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カテゴリ:研究について
放射能事故 拡散予測図・・・
今朝のテレビや新聞などでも大きく報道されていたのが「放射能事故 拡散予測図」です。 ご丁寧にその予測図まで公開しています。 工学関係の研究者や技術者は、以前からこのような事故を想定した汚染予測を行っています。 研究所を退職している私も今から四十年前に、そのような汚染予測の計算に携わってきた経験があります。 さて少し専門的な事を書きますが、この予測は「大気拡散式のサットン式」を改良して計算しているケースが多いと思います。 私が計算していた頃の式は下記の式です。 最大着地濃度: Cmax = Cz / Cy Cy = 0.234 × q × 106 Cz = u × He2 q:汚染質排出量(m3/S) u:平均風速(m/S) He:補正拡散高さ(m) 最大着地濃度距離: Xm = He/Cz2/2n n:拡散パラメーター これは汚染物質が、一定の条件下で施設から吹き上げられた高度から拡散を始めたとの設定条件で計算します。 Heは(汚染物質の吹き上げ速度+汚染物質の温度による上昇速度)から実際の拡散高度を計算で出し、その地点の風向と風速でどの方向に拡散を始めるかをデータ化するわけです。 私がこの計算を行っていた頃は、いわゆる電算機(電子計算機)と呼ばれる第二世代の電子計算機でした。(歳がばれてしまいましたね!) 判りやすく云うと、初代のファミコン程度の計算能力しか無かった時代の電算機でした。 上記の計算は一次元(点と線)でしか計算出来ません。 今回公表された汚染予測図は二次元のデータになります。 原子力規制庁の説明に依ると「これは標準的な風速で地形の変化などを計算に入れていないデータです。」と言っていました。 私が計算していたのも同様なデータで、高低差のまったく無い平坦な地表に汚染物質が或る高度まで吹き上がり、そしてその高度から一定の方向に向いて変化のない風速に流されて拡散したと想定した計算データです。 現在のスーパーコンピューターを使えば、地形の変化に伴う風向や風速の変化まで計算のファクター(要素)に加えられます。 ですからより正確な放射能影響予測図が出来上がる筈です。 上述の放射能影響予測システムが、通称:SPEEDI(System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information)と呼ばれて居る「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」が、日本原子力研究所を中心に気象研究所などの協力で研究開発が行われ、現在は第三世代の「SPEEDI-MP」が研究中だと思います。 勿論、計算値ですので若干の誤差は発生します。 ここで話がずれますが・・・ホットスポット(高濃度地点)は、日本政府が云う様に汚染物質の発生源から同心円状に分布するわけではありません。 遥か遠くにホットスポットが出現しますし、発生源近くでも低濃度の汚染が出現する事もあります。 一概に半径何十キロでくくれる汚染状況ではなく、上記のような多様なファクターに影響されてマダラ状に汚染地域が広がる訳です。 例えば、ウクライナでの「チェルノブイリ原子力発電所」事故の放射能拡散は、首都「キエフ」の直ぐ北に在る湖の北西端湖畔に「チェルノブイリ原子力発電所」が在りますが、日本政府が云うような同心円状に放射能拡散が進行する訳ではありません。 下記の写真の様に、「チェルノブイリ原子力発電所」の西側隣地では低線量の放射性物質(セシウム137)汚染も確認できます。また少し離れた北東~北西にかけて真紅で表示されれている高線量の汚染地帯が広がって居ます。この様に避難する時の方向と距離を、「SPEEDI」が正確なデータから計算出来れば、低線量の地域を選んで避難する事が可能になります。 UNSCEAR(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation=原子放射線の影響に関する国連科学委員会)から↓借用 拡大為さってご覧下さい。 Maps of radionuclide deposition 当時どの様に放射性物質が拡散したのかが下記のページの下部で観る事が出来ます。 是非ご覧下さい。 The chermobyl Gallery 今回の報道を見たり読んだりしていて感じたのが、記者もアナウンサーも自分が書いたり読んだりしていることを完全に理解して報道しているのか?と云う疑問でした。 このような時は専門家に書いて貰うか、出演して説明して貰うべきだと思います。 判らない人間が自分勝手な解釈でに報道するのは、余計に民心を惑わすだけのように思いますが・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 1, 2015 03:25:07 PM
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