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「だけどな」
先生は、私を、小さいコドモを見つめるみたいな目で見て続ける。 「だけど、それでも、その上で尚、俺は、ミリちゃんが、長生きしたいと、ココロの底ではそう願いたがっているように思う。そう願えるような選択肢を選びたがっているように思う。・・・ちがうか?」 そう言ってイタズラな笑顔で微笑んだセンセイ。 ・・・私が、長生きしたいと思える選択肢。・・・だけど、それは・・・。 小さく唇を噛んだ私の肩を抱いて促すように、またベエベたちの方を振り返ってから、 「美莉ちゃんが、長生きしたくなりそうな選択肢、あるだろ?」 私は、優しく微笑む先生の視線に引かれ、自分もベエベを見つめながら、そのかわいらしい様子に、素直に、ココロのままに微笑んで、言葉を口にした。 「・・・もしもケースケとの間に子供を産むことができたら、きっと、長生きしたいって思うだろうな」 愛してるヒトと、愛してるヒトとの間の愛おしいベエベのいる生活なら、永遠に続いて欲しいと願うだろう。 だけど。 妊娠と出産のリスク、体力を失った上での延命の手術の成功率。 「だけど、・・・誰も、、うんっていってくれないよ・・」 ケースケだって、おとーさんだって・・・。 「ちゃんと伝えてごらん?もしも、、、リスクを伴うとしても、、いや、率直に言おう、美莉ちゃんの願う希望のその先のどこかに死が落とし穴のように待ち受けていたとしても、それでも、何も死が全ての終わりじゃない。・・・みんな、君を思ってる、少なくとも、みんな、美莉ちゃんの気持ちは、分かってくれるさ」 「だけど」 すぐに否定しようとした私の言葉にかぶせるように、少し大きな声で、 「だ~け~どっ」 そういって、私を黙らせた先生は、ニッコリ笑っていう。 「だけどだけど、そっちでいこうや。そっちの方がミリちゃん『らしい』・・・だろ?」 ・・・私らしい。 考えて考えて考えすぎて、私はどうすればいいのか見えなくなっていた。 だけど、言われてみれば、確かに、私、らしい。ワ、がままに、ワガママを通す私。 先生は続ける。 「もちろん、2人にとっては非常に厳しい選択になる。簡単には、うんとは言わないだろう。あるいは美莉ちゃんの希望は、叶わないかもしれない。だけど、らしくもなく、口にも出さずにあきらめるんじゃなくてさ。おねだりくらいしてみたらどうだ?2人とも、ミリちゃんをココロの底から愛してんだ。ミリちゃんのワガママかなえることが生きがいみたいな2人なんだ。ひょっとしたら、ひょっとするかも、・・・だろ?」 センセイの微笑声に私は、2人の顔を思い浮かべてみて、同じように微笑んだ。 「・・・そうだね。どうせ、最後のワガママ言うなら、、、そっちの方がいいかも」 そう言うと先生は、ウレシそうに、 「そのワガママが叶ったら、もちろん俺も全面的に協力させてもらうよ。莉花さんが美莉ちゃんを産んだときと同じように」 私のための明るい決意を自分にも言い聞かせるように力強く口にするクマ先生に肩を抱かれながら、私は、 ・・・お父さんに、そして、ケースケに、私は、本当にそんなワガママを口にできるのかな? そんな問いへの答えを探すように、しばらくは、目の前の小さな命たちを眺め続けていた。
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