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曹操閣下の食卓

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2008.11.27
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カテゴリ:午後の紅茶
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「ひまわりの家」というのは、言うまでもなく宮崎駿アニメ『崖の上のポニョ』の舞台となっている公立の高齢者介護施設(デイケア・センター)のことである。

これを見て、ちょっと懐かしい思い出にふけった。

昔、政治家の仲間たちと政策勉強会を始めたとき、最初にとりあげた地域政策テーマの中に、【合築(がっちく)】という政策課題があった。

いまからもう20年前のこと。

赤坂の洋食屋の三階にあった仲間たちの事務所で、夜明かし徹夜の討論で政策課題の具体化をつめた。

日本新党の結成の密談もおこなわれた場所である。

その結果、多くの地方議員が選挙で【合築政策】をとりあげて当選を果たした。

彼らはいま、国会議員や市町村区長、県知事に当選している。

【合築】とは何か。

当時、地方では人口の少子化のために保育施設の閉鎖が相次いでいた。

逆に地方の高齢化は急速な伸びで、施設の確保が急務だったが、とにかく土地の確保からやらねばならず、全くお手上げ状態だった。

そこで、地方議員たちは知恵をしぼり、議論を重ねて、閉鎖した保育施設に老人介護施設を建てること、あるいは保育施設を縮小して、高齢者施設を「施設統合して建築(合築)」するという提案にいきついた。

保育施設と介護施設が同じ敷地にあり、相互に交流する。

それは高齢者施設が辺鄙な地域に孤立することで、外部との接触がなくなり、私の祖母のように手足を縛られて餓死者になるような閉鎖的な収容所になることを極力回避しようとしたアイデアでもあった。

『崖の上のポニョ』の「ひまわりの家」は、まさに20年前に、われわれが全国各地の駅頭・街頭でビラ配りをして、社会に訴えた福祉政策の目玉だったのである。


ひまわりの家の輪舞曲(ロンド)

作詞 宮崎 駿
作曲 久石 譲
歌  久石麻衣

 
もういちど 自由に あるけたら
おもいっきり お掃除をして
お洗濯をして お料理をつくって
お散歩に 出かけよう

晴れたら なんて 明るいんだろう
お日様も笑っている
雨の日もスキ
おしゃれな雨傘
レインコートも着て 歩こう

お迎えは まだ 来ないから
その間に ちょっとだけ 歩かせて
もういちどだけ 踊りたい
そよ風になって

クルクルまわる 手をつないで
背すじをのばして ヒザをのばして
足をはねあげて スカートがふくらんで
みんなニコニコ笑ってる

おむかえは まだ 来ないから
窓のガラスを ふくだけでいいの
もういちどだけ 踊りたい
そよ風になって



20年も昔に提案した政策が、宮崎アニメの舞台になるなんて夢のようだが、第一号の施設が完成したとき、「やり方によっては政治というものは面白い、世の中の改善になる」という実感がわいたものだ。

たくさんの不合理なことが政治や政策の名の下に税金でおこなわれている。

もちろん【合築】が理想的な政策だったか、それについては反省点は多い。

現に特養施設は未だ不足している。
いくら空き地があっても建てて維持する公的資金がないからだ。

都市部の保育施設は競争率だけでも非常に高い。
したがって、よほど教育熱心な家庭でないと乳幼児を保育施設にあずけることができない。
これはもちろん乳幼児虐待が多発する背景事情になっている。

【合築政策】でオープンした施設は、実は昔の農漁村の端に位置しているものが多いから、駅やバスを利用しなければならない普通の住民にとっては、だいたい交通が不便なところにある。それは『崖の上のポニョ』にも少し暗示されている。
「ひまわりの家」の前にはバス停がない。
防風林もなく海風をまともに受ける崖っぷちに立地している。

洪水になったら、住民たちは船に乗って避難したが、「ひまわりの家」には救援隊はひとりも来ていない。避難に手いっぱいで、状況確認もできなかった。
現実であれば、「ひまわりの家」の高齢者たちと施設職員たちは全員水死していたわけ。
私は一人で背筋がふるえた。

これは就業構造が変化して、自宅で働いていた時代から、相当の距離を通勤する家庭が増えたことに理由がある。
「宗介くんのおかあさん」は、この「ひまわりの家」の職員だが、ルパン3世なみの荒っぽい運転で自家用車通勤をしている。

【合築政策】ができたのは、ある程度、富裕な自治体であって、これといった産業のない山間地などはゼロに近い。

もし誰かがいま【合築政策】と同じものをもってきたら、私は企画書を破いて「このバカ」と怒鳴るだろう。
つまり【合築】は典型的な失敗政策だ。
政策立案の意図が現場でひっくり返ってしまった。
汚職事件も起きた。
地元政治家と建設業者が組んで、儲かるからと特養施設を大規模にやって、公的資金を流用したりした。善意でまとめた政策は抜け穴だらけだった。
そのために利用者やご家族に未だにいらぬ不便を強いていると思うと、過去の未熟さが情けなく思う。

あれこれ矛盾をいってみてもはじまらない。前に進みながら考えるしかない。


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Last updated  2008.11.27 16:40:35


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