今夜のBGMはジョニー・ハートマンです。U様のブログで恋愛映画の名作『マディソン郡の橋』が題材とされていたもので、思わず懐かしさに胸が躍り、久々に聴くことにしました。
監督・主演を務めたクリント・イーストウッドは大変なジャズマニア。よって映画の挿入曲をジャズで固めた訳でしょうが、ハートマンのボーカル・トラックを全面的に採用したのは慧眼だったと思います。独特の深みあるバリトンで聴くスタンダード・バラードの数々あってこそ、『マディソン』は今でも語り継がれる名品となり得ました。私も封切り当時はジャズを主体とした音楽漬けの日々を送っていたもので、イーストウッドのセンスに心底共感を覚えたものです。
ハートマンは還暦を迎えた1983年に急逝しました。それでも比較的多くの録音を残してくれた名歌手ですが、1956年のベツレヘム録音盤が最高です。特にヴァーノン・デューク作の名曲「What Is There To Say」で幕を開ける1stアルバム『ソングス・フロム・ザ・ハート』はジャズマニアでなくても座右の盤にしておいたい名作で、他にも「I Fall In Love Too Easily」「I'm Glad There Is You」「I'll Remember April」「I See Your Face Before Me」「Moonlight In Vermont」etc、脇を固めた名手ハワード・マギーのトランペットとの絡みが絶品!ジャンルを超越した最上のボーカル盤として推奨します。
2nd『オール・オブ・ミー』は対照的に、フランク・シナトラの名唱で名高い表題曲や「Blue Skies」「Birth Of The Blues」「I Get A Kick Out Of You」etc、ビッグバンドをバックにしたスインギーな楽曲多数。ストリングスが美しい「Tenderly」「Stella By Starlight」「The End Of A Love Affair」辺りも聴き物で、こちらもハートマンの歌唱レベルの高さに唸らされること必至の良質なアルバムですね。
1960年代になって、ハートマンはジョン・コルトレーンの諸作品でお馴染みのインパルス・レコードへ移籍しましたが、一押しはコルトレーンとの共演アルバムにおける「My One And Only Love」と断言します。コルトレーンのテナー・サックスとハートマンのボーカルの相性は格別で、ジャズの奥深さを再認識させてくれます。youtubeでの再生回数が15万回以上というのも至極ごもっとも。全く極上の音楽に国境はありませんね。それではここらでおやすみなさい。