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「そんな他人行儀なことおっしゃらないで。・・・これから家族になる間柄じゃないの」
楓に向かってそう言った母さんの言葉に、ちょっと時間が止まってしまった俺。 だって、そうだろ?こんなに簡単に結婚まで受け入れてもらえるなんて思ってなかったよ。だって、両親、や、じいちゃんは、俺に、広川家の跡取りにふさわしい結婚相手を勝手に用意して待っていて。俺は、一度も認めたことはないけれど、それでも、その相手は、勝手に母さんと仲良くしていて。楓には、きっと大丈夫だなんていったけれど、それはあくまでも、楓に会ってしまえば、楓をもっと知ってしまえば、楓が本当に素晴らしいこと、かあさんだって、認めずにはいられないって確信があっただけで。だけど、だけど、こんなに簡単に・・・。いや、もちろん、楓ほどの恋人なら、、、それに、もちろん、そうなるに越したことはないんだけど。 「悠斗?」 ブツブツ思う俺の思考回路に、母さんの声が割り込んでくる。 「え?」 ふと目をやると、母さんは、、、いや、楓だってとっくにソファに腰掛けて、俺の方を見上げていた。 「え?じゃないわよ、・・・・本当にもう、あなたって子は」 「なに?」 「肝心のあなたが一番驚いていてどうするの?結婚するんでしょ?楓さんと。それとも、しないの?」 最後はイジワルそうにそういった母さんの言葉に、 「するよ。するに決まってるだろ?な、楓?」 勢い込んで楓に問いかけると、楓は、答えにくそうに、困ったみたいな顔をする。俺は、ちょっと、ていうか、かなりショックを受けて、 ・・・・って、なんで・・・そこは、即答でうんって言ってくんない、、、、ん、、だ・?・・・・て、、、あっ、俺、また・・・。 「ごめっ、、」 俺は、楓の困惑の原因に思い当たり、バツ悪く、楓に、謝ろうとしたとき。 思ったこと、きっと全部顔に出てただろう俺をしっかり見てた母さんから、容赦ない言葉が飛んでくる。 「悠斗。・・・あなたまさか、それがプロポーズ?」 ・・・っ。あ~もう、くそーっ。 確かに、楓がここで肯いちゃうと、これがプロポーズになっちゃうじゃん。ああ、くそっ。まだちゃんとプロポーズ済ませてないのに、なんで、またこんな展開。 「・・・ごめん、楓、また、やっちゃった。忘れて、いや、ほら、なかったことにして。って、いや、ほら、結婚はしたいよ。だけど、ほら、プロポーズ、ちゃんとしたいから・・・」 なんだかもうしどろもどろな俺に、ちょっと、あきれたみたいに微笑んで肯いてくれる楓。ほっとするまもなく、母さんが言う。 「ごめんなさいね、楓さん。本当に落ち着きのない子で恥ずかしいわ。悠斗。とにかく、あなたも、いつまでも突っ立ってないで、座りなさい」 言われるまでもなく、楓の隣に、へたり込むように座った俺のこと、楓がいたわるような目で見つめてくれる。 ・・・ああ、もう俺何やってんの? 実家にキンチョーしている楓を守るどころか、反対に慰められてるなんて。
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最終更新日
2012.02.10 22:41:35
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