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「・・・・ここ。。。なの?」
悠斗がリモコンで操作し、ゆっくりと開いていくシャッターの向こうには、たくさんの木々。その奥に見え隠れする大きな建物に、私は呆然とつぶやきました。周囲を囲む塀の高さと長さに、ある程度予想はしていたけれど、それにしても、その立派さに圧倒され、半ば泣いてしまいそうな声を出した私に、悠斗は笑って、 「ここ、だよ。だいじょーぶだって、そんな顔しなくても。ワニやライオンは飼ってない」 「・・・ほんとに、そんなのがいそう・・・」 シャッターが開ききると、悠斗は、慣れた手つきで、ハンドルを操作し、車を車庫に納めました。エンジンを切り、キーをはずすと、悠斗は、 「さ、いこっか」 努めて明るくそういいました。私の不安を吹き飛ばそうとでもするように。今さら逃げ出すわけにもいかず、力なく肯く私に、 「か~え~で、ほら、んな顔すんなよ。オレが、ちゃんとそばにいるから、な?」 「・・・・うん・・・」 「って、元気なさすぎっ。表情も顔色も冴えない感じだぞ~??」 ・・・だって・・・・ 昨日のギャラリーでのことを思い出して、胸が痛くなり、縋るような目で、悠斗を見た瞬間、悠斗は、さっと、私を抱き寄せました。小さくタメイキをついた私に、悠斗は、耳元で、 「だいじょーぶだから。オレを信じて?」 そう囁いてくれました。 「・・・うん」 私は覚悟を決めて小さく肯きました。 悠斗に手を取られ広い庭を抜けて、玄関にたどり着きました。玄関の前で足を止め、振り返って私の顔を、大丈夫?とでもいいたそうに、覗き込んでくる悠斗に、小さく微笑んで、深呼吸した私。悠斗は、微笑んで、 「キンチョーしてんの?」 「・・・・うん」 「解消してあげようか?」 「え?」 というか言わないかのうちに、悠斗は、私のアゴに手を添えて、さっと口づけました。 ・・・んもうっ。すぐそこにおかあさまがいらっしゃる場所でっ・・・ アキれとアワてとハズカシさで、声もなく、耳まで真っ赤になっちゃった私に、悠斗は、満足そうに、 「キンチョーはとけたろ?あと」 「?」 「顔色もよくなったよ。ほっぺが赤くてカワイ」 「もうっ」 口をとがらせた私に、 「・・・いや・・・」 と少し首を傾げていいながら、 「・・もうちょっと、赤い方がいいかな」 と、アマク微笑んで顔をまた近づけてくる悠斗に、思わず目を閉じた私の。 ・・・唇に、悠斗の唇が重ねられるのと、 ・・・耳に、玄関のドアが開く音が届いたのは、 ほぼ、同時、のことでした。
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最終更新日
2012.01.25 21:17:55
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