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「・・・だって、そんな、、、結婚なんて、する必要なくない?」
私の言葉に、ケースケは、強張りかけていた表情を少し緩めて、聞く。無理に、笑おうとしながら。 「・・・必要?必要ってなんだよ。俺は美莉を愛してる。美莉だって、俺のこと愛してくれてるって信じてる・・」 そういって、ケースケは、私の頬に手を添えて、少し、確かめるように私の瞳を丁寧に覗き込む。 「・・愛してくれてるよな?」 私は、必死なその瞳と言葉を受け止めて、見つめ返す。 ・・・愛してるよ、ケースケ。 言葉なんていらない。その問いにうなずく必要すらない。私の目には隠しようのないケースケへの愛情があふれているはずで。 だって、私は、確かに、ケースケを愛してる。 私の瞳を見つめながら、ケースケは少し、ほっとしたように微笑んで、 「愛し合ってる。だからずっとそばにいたい。プロポーズするのに、それ以上に理由なんていらないだろ?」 確信を持ったその言葉と裏腹に、少し、すがるような響き。私が、それだけの理由じゃ、承諾するつもりがないことを示しているから。だけど、ケースケは、しっかりとまた繰り返す、その言葉を。 「結婚しよう、美莉」 ・・・頼むよ。 そんな言葉すら続きそうなほど、必死な思い。私は、その思いに泣きそうになりながらも、首を振る。ケースケは、少し唇を噛んで、それでも、体勢を立て直して、泣き出しそうな表情は引っ込めて、穏やかな笑顔をくれる。 「・・・理由、聞いてい?」 アマく見下ろされて、私も、その言葉を繰り返す。 「・・・だって、結婚なんてする必要ないじゃない?」 「だから、必要ってなんだよ?」 「必要って、・・・必要だよ」 説明にならない説明に、ケースケは、ただ黙って続きを待ってくれる。だから私は、静かに静かに続ける。 「・・・私、ケースケのこと、好きだよ。愛してる。ずっとそばにいたい。だから、すごく、、、嬉しかった。ほんとにね、すごく嬉しいよ。だけど、、、」 そこで私は小さく息をつく。ケースケが励ますようにそっと髪を撫ぜてくれる。 「だけど、結婚する必要はないと思う。私たちはこのままで、・・・恋人のままでいいと思うの、ずっと。」 「・・・なんで?」 「・・・だって、コドモ作る予定、、、ないし。。」 砂のように崩れていくコドモのイメージが再生されて、私は、目を閉じた。 ・・・いけない。 そう思うまもなく、まぶたを閉じた瞬間、思いがけず、涙が流れ落ちた。慌てて、目を開き、拭おうと手をあげかけたけど、抱き寄せられるほうが早かった。何か言おうとするケースケを、喋らせないように、私は続ける。 「・・コドモ作るなら、結婚しなきゃ、いろいろ大変だろうけど。その予定ないなら、恋人のままでいいでしょ?心変わりしても、ココロのままに離れればいいだけだし」 最後は少し微笑んだ声で言った私を、咎めるように、 「ミリ」 小さく呼ばれる名前。私は、続ける。というか、もう、止まらない。 「ほら、私は、こんな、・・・だけどさ、ケースケは、他のヒトとだったら、いっぱいコドモだって作れるし。そんときは結婚したほうがいいし。そんときのために、ちゃんと籍はキレイなままで置いときなよ。絶対、その方がいいって」 ムリに笑って、見上げた先には、泣き出しそうな目で、私を見るケースケ。 「まだそんなこというのかよ?俺が愛してるのはミリだけだよ。一生、ミリだけだよ。俺が結婚したいと思うのはミリだけだよ。俺はミリしか愛せない。心変わりなんてありえない。もしも、この先ミリが心変わりしたとしても」 ケースケは自分の言葉に、一瞬痛そうに顔をゆがめてから、続ける。 「それでも、俺は、その先もミリだけを愛してる。だから、ミリ。イエスって言ってくれよ。俺は、ミリと結婚したい。死ぬまで、一緒にいてね、って言ってくれたろ?んなこと言われたらもちろん、言われなくたって、俺は、ずっとそばにいるよ。ただ、結婚して、正式に、ミリの体のこと、これからのこと、ちゃんと義務と権利を持った上で、そばにいたいんだ」 誠実で真摯な言葉。好きで好きでたまらないヒトに、至近距離でそんな言葉言われて、くらくらする。 ・・・なんて、幸せモノなんだろう、私。 こんなに素敵なヒトに愛してもらって、こんなに素敵な言葉をもらって、サイコーに幸せすぎる。 だけど、その言葉を受け入れるのは。 だけど、私がケースケを幸せにするのは。 ・・・ムリ。 『死ぬまで、一緒に、いてね。』 ケースケには、永遠の愛を願うように響くはずのその言葉は、私の中では、速やかに、こんな言葉に響きが変わる。 死ぬまで、だけ。 私が死ぬまでだけ。 ・・で、いいんだよ、ケースケ。 そして、それは・・・。
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