SeisenDolls Type-00
前に日記でお知らせした『過去編』が完成いたしました!とりあえず、載せてみたいと思いますw今回はディド視点でございます。 (たぶん)それではどーぞぉ!SeisenDolls Type-00 二連弾Sympathyそのときはただ現実から逃げるのに精一杯で、そのために走り回っていた。過去のためでも未来のためでもなく、ただ今在る物の為に精一杯。これは少しだけ昔の話そのころ俺たちは丁度逃げてきたばかりで、知らない事だらけだった。Fealy… 能力実験中のDollだったが、とりあえず致命傷も無い。それ以前に自分がそんなものだってことすら知らなかった。色んなDollに会って、助けてくれる人に会って、女神様に会って、奇跡にあって…色んな人間に会って、殺そうとする人に会って、密売人に会って、絶望にあって…裏都市の生活にも少し慣れてきて、表都市にも頼れる人ができた。能力も生きるために駆使していたので、使いこなせるようになってきた。だけど、それは自分の為であってまだ誰かのために使った事は無く、使う気も無かった。ピルはいつも印象に残った色を、その場で紡ぐ。俺にはそれがどんな物か分からない。『赤い』といわれてもそれの持つ印象までは分からない。だけどピルは色を紡ぐ。モノクロセピアの世界にいる俺に色を紡ぐ。「きっと、見えるようになるよ!だってマリちゃんが言ってたもん。」だから治ったあとで昔の景色に色が塗れるように、ボクは名前だけ伝えるの。そう言ってピルが笑うもんだから、つられて笑う。治らなくても特に支障は無い。モノクロの視界に自らの操る雷だけは、白い線を走らせるから。だけど、色を見てみたいという少しばかりの好奇心は残っていた。そして初めて見た色は季節の花の色。素直に綺麗だと思った。無機質なものは相変わらず無機質だった。コンクリートはコンクリート。だけどその下に僅かに育つ、若葉の色は力強く頼もしかった。綺麗なものばかりだと思っていた。いつもと同じいつもの日々。同じ場所で今日は違う事が起こった。裏都市を処刑場の3台の輸送車が通る。眺めてすぐに分かった。中にはDollが格納されているらしい。そうだとしても俺には関係が無い。こういう時、Dollは隠れている。捕まって連行されるのは御免だ。せっかく逃げてきたのに。今、俺の隠れている廃墟から輸送車が見える。静寂が裏都市全体を押しつぶしていた。ガラスの無い二階の窓から外の空気が伝わってきて、ピリピリする。早く通り過ぎてくれねーかなぁー… 緊張状態は精神的に辛い。窓枠に肘をつけてボーと眺めているのにも飽き、窓に背を向けたとき…――――――― BangBang!!! ――――――「っえ!?」振り返って、身を乗り出し窓の外を見る。今の音だ、乗り出したって興味は違うところに行くから安全面は大丈夫だろうと勝手に認識する。見ると、輸送車の中の1台が急停止したらしく、タイヤの黒い後がアスファルトに残っていた。残りの2台の輸送車から、武装した処刑場の奴等が沢山降りてきた。急停止した車に向かい走る。車が何か起こしたとは思えない。処刑場がそんな馬鹿なことをするはずない。ここにいるDollが何かしたとも考えにくい。早く通り過ぎてくれと祈っているのだから。車の中のDollが何かしたのだろう。でも銃じゃな… Dollは人を殺せねーのに。無謀だよな…さっき銃声を響かせたDollだって、きっと死んでいる。当らなかったとしても、危険なので殺される。見事に命中したとしても、Dollだから死んでいる。――――――― BangBang!!! ――――――――たぶんさっきと同じ銃声。まだ死んではいないらしい。まるで人事のように淡々と考えている自分に気づく。…いいや、人事なんだよ。他の2台の輸送車からDollが逃げ出した。 …戦闘力の低さから見るにきっとレプリカだろう。一掃されるのは時間の問題。助ける奴はここには誰もいないから。高らかな銃声を響かせたのは一体誰だろう? 僅かな好奇心が疼く。止まったままの輸送車。防弾ガラスの向こう側を見つめる。もしかしたら、どんな人か分かるかも知れない…ガラス越しに見えたものは、太陽の熱を帯びる金髪と深い海を抱く碧眼。不意に目が合った。思わず後ずさりしたくなるような意志をもったその瞳。距離はあるというのに、突き刺さるような…かみ合っていた視線が突然に外れた。処刑場の奴等が他のDollの始末を終えたらしい。防弾ガラス越しに今度は金髪が見える。流れていく様子から少し長いらしい。アイツも… もうそろそろ殺されるんだな―…人事のように言葉が出てきた。口元に手を持ってって考え事の態勢に突入する。…。アイツが銃、撃ったんだよな。凄ぇー…綺麗だったよなぁー、瞳。金髪。 ん?思考の可笑しさに困惑する。何考えてんだ、俺?防弾ガラスごしに見たら… さらさら流れて綺麗だったし。 ん゛!?だっ、だから何考えて… ちょっと待て、流れて? 髪長い…? ってことはー…散っていたものが集中する。結論は…女っ!?違う自分の世界にいた思考が一気に現実に戻る。ここ2階だったよな? 下を覗き見る…。 飛び降りても平気そうだ。窓枠を軽く飛び越えて地面へ。行動に移そうと窓枠に手をかけたとき動きが止まった。何やってんだ… 俺。こんな事して、処刑場の奴等に殺されるかもしれない。だけど、そこまでしても何故かアイツを助けたい。窓枠に置かれた手に力をこめる。意を決して飛び越えた先はまだ知らぬ未知の世界。掌と膝で上手く体を支え着地し、立ち上がった時には… 覚悟が出来ていた。死ぬ覚悟なんかじゃない、戦う覚悟だ。アイツが乗る輸送車を取り巻いている奴等に、左掌に集まった雷を落としてやった。―――― バチッ ――――本当に小さい音しかしない。それに雷も目には映らない。だけど… そのあとにバタバタと倒れるのだ。血も出ないし、傷も無い。これが俺の戦い方。先ほどとは違う銃声が轟く。輸送車から離れていて、運良く雷に巻き込まれなかった奴等が発砲したらしい。なに、たいしたことじゃない。前にかざした手を、ぎゅっと握りしめる。今まで何の存在も確認されていなかった空間に突如、光線が走り弾丸は地に落ちる。まだ、何人か残ってたよな?後ろを振り返ると… 血を吐いて倒れているのが見受けられた。「隠れてろっていわれたよー。ったく何やってんの、ディド?」目を合わせるでもなく、もっている瓶の蓋をしめながら後ろでピルは言う。「そういいながら自分も出てきてるじゃねーか。」苦し紛れに言い返すと、一人じゃ危ないでしょ?と簡単に言い返された。『死にたくないなら、全部持って処刑場に帰ってよ。…そして二度とここに足を踏み入れるな。』俺の方から向き直り、ピルは残党を睨んで軽く脅しを含んだ笑みを送っている。後始末は任せても大丈夫だろう。急いで輸送車のアイツの元へ向かった。血の匂いがする。まだ車の前だ。だけど、血の匂いがする。一歩一歩、踏み出すたびに濃くなるような気さえしてきた。ドアに手をかける。そして用心しながら引く。―― バタン ――ドアに寄りかかっていたらしいモノが、あお向けに落ちてきた。よく見ると、人間の死体だ。眉間と肩と左胸から生きている状態では確実に見られない物が流れ出ている。中に入るのが一瞬ためらわれる。でもアイツの生存を確かめたかった。いっそう濃い香り漂う中へ踏み込む。狭い車内には似たような射殺体が4コぐらい転がっていた。壁にベットリと地がこびり付いている。進むたびに誰かしら踏んでいたが、3歩目から気にするのをやめた。そして、アイツは輸送車の一番奥にいた。膝丈以上ある白いワンピースを着て、あの金髪であの碧眼だった。ただ予想外だったことは、今の状況。近づくにも近づけない。…俺と向けられている銃口との距離が約1.5メートル。アイツは膝を抱え、震えながら銃を握りしめていたのだった。 一人で…。両手を上げて戦意が無い事を示してから、俺は右手を差し出した。「一緒、来ないか?」先程まで銃を握っていたと思えないほど弱く、弱くそっと右手は握り返される。戸惑いながら握り返されるその手がとても嬉しかった。だから、強く強く握り返した。そのときだ。アイツは意識を飛ばした。緊張の糸が切れたらしい。だけど先程までの怯えた表情では無く、安心しきっている表情だった。そしてけっきょく目覚めそうにないので俺が抱えていくことになる。抱える腕に、細い金髪が妙に心地よかった。俺はアイツが好きになった。一目惚れってやつかもしれない。アイツは初めてあった時からは予想できない性格だったけど…本当はいつも強がってるだけで、内心怯えていることを知っているから。あの金髪も碧眼も変わらず今も煌いている。銃の方も、相変わらず大活躍している。逃げてきたDollsもこの事件以来、アイツを中心に処刑場と何かあると戦うようになった。これは風巳が来る前の話。俺が馬鹿になった、少し強くなった日の話し。アイツは覚えてるのかな?自信はない。読書感想文の課題図書を持ったまま隣で眠っているアイツに捧げる。会った時から全部大好きなんだ、殺人級の料理でさえも。死んでも隣にいたい。なぁいいだろ、ジュリ? Fine