二・二六事件 脱出
1962年に東映で公開された「二・二六事件 脱出」は大日本帝国陸軍の派閥の一つである皇道派の「叛乱軍」が昭和維新をスローガンに掲げたクーデター事件「二・二六事件」の裏面史を映画化したものである。昭和11年2月26日の未明、積雪の中、擁護開顕を志して決起した青年将校のうち栗林中尉(江原真二郎)率いる一隊は首相官邸を襲った。しかし首相と酷似の義弟・杉尾大佐を首相と思い込んで射殺してしまい叛乱軍は付近一帯に警戒線を張った。隣接の秘書官官舎にいた速水書記官長(三國連太郎)は急拠、麹町憲兵分隊に救援を求めたが、警戒線の厳重を理由に断られた。速水は福井秘書官(中山昭二)を従え首相の邸内に入った。決起部隊が首相と信ずる遺骸が杉尾大佐と知った速水はさらに女中部屋の押入れに岡田首相(柳永二郎)が生存している事を知り首相救出のため陸戦隊の出動を求めたが陸海両軍を刺激してはという懸念から拒絶された。一方、官邸内に潜入して逃げ帰った篠原上等兵(千葉真一)から首相の存命を知った麹町憲兵分隊の特高係である小宮曹長(高倉健)は部下2名と共に叛乱軍の警戒線を突破、秘書官官舎の速水と図って邸内侵入に成功し首相の脱出を成功させた。その頃、杉尾大佐の遺骸を運び出そうとした速水は栗林中尉に詰めよられ窮地に陥っていた。この映画は叛乱軍将兵を中心とした映画ではなくどちらかというとクーデターに巻き込まれた首相側に視点に置いた作品となっており首相を演じた柳永二郎は大正~昭和初期において舞台を中心に活躍した劇団俳優であり戦後は映画・テレビにて悪役や海軍大将役など重鎮的な役どころを演じてきました。出演した高倉健は本作出演後「日本侠客伝」シリーズ「網走番外地」シリーズに主演し、日本で最も集客力のあるスーパースターとなりました。1977年には「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」に続けに主演し第1回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞と第20回ブルーリボン賞 主演男優賞のダブル受賞に輝きました。にほんブログ村二・二六事件