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テーマ:☆詩を書きましょう☆(8466)
カテゴリ:詩
少年 07.7.22案山子 古い神社の境内を抜けたあたりにその少年はいた カマキリの干乾びた死体をアリたちが忙しそうに運んでいる 丁度少年の屈んでいる辺りに砂が小山になっていた 目線の先にはすり鉢上に掘られた穴の中に蠢く昆虫が一匹 一瞬凍りついたかのように蝉の声が途絶え静寂が訪れた 少年が見たものは砂漠で非業の死を遂げたボブフェットの様 瞬きの後にはその昆虫の姿は忽然と掻き消えていた 何の感情もなく少年はつまらなさそうに顔を上げる仕草 古びれた老木の饐えた匂いが淀んだ空気の中を彷徨っていた 激しく泣き出した蝉の声は少年の耳に断末の叫びを切り込んでいる 奥社から吹いてくる抹香の香り風が境内を大蛇のようにすり抜けていった 少年はふと気がついた足元にある白い小さな欠片を思わず手に取ってみる それはあってはならないはずの望郷の砂浜に眠る白磁の貝殻 灼熱の時を過ぎ今は冷たい躯のその物体がそっと語りかけていた 少年は思わず強く貝殻の破片を握り締め罪悪感を隠す所作 疑問は蟠りとなりそれが氷解して透明感を醸し出す白砂の道 やがて日が傾きかけた境内をいつまでも少年の影が伸びていった お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.08.13 12:20:07
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