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カテゴリ:マラソン/山/トライアスロン
次のオレの順番は夜の11時スタートであった。
ほぼ中間地点となる約120kmの交代地点まで全チームの走者が到達した時点で一旦レースを休止し、後半戦を夜10時に一斉スタートし直す。ただし、オレらのチームは「一般」チームと一緒にスタートするにはあまりにもぶっちぎりのタイムであることが前半戦で明らかになったため、後半戦は「エリート」「準エリート」チームと一緒に11時にスタートすることになったのであった。 前半戦の途中でサポート車に乗っていたコーチとすれ違った際、コーチのハズバンドと順番を入れ替えて、もっと距離の短いコースを走ったほうがよいのではないかと言われた。オレが十分に休息もとらないうちに例の青年に代わって4キロ少々の上り坂コースを走ったので、深夜の13kmや朝の難易度4のコースを走るには疲労し過ぎているのではないかと言うのだ。一方、5キロ前後の短めの距離であればコーチと同じくらいのスピードで走れる実力を持つコーチのハズバンドは、今回は距離が比較的短い順番を選んで走ることになっていた。 しかしオレは、仕事が忙しくて長距離のトレーニングがほとんど出来ていないコーチのハズバンドよりは好いタイムで走れるからと主張し、当初の順番で走らせてもらうことにしたのであった。今年はアイアンマンに出場しないのでキチガイじみた量のトレーニングこそしていないが、このレースに出ることが決まってから密かにトレイルなどを走って自主トレしていたのである。その成果を確認する機会をみすみす放棄するわけにはいかない。 スタート時刻ギリギリに到着した真っ暗な林の中にあるトレイルのスタート地点にはすでに10数人のランナーが並んでいた。深夜のコースはトレイルなど街灯のない場所もあるので、ランナーにはヘッドランプと反射板ベストの着用が義務付けられている。また、トレイルではサポート車が入る余地がないので、多くのランナーは途中給水が不要なようにキャメルバッグを背負っている。こんな格好で深夜に競走をする機会は一生の間にこれが最初で最後かも知れない。 こんな感じ スタートとともにエリートランナーとおぼしき4~5名が飛び出し、その後に続く4~5名のグループの後尾に付いていく。1キロ4分45秒くらいのペースであろうか。昼過ぎに雨が降ったので、足元は水溜りだらけである。なにせ初めて走るコースであり、あらかじめ地図も確認していなかったため真っ暗な中どっちに走っていいか分からない。道に迷わないようにするためには必死で前の走者についていくしかない。 3~4キロのトレイルからやがてコースは車道に出た。いきなり上り坂だ。右手に真っ暗な湖畔が見える。最初の上りで初老のオッサンに、2つ目の長い上りで長身のニーちゃんに抜かれる。やがて住宅街とおぼしき地帯に入る。土曜日とはいえもう11時過ぎなので一帯はシーンとしている。こんな場所をこんな時間にヘッドランプをつけた連中が息を切らせながら走っているというのも異様な光景だ。それでもちゃんと要所要所にランプを灯したパトカーが配置され、ポリスマンが交通整理をしてくれている。オレたちの払う出場料の多くはこれらの交通整理のポリスマンに払われているらしい。そりゃ、こんな酔狂にケーサツが自腹で付き合う義理もあるまい。 昼間走るのと違って真っ暗な中を走るのは距離感が乏しいので、どれくらいの距離を走ったのかは時間から推測するほかない。腕時計を見ると早くも50分近く経過していた。10キロくらいは走ったか。疲れはそれほど感じないが、翌朝には難易度4のコースが控えているので自重する。それにしてもアップダウンの激しいコースだ。前のランナーには50mくらい引き離されたが、後続のランナーの足音は聞こえない。このペースを交代地点まで維持すれば、このまま8位くらいの順位で次の走者に引き継げるか。 そろそろ交代地点が見えてきてもいい頃だと思いつつ曲がり角を曲がると、前方に緑色のランプが点滅し、反射板ベストを着た複数の人がウロウロしている場所がようやく見えてきた。あれが交代地点に違いない。真っ暗でいったい誰が誰だか判らないので次の走者の名前を呼ぶと、返事が聞こえた。タッチして交代する。1時間3分。キロ当たり4分50秒ペースか。当初の目標が1時間9分、5分20秒ペースだったので、よほど周りのエリートランナーのペースに引っ張られたということか。 あとは後続の2人の走者のサポートが終われば、朝は7時過ぎまで仮眠できる。難易度4の最後のコースに備えて出来る限り疲労回復しなければならない。 (つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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