カテゴリ:マーラー演奏会(2019年)
ノット&スイス・ロマンド管弦楽団による、マーラーの交響曲第6番を聴きました。
4月13日 東京芸術劇場 ノットさんのマーラーは、東響との演奏で、9番(2014年)、8番(2014年)、3番(2015年)、2番(2017年)と聴いてきました。9番と2番はとてもいい演奏でしたし、2015年の3番は非常な名演でした。これらに続く今回の6番体験を楽しみにしていましたが、この当日は思いがけずいろいろなことが重なって気持ちが落ち着かず、音楽にあんまり浸りにくかった状況で聴きました。そこで今回は音楽自体の感想は差し控え、強烈な印象だったカウベルのことだけ書いておこうと思います。 舞台裏のカウベルは、普通に舞台下手のドアを開けての舞台裏からでした。 まず第1楽章、カウベルが登場する楽節に来て、舞台下手側のドアが開きました。さ、どんなカウベルの音なのか、と耳を傾けました。しかし驚いたことに、カウベルの音が聞こえてきません!これはどうしたことでしょうか。僕は最初、カウベルを舞台裏に用意しておくのを忘れたか、奏者がそこにスタンバイするのを忘れたか、どちらかかと思いました。どちらにせよほとんどあり得ない大事故です。ノットさんは普通に振っていますが。。。改めて一生懸命聴き耳を立てると、何やら本当に微かな、蚊の鳴くよりも小さいほどの、ツーーーンというような耳慣れない奇妙な音が、聴こえてくるような気がします。自分の体の外から聴こえて来る音なのか、空耳なのか、耳鳴りなのか、定かでないです。カウベルは鳴っているのかいないのか、どっちなんだろうと訝っているうちに、当該の楽節は終わり、ドアは閉められ、演奏は何事もなかったように進んでいきました。 第一楽章が終わりました。 今回の演奏の楽章順は第2楽章がスケルツォ、第3楽章がアンダンテでした。さて第3楽章の舞台上のカウベル。僕の席からは奏者が見えず、また事前に舞台を見ておくこともしなかったので、何人で、どのようにして鳴らしたのかは不明です。いよいよカウベル登場の楽節です。すると今度は、第1楽章と打って変わった大音量が響き渡りました。そしてその音色は、金属的で刺激的で、耳に刺さるような音でした。知らないで聴いていたらとてもカウベルの音とは思えない、工事現場の騒音のようでした。このホールは、やや響きすぎるきらいがありますので、それが余計に悪い方に作用してしまったのかもしれません。ともかくこのカウベルの喧しい音は、ちと勘弁してもらいたかったです。 続いて第4楽章の舞台裏のカウベルは、第1楽章と同じに舞台下手のドアが開き、鳴らされました。今度は第一楽章とは違って、弱い音ではありましたが、はっきりと聴こえてきました。でもその音は、ガランゴロンという普通のカウベルらしい音ではなく、凡そそれとかけ離れた、ビーーーンというような、聴いたことのない奇妙な音でした。そういえば、第1楽章で聴こえたような気がしたのは、もっと微かではありましたが、これと同じ音でした。してみると、第1楽章でもこの音を鳴らしていたのだ、カウベルが欠落していたのではなかったのだな、ということがわかりました。 でも一体こんなカウベルってあるんでしょうか。 スイスと言えばアルプス、まさにカウベルの本場のはずです。まさかまさか、スイスのオケマンにとっては、我々が普段マーラーの曲で聴いているカウベルの音は、真のカウベルとはかけ離れたもので、本当のカウベルはこういう音、ということなのでしょうか?あるいはノットさんのこだわりによるユニークな響きを目指したものだったのでしょうか?このあたり、いずれノットさんが東響で6番を振るとき、おそるおそる聴いて確認してみたいと思います。 蛇足ながらマーラー6番でこれまでに聴いたカウベルで、もっともユニークで、かつもっとも美しかったのは、これまでにも何度か書いているように、2009年2月サントリーでのハイティンクとシカゴ響の演奏でした。アンダンテ楽章の舞台上のカウベルを、吊り下げてセットして、マレットで静かにそっと叩いて鳴らしていました。普通のカウベルのガランゴロンという音とは全く異なっていましたが、はっとするほど美しく、いい意味でのユニークなカウベルでした。おそらくマーラーの意図を越えた響きだったのだろう、と思います。(このあたりのことについては2009年のレック&東響のマーラー6番の記事にいろいろ書きましたので、よろしければご覧ください。) ◯おまけ:カウベル音への疑問だけではあまりに身も蓋もない記事になってしまうので、終楽章のハンマーのこともちょっと書いておきます。今回ハンマーの一打目が、オケの他の楽器よりもほんの一瞬早く叩かれたため、しっかりと聞き取れました。金属的でなく、適度に重く、適度に鈍い、かなりいい音色で響き渡りました。これには満足しました。二打目は他の楽器と打音がぴっしり揃ったため良く聴こえなかったので、この一打目は貴重でした。なお、2階の見通しの良い席から見ていた友人の話によると、この一打目の際に、隣に置いてあった譜面台が倒れたそうです。奏者の体か何かがちょっと接触したか、あるいはハンマーを振り下ろした際の風圧のため(爆)でしょうか、いずれにしても譜面台をなぎ倒す視覚的効果が加わったようです(^^;)。そう言えば、これを書いていて思いだした1シーンがあります。2012年5月に佐渡さんと日フィルが6番を演奏したとき、ハンマー奏者が、叩いた後にしばらくその場に倒れこんで伏せっていたことを思い出しました。これはなかなかユニークなパフォーマンスで、演奏終了後に聴衆から大きな拍手を浴びていましたっけ(^^)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2019.05.13 19:14:37
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