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カテゴリ:時事
ロンドンがエライことになってますね! ロンドンだけでなくイギリス中のほかの都市に飛び火して同時多発的に燃え上がってる感じです! 最後に楽天日記を更新してから2年半も経つロンドン在住の鰻坂ワタル氏に安否を尋ねたところ、「無事です、略奪を見ました、エキサイティングですね」との返信が来ました。ビジネスマンになってもさすが根がパンクな鰻坂さん、こんな不穏な事態をエンジョイしているみたいですね! 70年代末期、不況下のイギリスで仕事もなくブラブラしていたロンドンの不良どもが、パンク・ロックを自称して「♪オレはアナーキストだ、イギリスに無政府状態を、その日はいつかやって来る」(セックス・ピストルズ『アナーキー・イン・ザ・UK』)、「♪ロンドンが退屈さで燃え上がっている、ダイヤル99999を回せ」(クラッシュ『ロンドンズ・バーニング』)と歌いましたが、30余年を過ぎてついにホントにアナーキーがイギリスをおとずれ、ロンドンが燃え上がってしまったって感じですか。 ボクはとっくにパンク・ロックが下火になった80年代末期にロンドンから南に鉄道で1時間くらいの海沿いの町に4~5ヶ月住んでいました。留学を口実に大学の4年次を休学して実は後輩とバンドをやっていたのですが、留学をせずに大学構内をブラブラしているのを大学の事務員に咎められたために、ホントに留学しなければいけなくなり、当時ボクが愛していたポスト・パンクの暗くて内省的で過激な音楽がいっぱい聴けそうなロンドンの近くに語学留学することにしたのです。 ロンドンというか、イギリスには軽い憧れを抱いていました。当時、ボクがカッコいいと思う音楽はみんなイギリス発だったからです。 まあ、80年代のイギリスというと、当時はデュラン・デュランとかカルチャー・クラブとかデペッシュモードとかいったメジャーなバンドが日本でも流行っていました。でも、そんな誰でも聴いてそうなバンドを「ケッ。」とか思ってバカにしているアート系のスカシた連中が聴いているのは、「キュア」とか「コクトー・ツインズ」とか「シスターズ・オブ・マーシー」とかいった暗くて内省的な音楽でした。ボクは、イギリスに行けば、そんな音楽がいつもライブで聴けて、ライブ会場には自分と同じような美意識を共有するカッコいい人たちがいっぱい集まっていて、レコード屋ではレアなアルバムとかが入手し放題であるような幻想を抱いていました。 しかし、それが幻想であることに気づくのには、ロンドンを2~3回も訪れれば十分でした。 ボクは毎週とは言わないまでも隔週くらいでライブなどを聴きにロンドンに通っていました。ある日、ロンドンに向かう列車の中で、どこからか聞き覚えのあるキュアの曲が漏れ聞こえて来ました。いったいどんな人が聞いているのだろうと興味深く思ってその音の元を追ったところ、その席にはいかにもダサくて不潔っぽくて無教養そうなイギリス人の女の子が陰鬱な面持ちでウォークマンを聴いているのでした。 ライブハウスに行っても同じでした。そのテの音楽を聴きに来ているのは洗練されたアート系の連中などではなく、イギリスから一歩も外に出たことがなく、日本がどこにあるかもろくに知らないような、貧相で無気力で不衛生な男女ばかりなのでした。 日本ではオシャレなスカシ系の連中が聴いているバンドは、実はイギリスでは労働者階級のお気に入りだった事実はボクにとってショックでした。イギリスではアートなんかに関心を持つ洗練された上層階級はパンクやニューウェーブなどではなく、クラシックやニューエイジ系の環境音楽や民族音楽みたいなのを聴いているみたいでした。 そんなわけで、ボクはイギリスに住んでいた期間、ヨーロッパからのほかの留学生の友だちはたくさん出来たものの、イギリス人の友だちはさっぱり出来ませんでした。カンタンに言うと、イギリスのこの明確な階級の壁みたいなものに馴染めなかったような気がします。 ロンドンに関しても、ガールフレンドと2人でデートした数少ない楽しい記憶を別にすると、いつ行っても天気が悪くて(笑)、街並みもゴミゴミしていて、街を歩く人たちも不機嫌そうなこの街に、幻滅こそすれあまり好い印象を持つことのないまま帰国したのでした。 その後、アメリカの大学留学中と、アメリカの仕事を辞めて帰国する前に2回ほどロンドンに滞在して、ちょっとは印象は変わったかも知れませんが、結局当初の幻滅を克服することのないまま今日に至っています。 まあ今回の暴動も退屈でエネルギーばかりを持て余した底辺の若者たちが憂さ晴らしにやっているような感じですが、30年前のパンクムーブメントと同じく、イギリスみたいな格差社会にはいつもこんな鬱屈した火種があるのかも知れません。それにしても、アナーキーでも何でもいいけど、略奪とか暴力じゃなくって、パンク・ロックみたいなアートの形式でその鬱屈を表現して欲しかったところです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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