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カテゴリ:小説

hello♪



みなさん、こんにちは、ミキです♪


先日のミキの日記【私の短編小説が掲載されます】
でふれました、ミキの第一作目の短編小説
今日アップさせていただきますヾ(;´▽`A``

この短編小説は、ある日、
ふと思い立って半日でイッキに書き上げたものです。

この短編小説をきっかけに
自分でも予想していなかった【もう一つの道】ができました。

ここにいたるまでの【偶然のような必然】
感謝します(*^ー^*)



rain.midori2


【おくりもの】


 今日、父が美樹のアパートに訪ねてくる予定ではなかった。
 美樹は引越しの準備の真最中。
 結婚式を間近に控えているため、新居へ持っていく物と
 処分する物とが部屋中に広がっていた。
 そこに突然やってきた父は、美樹にとって、
 あまり嬉しい来客ではなかった。
 「どうしたの?今日来るなんて言ってなかったじゃん」
 「あはは、いやね、ちょっと手伝おうかと思って、掃除をさ」
 「え!?私26歳だよ!?自分の部屋ぐらい自分で片づけられるから!
 見られたくない物だって、ないわけじゃないし…」
 「ほら、向こうの家に行ったらそうは会えなくなるだろ。
 だから、まぁ…な」
 美樹は「大丈夫なのになぁ…」と呟きながら、
 出しっぱなしの靴やサンダルを左右の端によせて、
 父を部屋に入れるのだった。

 もうじき嫁ぐ娘と送り出す父。
 近頃はあまり会話の時間がとれなかった二人が、
 今同じ部屋にいる。
 片付けなんて進むはずはない。
 互いの近況を話しているうちにあっという間に時間は流れ、
 散らかった洋服やダンボールは、
 結局ほとんど手付かずのままだった。
 「だから大丈夫って言ったのに」と美樹が言うと、
 「確かにな」と父は笑った。

 「コーヒーでも飲もっか」
 美樹は、水を入れたやかんを火にかけ、
 台所の作業スペースにおいてある、
 洗って伏せてあった二つのマグカップに手をのばす。
 これは、彼とペアで買ったマグカップだ。
 「…今日だけだから」と、少し後ろめたさを感じながら、
 二つのカップを手に取る。
 彼には内緒にしておこう、そう美樹は思った。

 「…あれ?コーヒーどこだろう」
 あるはずの所にコーヒーがない。
 「いつでも飲めるようにと出しておいたはずなんだけど…」と、
 台所の収納スペースを次々と開けて探す美樹。
 「まさかここにはないよね」と、
 引越しの作業中のダンボールの中をのぞいた。
 「あれ?」
 美樹は、意外な物をそこに見つけ手に取って出してみる。
 それは、古い財布だった。
 美樹の好きなチェック柄の財布だ。
 「懐かしいじゃないか」と、父が嬉しそうに言う。
 それは、高校入学のお祝いにと、
 10年前に父が美樹へ買った財布だった。
 「実家の私の部屋においといたはずなんだけどな…。
 中にお金とか入ってたりして」と、
 美樹は財布を開けてみた。
 中に何か入っている。
 美樹はそれを取り出してみた。
 「チリン」
 入っていたのはお金でも紙切れでもなく、小さな銀色の鈴だった。
 「ん?鈴?私、この財布の中に入れたかな??」
 と首をかしげる美樹に、父は言った。
 「それもパパからだよ。それを見たら思い出しなさい、パパのことを」
 「え~!?この鈴で!?どうして!?」
 「美樹のことをずっと応援しているから」
 「鈴でねぇ…わかったよ、財布の中に入れておくよ」と、
 笑いながら美樹は答えた。
 そんな美樹に父は言った。
 「美樹が、この先大きな岐路や壁に……」

 …美樹は目を覚ました。
 しばらく意識がぼんやりする。
 少しずつハッキリしてきた視界には、
 見慣れたテーブルとクッションがあった。
 ゆっくり息を吸い込むと、
 朝ごはんの残りの味噌汁のニオイがする。
 南側の大きな窓からは暖かい昼の日差しが差し込んでいて、
 窓際に置いたままのぬれた洗濯物からは、
 柔軟剤のやさしい香りが広がっていた。
 「そっか…私、途中で横になって、そのまま寝ちゃったんだぁ」
 ゆっくり起き上がろうとすると、
 その手に子供の靴下を持っている事に気がつく。
 「握ったまま寝てるし」と、少し苦笑い。

 「…夢だったかぁ」
 父は、美樹が20歳の時にガンで他界。
 親が離婚していたため、
 病気を知ったのは、病状がかなり悪化してからの事だった。
 美樹の都合で病院への到着時間が遅れ、
 母親や兄弟全員が、父の最後の声を聞けなかった。
 「…洗濯物干さなくちゃね」と、ゆっくり立ち上がった。
 するとその時「チリン」と鈴の音がした。
 音のする方に視線を向け、それを拾ってみる。
 床に落ちた物、それは、小さな銀色の鈴だった。
 次の瞬間、美樹の胸に、
 押し殺していた感情全部がこみあがってきた。
 子供のように泣いた。
 涙を我慢することは出来なかった…。
 暖かい日差しがそそぐ誰もいないリビングで、
 美樹は声に出して呟く。
 「パパごめんね…そして、ありがとう」




【おくりもの】がきっかけで執筆依頼をいただき
新たに書いた【あなたがいたから】が
この本に掲載されることになりました。


【哀しくて(日本文学館)】

kanasikute

出版社の方から届いたこの一冊。
母にプレゼントしようと思います♪





rain.midori2


読んでくれてありがとう(*^ー^*)

ミキでした。


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chari このブログを読んでくれたあなたへ今日の一言…chari

『 あの日があるから 今日がある 』


PS.日本文学館の担当の方、今回のこのブログへの小説掲載を
快く承諾してくださってありがとうございました。



rain.midori2



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Last updated  2008.07.18 09:52:23
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