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「まじっすか...」
私はその時、銀座の某エステティックサロンにいた。 妙な箱のようなものの中に顔を突っ込んでいた。 その中で見たものは、自分の顔だ。 顔中がシミだらけの、見るも無残な自分の顔だ。 「これは決して脅しでもなんでもなく、まだ顔の皮膚の表面に出てきていないシミの予備軍です。いいえ!皮下にあるシミです。濃いものはもうすぐ表皮に現れるでしょう」 とエステ姉さん。 彼が出来たばかりなのに、シミだらけ宣言だなんて! すんごく気軽にお試しフェイシャル3回1,000円コースを受けにきただけのにこんな酷い目に遭うなんて! 半泣きで解決策を求める私。 「私にお任せください。プロですから。肌の奥に出来たばかりのシミを老廃物として排出させ、もうすぐ表皮にあがってくるシミは、1日も早く表皮の角質と一緒にはがれるようターンオーバーを早めるお手伝いをします。」 半泣きでうんうん頷く私。 「実は私もちょっと前まで大きなシミが目尻にあってねぇ」とほんのり小声でエステ姉さん。 半泣きで「えー!」なんて驚く私。だって、エステ姉さんのお顔は磁器のようにつるつる。 「頑張りましょうね!」と私の手を握り、にっこり笑うエステ姉さん。 半泣きで手を握り返す私。 「あなたの肌は本来とってもきれいなんですから!ちょっと弱いだけです!うちの技術は最先端ですから任せてください!!」 とエステ姉さん。 エステは信仰宗教に似ている。 その人の一番気にしているところを散々な言葉や方法で挙げ連ね、迷える子羊を恐怖と不安に陥れる。 こわいよう、いやだよう、どうしたらいいかわかんないよう、とさめざめと泣く子羊。 そこに、一本の救いの糸をたらすのである。 本来は、救われる道など何種類もあるはずなのに、たらす糸は一本。 「私はあなたの気持ちがわかります。なぜならば私もあなたと同じだったから」と、子羊と同じ量の涙を流して見せる。 えっ!?私なんかとは全然違う幸せそうなあなたが?と驚く子羊。 「...私も...あなたのように...なれるのでしょうか」と子羊。 「もちろんですよ。だって、あなたは本当はとても心のきれいな人だもの。純粋であるが故、汚されやすかっただけなのですよ。本来のあなたを取り戻しましょう!さぁ、その糸を掴むのです!」 将来シミだらけ確定子羊の私は一本の糸を掴み、半泣きでベッドに横たわる。 なにやらぬるぬるしたものを顔に塗られ、金属の棒を持たされる。 んで、すべすべした何かで顔を撫でられる。ぬるぬるぬるぬる。 半泣きの子羊の割には、すっげーしょうもない事を思い出してしまい、思い出し笑いが止まらなくなる。 いや、困ってるんですよ、まじで。まじです。 でも、思い出し笑いはしょうがないじゃん? 頼むから「何思い出したんですか?」って聞かないで。 すっげーしょうもないことだから。 説明した時点で、もう全然面白くないから。 んな感じで施術終わって鏡を見たら、お肌がふっくらもちもち。まっしろけ。 体型と服装と髪型以外は白雪姫のよう。 これで毒りんご食って、いい男が来るまで仮死状態で待ってれば勝ち組!って寸法ね。 とか思ってちょっと笑う。 だ~か~ら~、頼むから「何で笑ってるんですか?」って聞かないでってば。 「今日の施術はイオン導入といいまして、ビタミンを表皮の奥にある真皮まで届けることの出来るものです。普通に塗っても分子が大きすぎてお肌に吸収されずに蒸発してしまう栄養素を、電気分解してググッと小さくしてお肌にぐんぐん吸収させることが出来ます。」 とエステ姉ちゃん。 その後、料金表をご提示いただく。 まあ。 やっぱ、いいお値段ですな。 今から、ある学校に通おうとしている俺にはちょっと...と言うと、エステ姉ちゃんはムキになって、 「シミだらけになってもいいんですか!?」と詰め寄る。 なぜか急に「ほっとけよ...」という気分に。 何かにつけ、情熱的にされるのが苦手。 情熱的にされると、どんどん冷静になってしまうタイプ。 心の中で、「お前もシミだらけにしてやろうか!!」とデーモン小暮が叫ぶ動画が浮かぶ。 ぶふふふふ。古い。しかも面白くない! 「何笑ってるんですかぁ!もぉ!!」とエステ姉ちゃん。 だ~か~ら~、聞くなっての。 しかし、イオン導入後のこの肌はすごい。 姉ちゃんが初対面の俺に食ってかかるだけのことはあるほど、すごい。 どうにかならんか? ということで、楽天で検索したらありました!イオン導入器3600円!! 高いものは30万円。平均は49800円てところのイオン導入器。 3600円のものを買うのもちょっと勇気がいるのだよ。だって安すぎだもの。出来るの?ほんとに。 届いたソレは、うっかり落としてしまいそうなほど軽いプラスティック製。 電池式で、強弱などの調節は出来ない。 しかし3600円だもの。十分十分。 ビタミンCの水溶液をしみこませたコットンを装着して、顔を撫でる。 半信半疑どころか、全疑。駄目で元々。 しかぁし。 翌朝、鏡を見るとそこには、ふっくらもちもちの白雪姫(体型と服装と髪型以外)が。 もちろん、エステでやってもらったものの比ではないが、いつもの自己流スキンケアに比べると雲泥の差である。 毎日やると肌に負担がかかるとのことだし、ビタミンCももったいないので(結構高い)また来週やろーーーっとと思ったまま、あれ以来一度もしていないのが謎。 それが、唯一の謎。 あれから3年たって、ビタミンCは変色したので捨てた。 そして私はシミだらけか?というと全然そんなことはないのである。 めでたし。めでたし。 そのイオン導入器はこちら。しかし、アフェリエイトで儲けたいという魂胆ではありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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