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2010.10.29
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「・・・・これは・・・・」

車の後部座席。隣に座った、まだ、つい凝視してしまう、ユウコによく似た顔を持つ楓が、目の前でその黄色い紙を取り出したとき、瞬時に、脳裏にいろんなことが蘇った。

・・・・突然の雨、あのカナダのポスター、そして、まだまだ不甲斐なかった頃の自分。

楓が言う。

「これを手がかりに、碓氷さんにたどり着いたんです」

・・・これを。。。

少し思い惑って目を泳がせると、バックミラー越しに悠斗と目が合う。まだ、イルミネーションの明るい夜の街の中を、運転席に座った悠斗は、こちらに耳を澄ませながら、慎重に車を走らせている。楓は、僕の反応を見ながら、僕にいたった経緯を話してくれていた。ユウコが楓に遺した小さな箱。

「この間の、テレビ見ました。・・・このチラシを・・」

そう、インタビュー番組で、インタビュアーにこれを差し出されたときは心底驚いた。

「ああ。あの時はびっくりしたよ。・・・これを、ユーコに手渡した瞬間が心に蘇った・・・」

そういう僕に、

「確かに、あの時の、碓氷さんは、今思えば、無茶苦茶、動揺していましたね」

悠斗がバックミラー越しに目を合わせながら言ってくる。

「ああ・・・。」
「・・・お母さんに、手渡した?」

おずおずと尋ねてくる楓。僕は彼女にいう。

「ああ。このチラシから全ては始まったんだ」

そして話す、あの日の雨宿りのコト。芝居を見に来てくれたコト。終演後に声をかけ、待ち合わせ、家に呼んだこと

「お母さん、大胆だったんですね。」

楓が、少し楽しそうに言う。

「そうだな~、碓氷さんは、まあ、碓氷さんって感じだけど」

悠斗も、少し楽しそうに言うから、僕も、少し楽しそうに返す。

「うるっさいな~。・・・まあ、あの頃だって確かによく遊んでたけど」

・・・自分の芝居への情熱がなかなか報われない日々。愛せるヒトもいなくて、ただ、人好きのする容姿と、人懐っこいトークで、どんどん、オンナをモノにしていってた頃の自分。その頃の自分には、性的関係を持つことなんて、ただのゲームだった。そう、ユーコに出会うまでは。だが、ユーコに出会って・・・。僕は、真顔になっていう。

「その日から、僕は変わったんだよ。」
「変わった?」
「ああ、ユーコが僕の前にいてくれた、3ヶ月だけは、僕は・・」

楓が、ひたむきな目を僕に向ける。

「ほんとだよ、ユーコと出会ってから、ユーコが僕の前を去るまでの3ヶ月。僕は、ユーコだけに夢中だった」

遊びでできた君じゃない、その思いを伝えたかった。楓は、ただ、穏やかな微笑でうなずいて、僕の言葉を想いごと受け取ってくれる。そのイノセントな瞳に、僕は不意に蒼夜を思い出す。ユーコを失ってからまたゲームに戻った僕を引き戻し夢中にした蒼夜。

・・・今は考えるな。

僕は自分に言い聞かせる。今は楓に集中しなくては。そして、僕はいう。ユーコのことも。

「さっき、ユーコが大胆だって言ったけど、それにはワケがあったんだよな。」
「病気のコト」
「うん。それと」
「・・・失恋したてだったから?」

楓は、落ち着いた声でたずねる。僕は驚きながら、

「どうしてそれを?」
「お母さん、箱の中に、こんなアクセサリーを残していたんです」

そういって、高価そうなそれを差し出す。見覚えのない、アクセサリーたち。楓は、家政婦さんから聞いたというユーコの恋の話をする。

『おうちの問題なの。決められた婚約者と結婚することを選んだのよ』

そう言っていたユーコ。そのオトコと、2年間も付き合っていたんだ。今、思えば、そのオトコとも、子供を産めない、いや、産んだら命が危ない、そのことで、結婚をあきらめたんだろう。ユーコの心を思うと胸がつまる。

「・・・おうちの問題か。・・・決められた婚約者、なんて、・・・お母さんも、大変なおうちのヒトを好きになっちゃってたのね」

楓が、手に持ったアクセサリーを眺めながら、ポツリと呟く。・・・と、その時、クラクションが鳴らされ、悠斗が、慌てて、車を出す。バックミラー越しにその焦った顔を眺めて、

「おい、しっかりしろよ?聞き耳立てるのに夢中になって、信号変わったのに気づかなかったのか?」

軽く茶化してみたら、少し微笑んで、

「・・・すいません。気をつけます」

ただ、そう言った悠斗だったが、そこに微かに演技のニオイを感じた僕だった。

・・・何か、悠斗にとって気にかかる話でもしただろうか?

少し気になりながらも、また、楓との会話に戻った僕だった。

「失恋したてだったユーコ。だけど、僕とすぐに、始めたのは、、、」
「自分に時間がないと分かっていたからでしょうね・・・」
「・・・・ああ。そうでなければ、出会ったその日に、僕と、、なんてこと、なかっただろう。」
「そうですね。母も、きっと、碓氷さんといる間は、碓氷さんのことだけ愛していたと思います」

さっきの僕の言葉のお返しに、ユーコに代わってそんな風に言ってくれる優しい楓。僕は、その言葉を想いごと受け取った。

楓との話は尽きない。互いに、恋人でいたたった3か月の思い出と、会ったこともない母の話だというのに。僕たちはずっと話し続けていた。

話の途中で、ふと悠斗に目をやると、彼は、背中にまだ少しさっきの動揺のオーラを抱えながらも、慎重にハンドルを握って、運転に集中してくれている。

・・・あの場所に向かって。

今日のゆる日記は、こちらです。ぽっバカップルにご注意ください大笑い

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ふぉろみー?


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最終更新日  2010.10.29 06:32:20
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