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じゃくの音楽日記帳

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2017.05.24
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3月末に広上&京響のマーラー8番を聴きました。遅くなりましたが、是非とも書いておきたい演奏会ですので、記事にしておきます。

京響創立60周年の記念年度の最後を飾る演奏会。もしかして広上さんの9年に及ぶ京響監督時代の最後を締めることになったかもしれない、マーラー8番です。広上さんの監督延長が決まったので、監督最後の演奏会にはなりませんでしたが、一つの大きな節目としての、モニュメンタルな演奏会になることは必至と思いました、そこで発売日は、満を持してチケット取りに臨みました。発売とほぼ同時に瞬速で完売となりましたが、幸い両日ともなんとかゲットできました。

京都市交響楽団 第610回定期演奏会
3月25日、26日 京都コンサートホール

マーラー 交響曲第8番

指揮:広上 淳一
管弦楽:京都市交響楽団
合唱:京響コーラス、京都市少年合唱団 ほか
独唱:ソプラノ1 高橋絵理*、ソプラノ2 田崎 尚美*、ソプラノ3 石橋 栄実、
   アルト1 清水 華澄、アルト2 富岡 明子、
   テノール 福井 敬*、バリトン 小森 輝彦、バス ジョン・ハオ

*ソプラノの高橋さんと田崎さん、テノールの福井さんは急遽の代役としての出演でした。特に福井さんは、本当に本番直前土壇場のピンチヒッターとしてのご登場で、びっしりのスケジュールのところピンポイントでここだけが空いていたということでした。

25日昼過ぎ、無事ホールに到着しました。

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大野&京響のマーラー3番のときに入った1階のお店でコーヒーを飲もうと思っていましたが、少し前に閉店されたと言う貼り紙がありました。雰囲気の良い店だったので残念です。建物の前の広場で少し時間をつぶしていると、周囲で「東北から聴きに来た」等の会話が耳に入ってきます。全国各地から多数の方が集まってきていることでしょう。開場時刻が近づいたのでホール入り口に向かいました。ここの丸いエントランスホールは独特で、幾何学模様の床の周りの、螺旋状の通路を登って行く作りです。通路の壁には歴代音楽監督をはじめ、京響を振った指揮者の方々の写真が飾られ、オケの長い歴史が伝わって来ます。

早目にホール内に入りました。今日の座席は2階サイドの最後部。座席に座って待っていると、初日のプレトークが始まりました。広上さんが、この曲はそう度々はできない、もしかしたら自分がやるのはこれが最後かもしれない、と仰っていました。

プレトークが終わり、合唱団とオケが入場してきました。児童合唱団約70名は舞台の最後部に並びました。大人の合唱団は200名強で、全員がP席に収まりました。この曲としては比較的少数精鋭部隊の合唱団で、ホールのサイズなどを考えての人数設定だったのだと思います。聴いてみると確かにベストバランスの響きでした。独唱7人は普通に指揮者の左右に横一列に並びました。あと第2部の栄光の聖母(ソプラノ3)は、大人の合唱団のすぐ後ろのセンター、パイプオルガンの前で歌いました。オケの配置は、指揮者のすぐ前の正面に、チェレスタが陣取っていたのが珍しかったです、そこにマンドリンも一緒に配置されました。ハープは舞台下手に2台のみで、ハープと左右対称の位置に、パイプオルガンの鍵盤部が鎮座していました。オケの最後部のほぼセンターに、板のような鐘がありました。あと僕の席からは良く見えなかったのですが、金管は舞台後方にほぼ横一列にズラーっと長く並んでいたそうです。バンダ7人は、ホール後壁左上の高いところにあるボックスで吹きました。

初日から、素晴らしい演奏でした。歌手陣では、テノールの福井さんが貫録の存在感がさすがだったのと、ソプラノ1の高橋さんが非常に光っていました。金管隊にも、心打たれました。金管群が、長い和音を伸ばして小さくなっていって次の楽節にうつるところが時々ありますが、そういうところが実に神々しく響きわたり、感動的でした。鐘も、すごくいい音でした。板状の鐘は、物によって音色の違いが大きくて、うまくしないと曲想とミスマッチになってしまいますが、今回の音色は重すぎず軽すぎず、かつ普通のチューブラーベルではなかなか出にくい教会風のひびきがかなり良く出ていて、素晴らしかったです。

第2部の最後近く、練習番号213(第1506小節)からのAlles  Verganglicheの最後の大合唱に入る直前に、全ての音が止み、ただ女声合唱の伸ばしている声だけが残ってホールに響きました。

ここはスコアでは、第2合唱のソプラノとアルトだけが、AllesのAを他パートよりも2小節早く、第1504小節から歌い始めて、ずっとA----と伸ばしていき、次の第1505小節も伸ばしたままで、さらに次の第1506小節に向けて、大きなスラーが書かれています。他のパートには、器楽も声楽も、次の小節に向けてのスラーは書かれてありません。

このあたりはいろいろな音響が重なり合い大きく渦巻いているところなので、普通に楽譜通り演奏すると、このスラーの有無の違いはほとんど聴き取れないで、そのまま第1506小節からの大合唱になだれ込むことになります。しかし広上さんは、ここで第2コーラスのソプラノとアルト以外の全パートが沈黙して一呼吸置く間合いを、長くとりました。それによって、女性合唱の清冽な声だけがしばらく(と言ってもほんの束の間ですが)ホールに響く特別なひとときが生まれ、そして最後の大合唱につながっていきました。マーラーがこのスラーに込めたイメージは、このようなものだったのであろうか、と想像します。

広上さんは2004年に日フィルと、2006年に岡山フィルと8番を演奏しています。僕は日フィルとの演奏を聴きました。その時も今回と同じく、このソプラノとアルトの声だけを長く伸ばしていたのが印象的でした。知人のマーレリアンの方が、合唱団の一員としてこの時の演奏に参加していて、広上さんのここのスコアの読みにいたく感心していたことが、思い出されます。

そして初日の演奏が終わりました。弱音の小ささなどにはあまりこだわらない、熱い歌に溢れた、充実した8番でした。演奏終了後、ぐすたふさんと落ち合って、ゆっくりといろいろお話できたのも楽しいひとときでした。

迎えた二日目です。開演まで時間があったので、コンサートホールに隣接する京都府立植物園に入って、ゆっくりと花を見ながら散策しました。

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植物園のあとは、これも隣接する「京都府立陶板名画の庭」に入ってみました。今日は丁度この界隈で「北山あおいフェスティバル」が開催されていて、入場無料でした。いろいろな名画が大小さまざまな陶板で、広い空間に大胆に配置されていて、なかなかに楽しめました。

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ぶらぶらとコンサートホールの方に来てみると、おりしも「葵使(あおいつかい)」という伝統行事を見ることができました。ホール前の広場で少し待っていると、上賀茂神社から歩いてきた使いの子供や大人たちが到着して、セレモニーを行いました。

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さあいよいよマーラーの開演です。今日の席は1階センターのかなり前方、かぶりつきです。昨日のようなマーラーがまた聴ければいいなぁと思っていました。しかし二日目は、そんなものではありませんでした。初日をもう遥かに超えていく、とてつもない体験になりました。

昨日と同じことが、昨日と同じように行われ、進んで行きます。けれど、昨日いいなと思ったところが、今日はことごとく、とんでもないほど素晴らしく、昨日とは全く違う次元で進んで行きます。広上さんの熱い棒のもとに、京響、合唱、独唱が、みな一つになって歌いあげているこの音楽に、ミューズの神が近づき、祝福してくれている。そう感じながら、この音に、この声に、この思いに、この世界に、震え、涙し、浸りきった体験でした。

終演直後、ロビーでぐすたふさんと顔を合わせた途端に、お互い興奮しながら、感嘆の念を発しあいました。昨日も良かったが、まさかこんな8番が聴けるとは!

終演後、高揚感にあふれかえったロビーで、広上さんと独唱の方たちのトークがありました。広上さんは最初にお話されたあと、聴衆の輪に混ざって周囲の人々と話をしたり、独唱者のお話を聞いたりしていて、気さくなお人柄を間近で感じることができました。

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見事な歌を歌ってくれた福井さん。

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素晴らしかったソプラノ1の高橋さん。「数えたらハイCが10回も出てくる曲で、これを二日続けて歌うのは大変なこと」というお話でした。

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今の広上&京響の充実ぶり、マーラー8番の素晴らしさを満喫できました。ぐすたふさんのお勧めを信じてやってきて、本当に良かったです。熱い感動の余韻にひたりながら、帰路に着きました。

 






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Last updated  2017.05.24 18:22:37
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