ゆでタマゴ
いつもながら仕事をため込み、なかなか終わらない。しかし腹が減ってはなんとやらで、何かお腹に入れたいと思う。冷蔵庫を開けると、タマゴが4個お休みである。貧乏暇なし中身もなしで、他に食べることが出来るものが無い。単純につくれるゆで卵に変身させてやることにした。問題が発生した。コンロのガスの残量がかなり少なくなっている。小さい事務所だから、都市ガスやプロパンなどをひくほど使わないのでカセットコンロなのである。ラーメンを作ったときに、少なくなっているとわかったのが、そのまま忘れて、いざ使うときには泣いている。お湯はポットで沸かせる。水をいれて電源をつなぎ沸かし始める。作戦である。ゆで卵は水からつくるのであるけれども、今回それをすると途中であきらめないといけない可能性がある。いきなりお湯に入れると割れるので、まず沸かしている間に、冷蔵庫からタマゴを取り出し、常温でさらす。ポットのランプの点滅が消え、お湯が沸いたことを示している。100円のなべに、タマゴを4個並べ、そこにゆっくりゆっくりとお湯を注いでいく。タマゴが水没する寸前から、泡がプチプチプチと静かに上がってくる。タマゴが生きている証拠である。タマゴは呼吸しているから、お湯の中に入ると、表面の小さいあなから、プチプチプチと出て行くのである。水から茹でた場合は、沸騰したときのボコッかタマゴからのプチッかの見分けがつかないから、お湯からつくる時のだけ見ることが出来るちいさな楽しみである。良い湯加減でくつろいでいるタマゴを火にかける。ボコッボコッボコッと大きな泡の中でコンコンと音をたてて踊っている。段々と火が小さくなってきた。湯で始めて3分ほどになるか。ボウボウと粋がっていた青いにょろにょろは、静かに静かに……4分と50秒経過。にょろにょろは完全に姿を消した。中身は、どうだろうか。流しに行き、水で冷却する。手で触れることができるくらいまでの簡単な冷やし方。鍋ごと机へと到着。タマゴ立てにたてて、金属のスプーンで上品に。とやりたいところが、道具が無いので、やさしくコンコンと叩くのでありました。白身がっちりで、黄身がとろとろの上品なゆで卵。皮をむき、豪快にバクッと食いつき、あちっあちっといいながら、何かと間違うような黄色い色のものを着衣に垂らし、あわてて拭きつつ、舌鼓をうつ。何も無いけど、タマゴの幸せ。