイレヴェルの歌手の中で、ソプラノ1のエリン・ウォールさんが、図抜けた存在感がありました。またバリトンを歌ったナジさんは、7月のハーディングの8番でも法悦の教父で深い味わいのある歌を聴かせてくれた歌手ですが、今回もほれぼれするような歌を聴かせてくれました。そして声楽陣で何といっても今回称えたいのは、児童合唱でした。まっすぐで美しく良く通る発声で、力強く高貴な、素晴らしい歌でした!センターという配置も良かったと思います。FM中継を聴いた友人も、児童合唱の美しさが半端じゃなかったと言っていました。
今回の演奏は、7月のハーディングの魔法のような美しさという面は少なかったですが、堅牢で充実した演奏で、感動しました。僕は8番はあまり聴きこんでいないので、どのように良かったのかは良くわからないのですが、ひとつにはハーディングの感動の余韻が残っていて自分の感受性が高まっていたのだと思いますし、字幕の存在も大きかったし、オケと独唱者のうまさ、児童合唱の美しさなどなど、いろいろなことが良い方に作用したと思います。個人的には、2011年のデュトワ&N響の8番より、ずっと大きな感動体験となりました。
ヤルヴィはN響と、この10月に3番を演奏します。
N響のホームページの動画ライブラリー
http://www.nhkso.or.jp/library/videolibrary/index.php
に見られるヤルヴィのインタビュー(2016年7月1日分)によると、ヤルヴィはマーラーの作品の中で3番がもっとも好きだそうです!とても楽しみになりました。