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カテゴリ:今日の出来事
【ボランティアは「やらせていただく」】 聞き手 ところで、ボランティアをしてみて、何か意外なことはありませんでしたか。だいたい想像したとおりでしたか。 郡山ハルジ そうですね、事前に「ボランティアの心構え」みたいな文書をダウンロードして読んでいたので、あまり意外だったことはないです。 聞き手 その「ボランティアの心構え」というのは、具体的にどんな内容なんですか。 郡山 まあ、被災地の迷惑にならないよう、作業中の水や昼食も含め、宿泊と食事は自分で確保することとか、被災者の気持ちを尊重し、みだりに写真を撮ったりしないとか、「ボランティアをやらせていただく」という謙虚な気持ちで取り組むとか、そんなことが書いてあったと思います。 聞き手 …うーん、ボランティアを『やらせていただく』ですか(笑)。まあ写真云々は分かりますが、自腹切って遠くから支援に来てやって来たボランティアが、さらに被災者に対してボランティアを『やらせていただく』という気持ちで取り組むというのはずいぶん要求水準が高いですね(笑)。「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ」じゃないですけど、何だかそんなレベルの徳の高さが要求されているということでしょうか。 郡山 確かに、この「心構え」を読んで、ボランティアに行くのを考え直した人は多いかも知れないですね(笑)。 聞き手 そもそも、交通費から宿泊から食費まで自腹を切るだけでも普通の人には相当ハードルが高いじゃないですか。その上に、何の実利もないハードな作業を「こちらから被災者にお願いしてやらせてもらう」という発想は、もはや宗教者の域ですよ(笑)。 郡山 そう言えば、震災直後に現地入りしてすでに2ヶ月になる九州出身のボランティア・リーダーが、「ボランティアなんてマゾじゃないと出来ない」と言ってましたね(笑)。カネ出して3K仕事をしに行くわけですから。 聞き手 「マゾ」ですか(笑)。「右の頬を打たれたら、左の頬を差し出せ」というのも、考えてみたらマゾの発想かも知れませんね、人徳うんぬんというよりも(笑)。 郡山 なんだか「ボランティア=異常にいい人」という話が、「ボランティア=異常な人」という話にシフトしてきましたね。これはマズイ(笑)。 【好奇心を満たすためのボランティア?】 郡山 まあ、実際問題、「マスコミ報道を通してしか見てこれなかった悲惨な現地の様子を自分の目で見てみたい」という健康な好奇心がモチベーションになってボランティアに参加した人もいると思うんです。ボク自身、そういう個人ボランティアと一緒に作業後に被災地を車で周って写真を撮ったりしてました。 聞き手 単に“被災地観光”で、悲惨な写真を撮って周ってる人が居たら傍迷惑な鬼畜でしょうけど、ちゃんとボランティア作業をした後だったら許されるだろう、というところですかね(笑)。 郡山 そうですね。そう言えば、キャンピングカーで被災地を周って写真を取り続けているフリーランスのカメラマンに会いましたが、この人もボランティアたちに混じって作業してることがありました。 聞き手 「悲惨な状況を実際に見てみたい」という好奇心も「人を助けたい」という気持ちも、どちらも自然な人間らしい気持ちなんでしょうし、モチベーションが何であれ、自分がそこに出向いて困っている人の役に立つことが重要ということですね。 郡山 そう思います。別にマゾヒストや宗教家並みに徳の高い人でなくとも、被災地ボランティアは出来るということは、ここで強調しておいた方がいいかも知れません(笑)。 聞き手 それを聞いて、ちょっとだけ安心しました(笑)。 【「ボランティア様」への待遇】 郡山 ところでボランティアに関わる「自腹」の件ですけど、ボクが参加したゴールデンウィーク以降は結構資材も揃っていて、仙台なんかだとほとんど手ぶらで行っても、作業着からマスクから長靴まで一切借りれる状態でしたね。作業を依頼する被災者の人も、この時期になれば近所のコンビニやスーパーが開店してますから、昼食の弁当や休憩時のスナックや飲み物を用意してくれてる所が多かったです。 聞き手 「被災者に経済的負担を掛けないために、飲食等のご好意は拒否すること」みたいな心得というか指示はないんですか。 郡山 なかったです。むしろ、ボランティア・リーダーなんかは、依頼者からのご好意は無にしない方がいいと言ってましたね。まあ、私が被災者の側だったとしても、作業を一切無料でやってくれている良心のボランティアたちに、せめて「燃料」となる飲み物や食べ物くらいは用意してあげたいと思うだろうと思うし、まあ被災者側もその程度の“好意”はしてもいいだろうと、謙虚さもなく考えてました(笑)。 聞き手 なるほど。そう言えば、仙台あたりだと、ボランティアは市内の交通が無料になるそうですね。 郡山 そうです。ボランティアに配られる名札ワッペンをしている人は、タダで地下鉄と市バスに乗れます。運転手も乗客も「…おお、ボランティア様か」といった表情をするので、ちょっと誇らしいですよ(笑)。 聞き手 ボランティアもせずにノホホンと日常生活を送っている地元民には、そのワッペンは結構プレッシャーになるんじゃないですか。 郡山 「他県や海外からこうしてボランティアが来て人助けしてるんだから、自分らも何かしなきゃ」という啓発に多少ともなったかも知れませんね。分かりませんが。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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