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2011.10.14
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カテゴリ:box
1%のイエスの可能性。

ケースケとの約束を守ろうと、

イエスと答える自分を想像してみる。

微笑んで、ただ、うんって肯く自分を。

・・・あー、私、幸せそう。この上なく。

掴めそうなくらいリアルに浮ぶイメージ。

そうだよね。

ほんとにほんとに、ずっとずっと、ごく当たり前の未来として存在していたはずだもの。

・・・ああ、ただ幸せに肯いて、ケースケに全てを預けて、そうすればきっと幸せになれ・・っ。

そのとき。

「ぁ~~ん、ぁ~~~ん」

ぼんやりとアマい1%の思考に漂う私を引き戻すように、赤ん坊が泣き出す。

私の目はその声の主を探す。顔を文字通り真っ赤にして、必死で泣いてる赤ちゃん。

・・・ありがと。そーだよね。あんまりアマイ想像はしないほうがいい。後がつらいだけだから。

泣き続けるそのコにココロでお礼をいいながら、

・・・オムツかな、おっぱいかな。

1人が泣き出すと、連鎖のように、隣のコも、その隣のコも泣き出しちゃって。

・・・あ、でも、泣かない子もいるんだ~。

カーテンの向こうから、看護士さんが2人来て、順番にあやし始める。その手際のよさに見とれていると、

「みんなかわいいだろ~?」

背後から声がかかった。振り返ると、ニッコリ笑ってこちらを見ている大柄な白衣のヒト。

「クマせんせ~」

お父さんの親友で産科医の多田先生。いつもかわらない穏やかで優しい笑顔に、引き込まれながら、ついはしゃいだ声が出る。

「よぉ。どーした?珍しいなこんなとこにきて」

「うん。なんかね、久しぶりに、見たくなっちゃって、赤ちゃんたち」

新生児室の前の廊下。大きい窓越しに、生まれたばかりのベエベたちが見られる場所。いいながら、もう一度、視線を戻して、さっきのクマ先生の言葉を思い出して、答える。

「ほんと、かわい・・・」

「だろ?見飽きないんだ、ほんと」

「センセイでも?毎日見てるのに?」

「そうだよ?全員違うからな~。いろんな子がいるよ。でもみんなかわいい。必死で泣いて必死でおっぱい飲んで」

「私が生まれたときのこと、まだ、覚えてる?」

「もちろん。あの高崎くんが、パパになった日だからな」

私が生まれて、お父さんがパパになって、そして、お母さんは・・。

自分で聞いておきながら、何も言えずにただ微笑んで、ベエベたちに目を戻した私に、

「外泊、これからか?」

クマ先生がそう尋ねてくる。私がまだ私服でいるから。

「あ、ううん。違うの。帰ってきたの」

「そうか。楽しんできたか?」

ほんとなら、寄り道なんてせずに、早くチェックを受けるようにいう先生もいるだろうけど、クマセンセはこういうヒト。

「楽しんだに決まってるか。そんな立派な指輪つけてんだから。プロポーズされたんだよな?」

言われて、私は、自分の薬指に目をやる。

『答え出るまでつけといてくれよ。俺の想いこめてるから、味方してくれるかも』

ケースケがそういったからつけっぱなしのダイヤのエンゲージリング。

「おめでとう。ミリちゃんがもう嫁さんに行く歳だなんてなー。高崎くん泣いてたか?」

早合点にそこまでいってくれる先生に、

「ううん。まだなの・・・」

「そうか。だったら、言うときそばで見ててもいいか?泣くとこ見てやりたい」

楽しそうにいうセンセイ。

「・・・違うの。ケースケに、返事が、まだ、なの。・・・保留なの」

「保留?」

戸惑った声のクマ先生に、

「うん・・」

小さく俯いて返事を返す。クマせんせーは全てを悟ったように、

「それでここにいたわけだ」

言いながら私の頭をポンポンとたたいた。

こっくりと肯きながら、

私が今ここにいるイミを、すぐに気づいてくれたクマ先生になら、

今思ってること、

ここのとこずっとずっと1人で考えていたことも、相談できる。

そう思えた。

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最終更新日  2011.10.14 16:44:51
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