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2005.03.17
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テーマ:映画評論(11)
カテゴリ:批評
 数日後に収監されることになったヤクザの組長・羽原(西田敏行)には心残りなことが2つあった。1つは25年前に生き別れた娘かおり(常盤貴子)と再会を果たすこと。そしてもう1つは大ファンであるキング・オブ・ソウル、ジェームス・ブラウンの公演に行くこと。彼の心中を察した弟分・金山(萩原一徳)は子分たちに“いますぐJBをさらいに行って来い”ととんでもない命令を下すのだが・・・。


井筒監督といえば、日ごろのマスメディアでの辛口映画評が思い浮かぶ。歯に衣着せぬその言いっぷりは、ならあんたどんな映画を撮るんか、と言いたくなる口ぶりであったが、その、井筒監督の作品である。

 正直に言おう。井筒監督は、「かわいいね~」の一言に尽きる。

 実はこの映画は、そのストーリー展開、合間に差し挟まれるミュージック・パフォーマンス、テンポといい、まさにハリウッド映画の要素をすべて取り入れているのだ。いつもあんなに辛口を聞かされていたから、こんなにハリウッド映画に影響を受けているとは思わなかった、というのが本音だ。そう、井筒監督はハリウッド映画が好きすぎて、あんなに辛口になっていたのである。(ご本人がこれを認めるかどうかは知らないが)

 ハリウッド娯楽映画をハリウッド娯楽映画にしている醍醐味といえば、ホロっとさせたり、ハラハラさせたりしながらも失われない、そのウィット、コメディーセンスにある。たとえば、「隣のヒットマン」や「花嫁のパパ」でもいい。ホロっとさせたり、ハラハラさせたりしながらも、いつもウィットと笑える要素を失わないのだ。そして、皆がいつも陽気で明るい。井筒監督は、この醍醐味を、日本映画に入れ込もうとした。

 JBを誘拐しようとドタバタとする子分たち、エアロビの先生?をしている元やくざ、かおりを狙う取引先上司のいやらしさ、JBのパフォーマンスをしてみせる組長に、「ブツ」をめぐって繰り広げられるドタバタ活劇・・・そういったパーツが、まるでハリウッド娯楽映画そのものなのだ。

パーツを上手くストーリーに組み込んだことは、この映画を先の読めない面白いものにしているし、俳優達も、なかなかいい演技を見せている。もちろん西田に岸辺はどんな演技子お手の物だし、山本太郎他脇を固める役者陣も精一杯小気味よく演じていると思う。娯楽映画としては、まずまず楽しめる仕上がりだろう。

が、いかんせん、いくつか残念な点がある。

ひとつは、「ハリウッド娯楽映画的」にするのなら、他の点もハリウッド的にするべきだった、という点だ。それは何も、お金を掛けろといっているのではない。この映画のハリウッド的な最大の難点は、その「色」だ。井筒映画にはその独自の色がある。どちらかといえば、砂埃でもかぶったような、もったりとした、ある意味日本的な色だ。これが、力強い描写と重なると、なんともいえない重厚感や迫力を生み出すわけだが、いかんせん、「ゲロッパ」は、娯楽ハリウッド風作品である。 そうなると、このもったり色が、テンポをそぐことになってしまうのだ。もったりとした色合いの中で、テンポのよいパーツが次々と展開しても、垢抜けないのである。衣装・舞台セットといった基本的な色合い―これがもっとビビッドで、気を使ったものであれば、そのビビッドな色が画面をドタバタと動き回ることで、余計にテンポが小気味よく感じられるはずである。ハリウッド映画というのは、その辺までも十分計算し尽くされたものであるのだ。

 もう一点は、上と逆説的になるのだが、井筒監督が「ハリウッド風」を、意識的か無意識的か、作り出そうとしていることにある。ハリウッド娯楽のおもしろさがどこにあるかをこれだけ理解している井筒監督なら、日本独特のしっとりと静かな笑いの情感を、上手い具合にあのハリウッド娯楽のもりだくさんなウィットと混合し、消化し、新しいジャパネスク娯楽が作れるのではないか、と思えるのだ。その世界観であれば、井筒監督の独特な「色」もまた味わい深いウィットの一部分となると思えるのである。

井筒監督がこれから、そのどちらを選択し、映画を作り続けていくのか―それが気になる、映画であった。最後に、もちろん「ゲロッパ」とは、JBのGet Upの呼び声のカタカナ表記である。(なにをどおやってもそうとしか、聞こえない)

映画として 7/10
娯楽として 8/10
ゲロッパ 10/10







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Last updated  2005.03.17 15:56:13
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