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そして、それは・・・・。
ここのとこ、病院のベッドで窓の外を見ながら、ずっと、ずっと、ずっと、考えてることがある。 そのことに、また、ココロが移動しそうになったところで、 「・・・ミリ?」 ケースケの声に引き戻される。はっと、ケースケの顔を見上げると、 「ここで、ムシはねーだろ?」 なんだかもう、苦笑顔で言う、ケースケ。 ・・・ムシ? そっか、私、返事もしてなかったっけ。 「・・・ごめん。なんか、ぼーっとしちゃってた」 小さく舌を出して謝った私に、ケースケはオオゲサにのけぞって、 「このタイミングでありえねー。俺、これ以上ないくらい必死で言ってんだけど」 最大級の苦笑をくれる。私は、微笑んで、 「ごめん。分かってるよー。ていうか、そのあまりのアツサになんだかココロがついてかなくて」 そういうと、ケースケは、 「んだよー、俺がどんな思いで、準備したとおもってんだよ。相変わらず、ひでーなー」 口をとがらせたけど、本気で怒ってるわけではもちろんなく、もう、今日は、い~よ、ていうアマい目をくれる。ケースケ自身も、キンチョーが解けたみたいに少しほっとした表情で。私も、・・私だって、少し、ほっとして、言う。 「だって、ケースケは、準備してたかもしれないけど、こっちは全然ココロの準備できてなかったもん。プロポーズされるなんて思ってなかったもん」 「全然?」 「全然」 「鈍感」 「ひどーい」 「俺がキンチョーしてんのも気づかなかったのかよ?」 「んー、確かに、ちょっと、ヘンだとは思ったけど、まさか、こんなこと考えてくれてるなんて思っても見なかったもん」 「んっと、鈍感」 「だってー。。。。」 「だって、なんだよ?」 「だって、そんなこと、、、、結婚なんてこと、もう、考えてもなかったから」 自分で言って、胸がギュッと痛む。少し唇を噛んだ私に、ケースケはアマい声で言う。 「・・・じゃあ、せめて、考えてみてくれよ。待つから。いつまででも。・・・・な?」 ・・・考えても考えても、答えはきっと変わらない。 だけど、それでも、考えるくらいはしなくては。 そうすることが、こんな優しいケースケの思いに少しでも答えることになるなら。 その優しい瞳にひかれて、肯いた私に、ケースケは、ほっとしたように息をついて、静かに抱き寄せてくれる。その愛情の大きさに、そしていつもどおりの申し訳なさに、身を縮めていると、何かを感じたらしいケースケが、不審げに私を呼ぶ。 「なぁ、ミリ」 胸の中にいるまま、少しくぐもって聞こえる声に、 「なあに?」 「・・・・きっと、考えても答えはもう変わんないって思ってね?」 「・・・・・」 ・・・何も隠せないな。 そう思って、苦笑して、ふっと息がもれる。 「・・・やっぱり」 たしかに微笑んだ声で、ケースケは、いいながらも、一瞬強く私を抱きしめる。 その一瞬の力にこめられた思い。 ・・・・ごめんね、ケースケ。 ココロに浮ぶのは例によってその言葉ばかり。 ケースケは、力を緩めて、私を腕の中から出して、もう一度顔を覗き込んでくる。 「1%でいいから、イエスの可能性を残して、考えてくれないか?」 ただ穏やかにそう告げるケースケ。 1%のイエスの可能性。 そうだよね。 それは、きっと、自分のためにも。 1%くらい、イエスと答えることについて考えてみてもいい。 「ったく、しょうがないなー。・・・・いいよ」 私は、にっこり笑って、ゆっくりと肯いた。
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