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「楓さん、昨日のこと謝らせてね。・・・・本当にごめんなさい」
そういって静かに頭を下げた母さんに、オレは心底驚く。 ・・・この母さんが、選挙以外のことで、頭をさげるなんて・・・。 驚き呆然とする俺の目の前で、同じように驚いた表情の楓が、慌てた様子で言う。 「そんな、どうか、頭をおあげください」 母さんはゆっくりと顔を上げ、小さく、首を振った。 「ちゃんと謝らなければ、と思っていたの。・・・昨日は、本当に、失礼な態度を取ってしまったわ」 かあさんが、そう言ったときに、ノックの音がし、返事を待たずに、手に盆を持ったミヤコさんが入ってくる。母さんはミヤコさんに、 「・・・ありがとう」 そういってから、楓に向き直り、 「座りましょうか?」 と微笑んだ。元通りソファに座った俺たちの前に、ミヤコさんが、カップを並べる。 「どうぞ」 促され頭を下げて、カップを持ち上げた楓。温かい飲み物にほっとしたように楓の口元がゆるむ。 ・・・なんていうか、まあ、それもまた、かあいいんだよな。 デレそうになったが、母さんの冷ややかな視線を感じて口元を引き締める俺。ミヤコさんが、部屋から出るのを待って母さんは話し始めた。 「・・・悠斗はね、まだ、若いから・・・・、若いうちは、好きなように好きな相手と恋愛することにかまうつもりはなかったの。それもいい経験だと思っていたの」 母さんはそこで小さく微笑んで、 「和斗さん、」 そう言いかけて、俺にチラリと視線を向けてから、 「・・・夫も、私という決まった婚約者がありながら、結婚前に心おきなく愛した女性がいたそうだから」 穏やかにそう口にした母さんの言葉に、俺は息を呑む。 ・・・父さんが心おきなく愛した女性・・それは・・・ていうか母さんはどこまで知って・・・?
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最終更新日
2012.09.18 21:42:51
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