カテゴリ:音楽一般
2020年1月にサロネン&フィルハーモニア管が来日したとき、東京芸術劇場で興味深いイベントが開催されていました。もう1年が経ってしまいましたが、書いておこうと思います。
オーケストラの演奏をヴァーチャル・リアリティ(VR)で体験できるというものです。 しかもソースはマーラー3番の終楽章のエンディング部分ということで、どんなものなのか、楽しみに行ってみました。 東京芸術劇場の地下に行くと大きなパネルがありました。 受付で申し込んで、参加券(丁度3番!)をもらいました。チラシと参加券です。 20分に1回の入れ替え制ということで、少し待っていると時間になり、案内された小さい部屋に入ると、回転椅子が10数個置いてありました。好きな椅子に座って、それぞれの席に用意されている特殊なゴーグルとヘッドホンを装着して、係の人が説明を終えると、始まりました。 そうすると今、たちまち自分は、フィルハーモニア管が乗ったコンサートホールのステージ上、指揮するサロネンのすぐ目の前に座っています。マーラー3番の終楽章のラスト、金管コラールの始まる少し前の音楽が流れています。回転椅子で自由に左右を向いてみると、指揮者の右に座っている独唱者の背中、その横に第一・第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの最前列の奏者たちが自分のまわりにぐるっと並んで弾いています。ステージいっぱいにフルオケが乗っていて、その後ろには大勢の合唱団が座っています。客席では大勢の聴衆が聴いています。その中でマーラー3番のエンディングが流れていきます。自分がどちらかに向きを変えると、ちゃんとそれに応じてその方向の楽器の音が正面から聴こえてくるので、本当に自分がその場所にいて聴いているような臨場感があります。サロネンの指揮ぶりや譜面のめくり具合を、かぶりつきから見上げている形なので、その気合がダイレクトに伝わってきます。そのまま曲の最後まで、音楽に浸りました。これはなかなかできないすごい体験です。すっかり気に入ってしまい、1回終わって部屋を出たら次の回をすぐ申し込む、ということを繰り返し、何回も体験してしまいました(^^)。 先々は、今のDVDやBDを見るように、家庭でこのVR再生が普通にできるようになるのかもしれません。録音・録画する位置を変えれば、どんな視点からでも可能なので、たとえばオペラであれば、特定の登場人物の視点でのVR体験もできるはずです。(もっともその場合、収録時には人間の代わりに円盤状のカメラ・マイクを相手に演技・歌唱しなくてはいけないので、歌手は相当やりにくいことでしょう。)あるいは相当な未来かもしれませんが、もっともっと技術が進めば、視点というか自分の位置が、自分の好きな場所に自由に移動できるようになるかもしれない、と想像を膨らませました。 音楽ライターさんが書いた詳しいレポート記事はこちらで読めます。 https://www.classica-jp.com/event/13725/ デモ動画はこちらで見られます。動画の途中に、指揮するサロネンの前に360度の円盤状に並んだ沢山のカメラが写っています。 https://www.youtube.com/watch?v=K4o6o74oIOQ このヴァーチャル体験のすぐ後に、コロナ禍が始まり、リアルなコンサートが次々に中止となってしまうとは、この2020年1月の段階では想像すらできませんでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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