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うとうととした浅い眠りの中、ずっとぼんやりと感じていたのは、花の香りでした。
・・・花・・・・? 私は、熟睡することはあきらめて、そっと目を開きました。 まだ真夜中を示しているデジタル時計の光だけの薄闇の中、目の前には、悠斗。私を守るようにしっかりと抱きしめてくれている力強い腕と違って、その寝顔は驚くほど無防備で、あどけなくて。愛おしく眺めてから、そっと、目だけを動かして、悠斗の向こうの壁にかけてある、一輪挿しの中のピンク色の花を見つめました ・・・やっぱり、現実だったんだ。 そのお花を私に手渡してくれた方の顔を思い浮かべ、その表情に重ね合わせるようにもう一度悠斗に目を移し、私は小さく小さく、息をつき、目を閉じました。 目を閉じ、私はまた、昨日のことを思い返してみました。上出来、というよりは、完璧だった、昨日。 ・・・なのに。なんで、こんなに。こんなに、胸が落ち着かないのかしら・・・。 私は、もう一度、目を開けて、悠斗の寝顔を眺めました。私とは対照的に、肩の荷を降ろしたように、ぐっすりと眠り込んでいる悠斗。 昨日の朝も、こうして、悠斗の寝顔を眺めていたっけ。 私はもう一度、昨日のことをひとつひとつ思い出してみました。 * そっと目を開くと、そこは悠斗の腕の中。苦しいくらい抱きしめられている腕の中で、なんとか少し顔をあげ、悠斗の顔を見つめました。いつもと違って、少し難しそうな表情。 ・・・ごめんね。 昨日、ギャラリーで思いがけず、悠斗のお母様と対面し、悠斗の家のことを知り、ココロが不安定になってしまった私を、丁寧になだめてくれた悠斗。 ・・・昨日は、ほんとに、いけない思考回路になっちゃってた・・。 ココロごとカラダごと私を抱きしめながら、『離さないよ、楓』って、何度も繰り返してくれた悠斗の言葉を思い出して、 ・・・離さないで、悠斗。 もう一度ココロの中で叫ぶように思う。 ・・・だって。 今も尚、嫌な予感がざわざわと胸を支配していて、その先には、しがみつく力すら残らない私が待っていそうで、ほんとに怖くって。 「・・・どした?」 知らず知らずのうちに私は、今、しがみつくようにしてしまっていたみたい。そのせいで目を覚ましてしまった悠斗が低い声でたずねてくれました。私をぎゅっと抱き寄せながら。 「・・・ううん。なんでもない」 顔も見れないまま答える私に、悠斗は笑って、 「なんでもなくないだろ?・・・まだ、不安?」 「・・・うん」 正直に答えた私を少し押し返して、悠斗は苦笑顔で私の顔を覗き込んできました。 「ったく。心配性だな、楓は」 言いながら、アマイ笑顔に変わって、 「ていうか、とりあえず、おはよ。愛してるよ」 優しく額に口づけてくれる。私は、やっと笑顔になって、 「おはよ。私も、愛してる」 そう言うと、少し安堵の息をついて、悠斗は、私を抱き寄せました。胸に私をうずめたままで、悠斗が言います。 「なあ、楓」 「・・・?」 「今日、一日、休みじゃん?」 「うん」 「実をいうとオレ、どっこも出かけないで、一日中、楓のこと抱きまくろうって予定を立ててたんだけどさ?」 「って、もう、バカ」 冗談だか、ホンキなんだか分からない言い方でそんなこと言う悠斗に小さく抗議の声をあげると、悠斗は少し笑ってから、 「だけど、気が変わった。」 「気が変わった?」 「あれ?ちょっと不満そう?一日中抱いて欲しかった?」 からかうようにいう悠斗に、 「バカ」 もう一度口をとがらせてそういうと、悠斗は、少し居住まいを正して、 「その予定はキャンセルして、楓の不安、先に取り除こうと思う」 「え?」 「一緒に出かけよう」 「・・・どこに?」 当然の私の問いかけに、悠斗は、イタズラ笑顔を浮かべつつ、私をしっかりと見つめていいました。 「・・・俺んち」
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最終更新日
2012.01.18 00:52:46
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