楽天トラベル成功のコンセプト ~その3~
※前回からのつづきですその3■「商品力」と「営業力」と「場のちから」5ヵ年の目標は決まりました。次に、実際にサービスを開始するにあたり「ユーザーへの告知と商品品揃え」のどちらに着手すべきかを考えました。前述のようにネットユーザーはその時点では30万人程度の規模でしたが、ネットは7倍のスピードで急激に発達すると言われていたので、まずはユーザーに早く告知することが重要だという考え方もあると思います。しかし、我々の考えとしてはユーザーと商品のどちらが先かという問いへの答えは、間違いなく商品でありました。例えば、ケーキ屋さんを宣伝したとしても、肝心の商品であるケーキが店頭になければ話にならないのと同じだからです。商品が揃ってもいないのに、営業したり広告費を掛けて宣伝したりしても仕方がないのです。これは現在でも同じで、先に商品を揃えること、つまり至極当然のことではありますが企画と営業は一緒に進めるということを徹底して行うということであります。よって、まずは商品ラインナップ拡充に着手しました。当社では出張用途のビジネスパーソンに利用してもらうことを想定しておりましたので、全国都道府県の県庁所在地すべてに、上級ホテルからリーズナブルなホテルまで3ランクの施設を揃えることに着手しました。そこで全国の施設さまに参画いただくための営業活動を開始するわけですが、まずは営業活動を因数分解し、最初の年は1日6軒を訪問することにしました。当時、営業は岡武1人しかいなかったので、1年365日のうち300日活動するとして約1,800軒、1年の半分を営業に充てると900軒くらいは回れる計算ができます。限られたリソースの中で、まずはその位の施設数をラインナップすることができればサービスとして機能するであろうと考えました。地道に思えても、まずはこの因数分解とこれだけの訪問活動を「やりきる」ことが非常に重要なポイントであったのです。実は、当社から遅れること2~3年ほどして、とある大企業が高級ホテル予約システムのビジネスを始めました。その企業には10万人以上の社員がいたことを考えると、仮に100人が1日6軒の施設向け営業をすれば、1日で600軒、30日間で1,800軒であります。少人数でやっている当社などすぐに追い付かれてしまうと思ったのですが、なぜかそれは実行されませんでした。「やるか、やらないか。」非常にシンプルですが実はこれが決定的な差になるのです。また、ここで考えなくてはいけないのは、我々楽天トラベルが行っているのは「マーケットプレイス」型のビジネスであるということです。現在、20,000軒以上の施設さまが提供している部屋情報を4,000万人の利用者が見ているという状態であり、これが楽天トラベルの「場のちから」ということになります。別の例で言うと例えばYahoo!オークションを見ると分かりやすいと思います。かのサービスのサプライヤーはいわば日本国民の1億3,000万人であり、これが同時にユーザーにもなる状態であるので、日本国民1億3,000万人対1億3,000万人が「場のちから」となるのです。よって現在の日本では「場のちから」が最も強いのはYahoo!オークションであり、その次が楽天市場や楽天トラベルであると考えています。この「場のちから」については当初から強く意識し取組んでまいりました。サプライヤーの数を増やし「場のちから」を強化してゆくことがすなわち、顧客の利便性および満足度の向上につながり、結果として参画施設さまの利益にもなるからなのです。つづく■マーケットプレイスにおけるサプライヤーの数と「場のちから」の関係