曹操閣下の食卓

昔の記憶だが、小室サウンドとの出会いは角川書店の元社長・角川春樹が一連の「角川映画」の絶頂期に製作した【天と地と】の主題曲だったと思う。

つまり、小室のスタートは「カドカワ・ファミリー」だったわけだ。
後に「小室ファミリー」を結成する経緯と比較して興味深い。

すべて自分の言いなりになる「ファミリー」をつくって、その総帥におさまると、人間はだいたい頭がおかしくなる。

中小企業で大当たりした経営者なども同じ末路になっていく。
角川春樹は自分自身で自己崇拝するための宗教法人と宗教施設までつくって宗教法人登録までやった。

これは松下幸之助さんの青年時代もそうで、かなりの勢いで芸者遊びもしたし、売れない芸術家の作品も手当たり次第に買いあさった。
その中には後にレジョンドヌール勲章や文化勲章を受章する大家の若くて貧しいころの作品も多数混じっていたので、さすが幸之助さんというところだが。
「あのころは自分の頭もおかしかった」と幸之助さん自身が晩年になってものすごく後悔しているのである。

例外は北野武。
彼はファミリーをつくってから、何度も破滅と絶命寸前まで堕ちかけた経験をしているから強い。

しかし、天才の仕事はその人生如何で評価すべきものではない。
やはり芸術は芸術。
歌は歌。

小室哲哉が何であろうと、小室哲哉がまともな頭で過去につくった曲はすばらしいものがある。




BOY MEETS GIRL　

作曲 小室 哲哉
作詞 小室 哲哉

Boy Meets Girl　
それぞれの
あふれる想いに　
きらめきと　
瞬間を見つけてる
星ふる夜の　
出会いがあるよに…

Boy Meets Girl　
あのころは
いくつものドアを　
ノックした　
あざやかに描かれた
虹のドアを　
きっと見つけ出したくて…

夜明けまで歌ってた
あなたが得意な　
SWEET LOVE SONG
やけに思い出しちゃって　
スーツケースに
入れとこう
旅立ちを
決めたのは　
勢いだけじゃないから
あなたと過ごした日は　
20世紀で
最高の出来事！

Boy Meets Girl　
出会いこそ
人生の宝探しだね　
少年はいつの日か
少女の夢　
必ず見つめる

Boy Meets Girl　
輝いた
リズムたちが踊り出してる
朝も昼も夜も風が南へと
心をときめかせている

安らぎが欲しかった
誇れる場所が欲しかった　
だけど大切なのは
あなたとあの日　
出会えたことね

WOW WOW WOW WOW
Boy Meets Girl　
それぞれの
あふれる想いに　
きらめきと　
瞬間を見つけてる
星ふる夜の　
出会いがあるよに…

Boy Meets Girl　
あのころは
いくつものドアをノックした　
あざやかに描かれた　
虹のドアを　
きっとみつけて　
心をときめかせている

Boy Meets Girl　
出会いこそ
人生の宝探しだね　
少年はいつの日か
少女の夢　
必ず見つめる

Boy Meets Girl　
輝いた
リズムたちが踊り出してる
朝も昼も夜も風が南へと
心をときめかせている



★「あのころはいくつものドアをノックした」
　「出会いこそ人生の宝探しだね」
　「少年はいつの日か少女の夢必ず見つめる」

　あまりうまい歌詞じゃないが、心にのこるメッセージだ。
　【翼の折れたエンジェル】の絶望的な男女よりは希望がある。

　翼が折れた男は、女の夢なんて後回しにして、チャイニーズ・ダイス(マージャン)で当てのない収入をめざして、周囲の仲間に「そんなことで食っていけるかよ」と笑い飛ばされている。
　そういう意気地なしでギャンブルで食っていこうとするチンピラ夫婦は多いからな。
　男の身勝手に振り回されて青春をムダにする女性は悲劇だ。

　少年は自分の夢ばかり追っているけど、いつしか少女の存在に気づいて、彼女にも夢があるんだなとわかりあえる日が来るだろうという淡い期待。
　「少年はいつか少女の夢をかなえてあげる」って甘い幻想だと切り離しているようだな。
　現実主義的だ。
　少女の夢なんかに、そんなにつきあえないよって冷たさもあるか。
　
　小室が犯罪の一線を踏み越える前に、もう少し虚飾に満ちた生活態度を変えていれば。

　それはまあ仕方のないこと。
　ポール・マッカートニーも井上陽水も過去に麻薬所持で逮捕された。
　もちろん逮捕後の仕事もすばらしいものがある。

　黙って落ちていくことはない。
　天才なのだから。

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