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2011.10.13
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カテゴリ:box
「・・・だって、そんな、、、結婚なんて、する必要なくない?」

私の言葉に、ケースケは、強張りかけていた表情を少し緩めて、聞く。無理に、笑おうとしながら。

「・・・必要?必要ってなんだよ。俺は美莉を愛してる。美莉だって、俺のこと愛してくれてるって信じてる・・」

そういって、ケースケは、私の頬に手を添えて、少し、確かめるように私の瞳を丁寧に覗き込む。

「・・愛してくれてるよな?」

私は、必死なその瞳と言葉を受け止めて、見つめ返す。

・・・愛してるよ、ケースケ。

言葉なんていらない。その問いにうなずく必要すらない。私の目には隠しようのないケースケへの愛情があふれているはずで。

だって、私は、確かに、ケースケを愛してる。

私の瞳を見つめながら、ケースケは少し、ほっとしたように微笑んで、

「愛し合ってる。だからずっとそばにいたい。プロポーズするのに、それ以上に理由なんていらないだろ?」

確信を持ったその言葉と裏腹に、少し、すがるような響き。私が、それだけの理由じゃ、承諾するつもりがないことを示しているから。だけど、ケースケは、しっかりとまた繰り返す、その言葉を。

「結婚しよう、美莉」

・・・頼むよ。

そんな言葉すら続きそうなほど、必死な思い。私は、その思いに泣きそうになりながらも、首を振る。ケースケは、少し唇を噛んで、それでも、体勢を立て直して、泣き出しそうな表情は引っ込めて、穏やかな笑顔をくれる。

「・・・理由、聞いてい?」

アマく見下ろされて、私も、その言葉を繰り返す。

「・・・だって、結婚なんてする必要ないじゃない?」

「だから、必要ってなんだよ?」

「必要って、・・・必要だよ」

説明にならない説明に、ケースケは、ただ黙って続きを待ってくれる。だから私は、静かに静かに続ける。

「・・・私、ケースケのこと、好きだよ。愛してる。ずっとそばにいたい。だから、すごく、、、嬉しかった。ほんとにね、すごく嬉しいよ。だけど、、、」

そこで私は小さく息をつく。ケースケが励ますようにそっと髪を撫ぜてくれる。

「だけど、結婚する必要はないと思う。私たちはこのままで、・・・恋人のままでいいと思うの、ずっと。」

「・・・なんで?」

「・・・だって、コドモ作る予定、、、ないし。。」

砂のように崩れていくコドモのイメージが再生されて、私は、目を閉じた。

・・・いけない。

そう思うまもなく、まぶたを閉じた瞬間、思いがけず、涙が流れ落ちた。慌てて、目を開き、拭おうと手をあげかけたけど、抱き寄せられるほうが早かった。何か言おうとするケースケを、喋らせないように、私は続ける。

「・・コドモ作るなら、結婚しなきゃ、いろいろ大変だろうけど。その予定ないなら、恋人のままでいいでしょ?心変わりしても、ココロのままに離れればいいだけだし」

最後は少し微笑んだ声で言った私を、咎めるように、

「ミリ」

小さく呼ばれる名前。私は、続ける。というか、もう、止まらない。

「ほら、私は、こんな、・・・だけどさ、ケースケは、他のヒトとだったら、いっぱいコドモだって作れるし。そんときは結婚したほうがいいし。そんときのために、ちゃんと籍はキレイなままで置いときなよ。絶対、その方がいいって」

ムリに笑って、見上げた先には、泣き出しそうな目で、私を見るケースケ。

「まだそんなこというのかよ?俺が愛してるのはミリだけだよ。一生、ミリだけだよ。俺が結婚したいと思うのはミリだけだよ。俺はミリしか愛せない。心変わりなんてありえない。もしも、この先ミリが心変わりしたとしても」

ケースケは自分の言葉に、一瞬痛そうに顔をゆがめてから、続ける。

「それでも、俺は、その先もミリだけを愛してる。だから、ミリ。イエスって言ってくれよ。俺は、ミリと結婚したい。死ぬまで、一緒にいてね、って言ってくれたろ?んなこと言われたらもちろん、言われなくたって、俺は、ずっとそばにいるよ。ただ、結婚して、正式に、ミリの体のこと、これからのこと、ちゃんと義務と権利を持った上で、そばにいたいんだ」

誠実で真摯な言葉。好きで好きでたまらないヒトに、至近距離でそんな言葉言われて、くらくらする。

・・・なんて、幸せモノなんだろう、私。

こんなに素敵なヒトに愛してもらって、こんなに素敵な言葉をもらって、サイコーに幸せすぎる。

だけど、その言葉を受け入れるのは。

だけど、私がケースケを幸せにするのは。

・・・ムリ。

『死ぬまで、一緒に、いてね。』

ケースケには、永遠の愛を願うように響くはずのその言葉は、私の中では、速やかに、こんな言葉に響きが変わる。

死ぬまで、だけ。

私が死ぬまでだけ。

・・で、いいんだよ、ケースケ。

そして、それは・・・。

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最終更新日  2011.10.13 16:52:58
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