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2005年09月12日
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この日記は私の備忘録だ。
その日に起きた事実をできるだけ淡々と記すことにしている。
自分の感じたことや思ったことは、あまり書かない。
自分で読み返すことで、そのときの気持ちは思い出せるから。
日々の生活を公開することについては、あまり抵抗のない私だけど、それについて自分の心の中までさらけだすのは、流石に恥ずかしいから。

だから普段あんまり書かないんだけど。
今日はちょっと自分の気持ちなんかも書いてみよう。
この気持ちは今だけのものかも知れないから。
後から思い返しても正確に思い出せないものかも知れないから。

読む人のためじゃなくて、どこまでも自分のため。
俺様日記でごめんなさい。

そして内容的には愚痴になると思われるので、不快な人は今日の日記は読まないで下さい。



療育の日。
3人分のお弁当を作って、りんちゃんを送り出し、洗濯物を干してからカノンちゃんと一緒に療育教室へ。
今日もカノンちゃんは横目で壁の木目を眺めて歩いていた。
うーん。。。自閉傾向は無いといわれているけど、2~3歳になってから自閉傾向が顕著になる例もあると聞くし、まだ「自閉傾向無し」と判断するのは早計なのかも知れないな。

療育自体は特に特筆すべきこともなくいつもどおりだった。
ママ同士のおしゃべりで、どうにも噛みあわない話があって、私は久しぶりに『この人とはしばらく話をしたくない』とまで思ってしまった。
どこまでも後ろ向きな気持ちをぶつけられるのは、こっちも苦痛だ。


カノンちゃんは、児童精神科の医師に「軽度の遅れがある」と言われている。
医師が親の気持ちに配慮して「精神遅滞」という言葉を使わなかったのか、カノンちゃんが協力的でなかったために、今ひとつ正確さに欠けてしまった発達検査の数値だけでは、診断を下しにくかったのか。
その辺はいまひとつ定かではないけれど、DQ(ドラクエではなく発達指数)の数値だけをみれば、カノンちゃんは「軽度精神遅滞」に分類される。

「精神遅滞」というのは、以前は「精神薄弱」と呼ばれていた、俗に言う「知恵遅れ」のことだ。
私の怪しい記憶によれば、精神薄弱という言葉はドイツ語だか英語だかの直訳で、その障害の状態を説明し得るものではなく、さらに時を経て差別語的な意味合いが強まったために、最近になって精神遅滞と呼びかえられるようになったらしい。
診断名として『精神遅滞』が用いられるようになったことで、行政でも呼び替えが必要になり、ほんの10年くらい前に、それまでの「精神薄弱」は「知的(発達)障害」という呼称に変更された。

だからいわゆる知恵遅れとイコールだとは知らずに、精神遅滞という診断名をもらって、療育手帳の取得をすすめられ、いざ取得してみたら「知的障害児」という扱いになっていて、親が愕然とする、というケースがままあるらしい。

ところで療育手帳の取得にはどんなメリットがあるのか。
これは地方によってかなり違うらしい。
道を一本挟んだだけの隣の市の方が待遇がいい、なんてこともある。
そのために持ち家を処分して、待遇の良い市に移り住む人もいる。
大抵は取得のために判定があり、その症状によって重度、中度、軽度と分けられる。
区分けについてはもっと細かかったり、大雑把だったりいろいろだ。
うちの市の場合、中度と重度だと特別児童手当の対象になる。
軽度の場合は、障害者扶助料とかいう手当だけが月に2500円もらえるそうだ。
ほかにも公共施設の利用料や駐車料金が無料になったり、税金の減免等金銭的な面での補助がいろいろ受けられるようだ。(まだ申請前なので今ひとつな知識で済みません)

デメリットは…なんだろう?
今の私にはわからない。

前置きが長くなったけど、結局療育仲間ママに言われたのはこれだった。

「軽度なら手帳取らなくてもいいみたいだよ」

取らなくてもいい、という表現には、出来れば取りたくないという前提がある。
私は取りたくないとは思っていなかった。
取得するつもりであることを話すと、彼女はとても否定的で、自分の子がこれから判定を受けるけれど、もし軽度なら自分は絶対に手帳の申請はしない、と言い切った。
私は取得しないことを否定する気はないので、それはそれでいいのではないかと思う。
でも私が娘の手帳を取得することについて否定される覚えもない。
なのに彼女は言うのだった。
「(扶助料2500円のことをさして)たかだか数千円のために手帳をとるのは、ね...」

彼女が言葉にしなかった部分が、その時の私にははっきり見えなかった。
長いこと考え、旦那や友人に相談したりしてから、ようやくそれを言葉に置き換えることができた。
つまりこういうことだったのだろう。

「たかだか数千円のために、手帳を取得して子供を障害児にするのは嫌だ」

彼女の言いたいことは(多分)分かったけど、納得はいかない。
子供は手帳を取得することで障害を持つのか。
そうじゃない、障害を持っているから手帳を取得するのだ。
なのに、行政上の形だけにとらわれて、手帳の取得が子供を障害児にするかのように考えているのはおかしい。
障害を隠せるものなら隠したいという気持ちが分からないわけじゃない。
もし子供の障害が過去のもので、今は何も困っていないのなら、私もわざわざ過去の証明のために手帳を取得したりはしない。
でも違うのだ。
子供の背負ったものは、過去のものではなく、今この瞬間抱えている問題であり、これからも抱えていかなければならないかもしれないものだ。
手帳には2年ごとに再判定がある。
発達の遅れが追い付いて、手帳を返還する日がくるかも知れない。
そういった希望は持っていいはずだし、持っていたいと思う。
でもそうでない場合のことも、考えておかなくてはいけない。
普通の小学校で、普通クラスに通うことは難しいかも。
中学校は養護学校かも。
高校に行けるのか。
就職はできるのか。
そんな問題に、これからどんどん直面するのかも知れないから。
現実から目をそむけるわけにはいかない。

私は月々2500円の手当のために、手帳を取得するんだろうか。
彼女はそう受け取っていたに違いない。
呆気にとられていて、ちゃんと否定してこなかったし。
でも実際のところは、私の中でそんな手当はどこまでもオマケでしかない。
私が手帳を取得したいのは(そう、しなくちゃいけないからするんじゃない、したいからするんだ)カノンちゃんの現状を、私が受容するプロセスの一部として必要だからだ。
そのままのカノンちゃんを、私が受け入れるために。
「普通の子」像を追い求め、カノンちゃんに無理な要求を押し付けて、カノンちゃんを追い詰めないために。
もちろん成長を望まないわけじゃない。諦めるわけじゃない。
でもカノンちゃんにはカノンちゃんのペースがあるってことを、いつも私の心に置いておけるように、今のカノンちゃんの現実を形にしたもの=手帳が欲しいのだ。


もう一つ言われたのは
「カノンちゃんは早くから運動発達も遅れてて、前々から何かあるって思ってたからいいけど、うちは普通に発達してて、つい最近なにかおかしいって気がついて、いきなり障害って言われた。将来に夢も希望もあったぶん精神的に辛い」
という言葉。

あんまりだと思う。
私は辛くないとでもいうのか。
確かにあからさまに辛そうにはしてないけど。
私が娘の将来になんの希望も抱いていなかったと思ってるんだろうか。
今、将来に不安を感じていないとでも?

カノンちゃんが産後のトラブルで「死んじゃうかもしれない」と思ってから、確かに私たち夫婦は「子供は元気ならOK」という気持ちが「とりあえず生きててくれたらいい」というふうに変化した。
でも、だからといって「あなたの方が私より障害を受け入れる余裕があるでしょ」と言われるのは心外だ。
誰だって、自分の子は元気で何の問題もなく成長してくれる子供であってほしいに決まっているのに。


こんなわけで、しばらく彼女とはお話をしたくない心境なのだった。
私は障害児を持った自分を憐れんで泣き暮らすより、元気な娘どもと一緒に他愛無い日常を過ごせることを喜んでいたいから。




…なんてね。
実際は言うこと聞かない娘どもを毎日怒鳴ってばかりなんだけどね(苦笑)





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Last updated  2005年09月20日 14時40分59秒
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