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カテゴリ:たわごと・仕事・愚痴
「勝ち組」はジコチュー? 米研究者ら実験で確認 お金持ちで高学歴、社会的地位も高い「勝ち組」ほど、ルールを守らず反倫理的な振る舞いをする――。米国とカナダの研究チームが、延べ約1千人を対象にした7種類の実験と調査から、こう結論づけた。 実験は心理学などの専門家らが行った。まず「ゲーム」と偽って、サイコロの目に応じて賞金を出す心理学的な実験をした。この結果、社会的な階層が高い人ほど、自分に有利になるよう実際より高い点数を申告する割合が多かった。 ほかに、企業の採用面接官の役割を演じてもらう実験で、企業側に不利な条件を隠し通せる人の割合も、社会的階層が高い人ほど統計的に有意に多かった。別の実験では、休憩時に「子供用に用意された」キャンディーをたくさんポケットに入れる人の割合も同じ結果が出た。 h t t p://www.asahi.com/science/update/0228/TKY201202270655.html 上記は地元カナダのニュースでも話題になっていたのだが、日本のメディアでも記事になっていることを知って、面白いと思った。実は先日の日記の「長いものに巻かれる」の話は、もともと結婚や妻子の話とは直接関係なく、このニュースを車中のラジオで聞いたのをきっかけに考えたことであった。 上記の実験の結論は、いわゆる自称「負け組」が自己正当化するのに都合が良かったりする面があり(笑)、単純に鵜呑みにするのも問題がありそうだが、一方で国内の富の95%を上位1%の勝ち組が独占し、残り5%の富を99%の負け組が奪い合うアメリカみたいな「弱肉強食」の格差社会のことをまさに言い当てていて、いろいろと考えさせられた。 組織の中で働く大多数の人が日常的に経験していると思うのだが、小は職場の備品の私物化や個人的な飲食を会社の経費で落とすとか、中は公職のコネ採用やテレビのやらせや労働基準法無視のサービス残業、大はインサイダー取引や脱税・不正経理に公共事業の裏入札・談合、発ガン性物質を使った食品の製造販売や有力者による犯罪のもみ消しまで、組織の中ではさまざまな「不正」を目にすることがある。そして驚くことに、組織の中ではこれらの「不正」がはたかも「当たり前」のように横行していたりする(笑)。 そのような大小の「不正」をいちいち指摘・非難している人間がいたら、その人はその集団・組織には居続けられないだろう。自分自身が「不正」を働かなかったとしても、少なくとも「見て見ぬフリ」をしないと組織には残れない。ましてやその組織の中で上位に上り詰めようと思ったら、そのような「不正」を寛大に容認するだけでなく、むしろ自ら積極的に実行できるくらいでなければいけないのかも知れない。 極端にいえば、不正を気にせず利己的な行動をとる人が最後まで生き残って一握りの「勝ち組」となれるが、ルールや倫理に最後までこだわり常に利他的な行動をとる「正義の人」はすぐに組織からあぶれてしまう。そして、その中間にいる圧倒的多数の人間は堂々とルールを破れないまでも他人の不正も堂々と指摘・非難できないまま、不正と倫理、利己と利他の間で揺れ動いでいるといった感じだろうか。 もともと日本には「清貧」すなわち清く貧しく、勝ち組になれなくとも不正には加担しないという考え方がある。日本はかつて「一億総中流」と言われ、国民の9割が自分が勝ち組でも負け組でもなく「中流」だと思う社会を実現したが、その背景にはきっと圧倒的多数が少なからず「清く貧しく」を善としてきたことと無関係だとは思えない。 「勝ち組」とか「負け組」とかいう最近の日本人の考え方は明らかに「中流幻想」を否定しアメリカ的な格差社会に向かうことを前提にしているわけだが、上記の実験結果は、「勝ち組」として生き残るためにルール無視や利己的な態度を奨励してしまうような側面があるのが気になる。つまり日本では「清く貧しく」から「弱肉強食」「正直者は馬鹿を見る」の世界への移行が進行しているのでは、ということである。 まあ、上で「中流幻想」と書いたとおり、一億総中流というのはもちろん個々人が自分を「中流」だと思っている人間が9割以上を占めたというだけであって、実際には当時から社会的格差は存在したわけだろうし、いわゆる総中流社会にもいろいろ弊害はあったに違いない。でも、オレ個人は、誰もが生き残るためにこぞって不正を働くような社会よりは、「清く貧しく」をヨシとして誰もが中流だという幻想を見ている社会の方がマシだという気はする。 まあ、社会格差の問題には「ノブレス・オブリージュ」の件、倫理道徳の件には「弱者がルールを欲し、強者がルールを作る」といった根本的な問題なんかがあって、どっかの研究チームがやったこんな実験の結果を元に一概に語れる問題ではないのだが、とにかく今の日本が向かいつつある方向には個人的に不安を感じるのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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