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2012.09.20
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「・・・すごく、自分が場違いで、違和感を覚えるの」

小さくつぶやく楓に、俺は、なりふり構わず、口にする。

「何言って、、なあ、・・・オレとのコト、、やめる、なんて、言わないよな?」

弱く響いた俺の声に、小さな沈黙。それを嫌うように母さんが言う。

「違和感?ねえ、楓さん。それは、逆の意味で、じゃないかしら?」

「・・・逆?」

いぶかしげに問い返す楓に、母さんは、微笑んで、

「ええ。ここには、確かにお金がかかった調度品があるわ。だけど、楓さん、あなたと、あなたが創り出すものは、お金という価値に置き換えることができない次元のものよ。私はそう思うわ」

母さんは、そういって、また、飾り棚にちらりと目を向け、楓をじっと見つめた。

「・・・昨夜、シオリさんと別れて、ここに戻って、あなたの作品を眺めていたら、急に自分が恥ずかしくなったわ。こんなにも、ステキな作品を生み出す、あなたのようなヒトが、息子を愛してくれているのに、・・・ムリヤリ引き裂こうとしている自分が。・・・・・・本当に素晴らしいのに。作品も、あなた自身も」

「もったいないお言葉です」

小さく返した楓に、

「ただね、昨日言ったことは、シオリさんの手前、というだけでなく、やっぱり、本当に、作家としてのあなたにとても期待しているからでもあったのよ。この家に入ることは、作家としてのあなたに決してプラスにならない気がして」

「俺と楓が結婚したって、楓をこの家、に入れるわけじゃないって」

はっきり言う俺には例によって耳を貸さずに、母さんは、マイペースに続ける。ったく、なんだか、オレ、透明人間になった気がするよ。

「私もね、シオリさんと同じように、広川の妻になることを決められてしつけられてきたわ。それでも、今でも、くたびれることがあるの。いろんなしがらみや、人間関係、裏表のあるお付き合い、そんなもろもろにね。ストレスフルな暮らしに、少しずつお酒の量も増えたわ。・・・もちろん、主人はとても素晴らしいヒトだし、その妻としての暮らしは、とても、充実はしているけれど・・・」

そういって微笑んでから、

「あなたほどの才能のある人が、こんな暮らしを送る中で、あなたらしい作品を作れなくなるようなことがあったら、それは、重大な損失のような気がしたわ」

「だーかーらっ、こんな暮らしなんて、させないっての」

どうせ無視だろうから、ぼそっとつぶやいた俺をちらりとだけ見て母さんは続ける。

「だけどね・・」

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最終更新日  2012.09.20 06:41:15
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